クラウドソーシング「ランサーズ」 なんでも評点:ライブドアが用意すべき2つのオプション - もう期待していないが

2004年11月25日

ライブドアが用意すべき2つのオプション - もう期待していないが


■ 事実関係の確認

昨夜、「デパス四錠と煙草一箱」ブログからトラックバックが送られてきた。小倉弁護士のブログに掲載された記事に関する指摘があった。「ライブドアの規約改定 - コメント欄に寄せられた鋭い指摘」の記事のコメント欄にも書いたが、うちのブログから小倉弁護士の記事に言及するのは原則として差し控えたいと思う。小倉氏がライブドアの強制削除事件の経緯をちゃんと把握しておられないように思われ、お話にならないからである。

ただ、小倉弁護士のような影響力のある人がああいう調子で記事を書いたものだから、誤った事実認識が広がってしまっているのではないかという懸念もある。もう一度、強制削除に関する事実関係を整理しておく。

  1. livedoorBlog上で、香田さん殺害事件に関し、公序良俗に反したり、故人の名誉を毀損したりするような悪意ある書き込みが殺到したという事実は確認されていない。

  2. 動画への直リンクが含まれていることが削除の条件になったのではなさそうである。実際、動画への直リンクが含まれていても削除されていない記事が多数確認された。さらに動画への直リンクが含まれていないのに削除された記事もあった。つまり、削除の基準はまったく不明瞭なのだ。


ポイントは上記2点。さらに、当ブログと黄泉[裏]新聞の記事が削除されたのは、香田さんの名誉を毀損する記述があったからだとする未確認情報もあったが、実際問題、当ブログから削除された記事には香田さん個人の行動に関する記述は一切存在せず、黄泉さんの記事についても筆者の記憶では香田さんを中傷するような記述はなかった。

■ ネット上での個人攻撃について

小倉弁護士によると、匿名のネットワーカーが特定個人を誹謗中傷する事件が後を絶たないという。実際には、2ちゃんねるのような匿名掲示板がその主な媒体なのではないか。ブログで実際にそういうことがあったのだろうか? もっとスペシフィックに言えば、livedoorBlog上で匿名ブロガーが特定個人を誹謗中傷したような事実が確認されているのだろうか?

筆者の知る限りでは、攻撃にさらされやすいのは、むしろブログオーナーの方である。その最も如実な例は、共同通信小池編集長のブログのコメント欄に誹謗中傷が殺到したあの事件だろう。(こういう攻撃を防ぐにはコメント欄を閉じるという方法があるのだが、閲覧者がコメントを手軽に付けられるのはブログの特長の1つでもあり、これがほかには見られないコミュニケーションツールとしての役割を果たしてもいるのだ)。

筆者は実を言うと(以前、しらばっくれたこともあるのだが)、2ちゃんねるに書き込みをすることもときどきあるし、2ちゃんねる用の有料ツールだって使用していたりする。2ちゃんねるが完全に匿名の世界であることは身をもって実感している。

■ ブログの匿名性

一方、このブログは実は、完全に匿名でやっているわけではない。あるHPに筆者の実名やプロフ情報が記載されていて、そこからリンクを2段階にたどると、このブログにたどり着く(このブログからそのHPへのリンクは張っていないが)。このブログを閲覧してる人の中には、筆者の正体を知っている人が何パーセントかは含まれているわけだ。

しかしながら、仮にまったく身元を明かさずにこのブログをやっていたとしても、自分は匿名だから何でも無責任に書いていいんだ・・・みたいな「安心感」はまったく持てないだろうと思う。ブログを書くという行為は、いくら匿名であっても自分を部分的にさらけ出す行為だと思うのだ。

自分がさらしている部分から、悪意ある攻撃を受けるかもしれないという懸念をまったく抱いていないブロガーはむしろ少数派だろう。当ブログでは、以前、英国ブログ界での出来事を取り上げたことがある。



自らコールガールと称する人物がブログを書いていた。コールガールとしての日々のことを赤裸々に綴り、自分の友人のことなども書いていた。身元が特定できるかもしれない情報がちりばめられていた。大手新聞から賞を授かったことで一気に注目を集め、やがて彼女の身元を特定しようとするキャンペーンが展開されたのである。

むろん、ブログの中にも、ブログ作者のパーソナリティがほとんど表に現れないようなスタイルのブログもある。たとえば、ネタ紹介系ブログがそうかもしれない。だがネタ紹介系ブログの場合は、ブログ作者が自分の意見を前面に出さないところからして、他者への誹謗中傷が発生する余地が少ないと言える(違法なネタへのリンクを張るという余地はあるのだが)。

■ ブログ作者は自分をネットにさらしている

ブログ作者が自分の主観を表に出せば出すほど、自分をさらけ出すことになる。自分をさらけ出せば出すほど、自分の正体特定への手がかりを与えることになる。だから持論を展開するタイプのブログをやっている人の大多数は、自分は匿名だから無責任でよいというスタンスから正反対のところにいるはずだ。

ライブドア社にしても小倉弁護士にしても、そういったブロガー心理をまったく理解していないのである。ライブドア社は、ブログコミュニティを育ててきた功労者でもあったはず。なのに香田さん事件のような「有事」の際には、自ら築き上げてきたものを破壊する自滅行為に出てしまった。きっと亡霊を見たのだろう。

■ もう期待していないがライブドアが用意すべき2つのオプション

精神論で論じるのはおかしいという反論があることも私は予想している。ライブドア社がブロガーの身元を把握できているのでない以上、ブログ記事に対して訴訟が起こされるようなことがあったら、ライブドアの責任になってしまうではないかと。

ブログを登録するときに氏名や住所欄に虚偽の情報を記入しても登録できてしまうのは事実だ。しかし、IP アドレスという証拠は残っている。匿名プロキシを介したアクセスだと発信者を特定しにくくなるが、ならばプロキシ経由の投稿ができない仕様にすれば済むこと。

IP アドレスが判明していてもインターネット接続業者が身元情報を教えるのは刑事事件に関連している場合だけだというのはわかる。名誉毀損など親告罪(被害者からの訴えがあって始めて審議される罪状)の場合は、接続業者がめったなことで情報を出してくれないのもわかる。

ならばライブドアはユーザーにオプションを与えるべきではないか。「著作人格権を行使する場合は、所定のフォームに身元情報を記入していただきます」とすればよい。筆者は喜んで記入するつもりである。

そんな方式、聞いたことがない・・・なんて反応は保守指向以外の何者でもない。ライブドアが先駆者になればよいだけのことではないか。って書いておきながら、もうライブドアには何も期待していないのだけど。

ただし、上にも書いたように、ブロガーは自分をネットにさらしている。自分をさらしている以上、自分の身元が特定できてしまうのはまずいと考えるブロガーも多いと思う。その上、自分をさらしている記事がある日、なんの断りもなく雑誌や書籍に転載されてしまう可能性があるのだから、たまったものではないと思う人も多いだろう。

だが中にはブログで有名になりたいと思っている人もいるかも。

これに関してもライブドアはユーザーにオプションを与えるべきなのだ。チェックボックス1つで済むことじゃないですか。「あなたは書籍等の媒体への記事掲載を許諾しますか」というチェックボックスを管理画面の設定ページに設ければ済むこと。あ、でも繰り返しになるが、もうライブドアには何も期待していない。

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1. 不当削除に関しては沈黙していますね[livedoor]  [ 黄泉[裏]新聞 - 号外 ]   2004年11月25日 19:20
仮名でも匿名でも、著作権は、著作者にあると思いますよ。じゃないと、ペンネームとか芸名を使った場合、著作権が発生しない事になりますからね。問題は、個人を特定出来る状況にあるかではないでしょうか?

この記事へのコメント

1. Posted by 寝太郎   2004年11月25日 17:03
 トラックバックありがとうございます。

 明快なご趣旨の問題提起ならびに提言、全面的に同意します。

 僕も小倉弁護士の記事は読みました。問題意識がブロガーとまったく共有できていないような印象を受けました。こういうものの見方をされる方がいらっしゃるのは非常に残念なことですが、一方でこの方が開発日誌に寄せられた無数のトラックバックにまったく眼を通していないことのあらわれだとも思います。こういった形での一方的な決めつけは法曹家の資質としても、どうなのだろうかと疑問に感じてしまいました。

 livedoorに求める二つのオプションについても、まったくおっしゃるとおりだと思います。この程度の簡単な手続きがなぜできないのでしょうか。(まぁ、ようするにやる気がないからだと思いますが)
2. Posted by 丸山   2004年11月25日 21:31
 法曹といってもいろいろだというのは、法学を勉強し始めて気づくことの一つですね。
 法のように公平さが求められそうな領域でも、一般人から見てヒネくれた人だと見える人はかなりいるようです。もっとも、ヒネてみえるのにもそれなりの理由があるので、一概に悪いとはいいませんが…。

 小倉弁護士の記事に関しては、ライブドア騒動に加わったすべての人が悪いといっているとは限らない点と、企業がそれなりに大変な負担を強いられるのは確かだという点で、いちおう耳を傾けられない程でもないでしょう(ただし腹を立てていたのかなんなのか、あまり品のよくない基準だと言う印象を拭えませんでしたが)。

 ただ、まっとうなブログ管理者がこれだけ腹を立てるのにはそれなりの理由があるんじゃないかと考えていただけたかどうか、ひとつ小倉弁護士に訊いてみたい気はしました。
3. Posted by ムシムシ   2004年11月26日 14:04
匿名かどうかを論じるならば、著作権法に著作者の推定って項目があります。推定できれば、著作者であり、完全な匿名ではない。

こういう、文句(文章の中の語句。のことですよ。なんか最近日本語が乱れているので、かなり心配なので一応注釈)があったほうが、いいように思えます。

法的なことは書きたくないって、考えなんでしょうけど。

一つだけ、文句(反対意見)
ここに書いてある精神は、なにもブロガーだけのものではありません。Web全般で良識ある人たちなら、みんな心得ていることだと思います。
4. Posted by miccckey   2004年11月26日 15:55
>寝太郎さん

小倉弁護士は影響力のある人だけに、もう少し事実関係を精査していただきたいところですよね。

寝太郎さんがおっしゃるように、ライブドアには、やる気のなさが感じられます。人的資源が不足しているのでしょうけど、簡単なコミュニケーションすら面倒がっているのは、もう末期的です。

>丸山さん

小倉弁護士のあの記事は最初、意図的に挑発しているのかとも思ったのですが、怒りの矛先を間違えておられるというのが実際のような気もします。

企業側の負担は理解しますが、負担をすべて取り除こうというのもおかしな話。だったら最初からホスティングサービスに手を出さなければよいと思います。行き当たりばったり的な企業体質なんとかならないかなあと思ったり。まあいつまで経ってもこの調子でしょうけど。

>ムシムシさん

すみません。上のコメントの指している対象がわからないのです。

》法的なことは書きたくないって、考えなんでしょうけど。

これはどのことを指しているのですか?

》ここに書いてある精神は、

これは著作権法の文言のことですか?

毎回、ムシムシさんのコメントには貴重な指摘が含まれており、感謝しております。

5. Posted by ムシムシ   2004年11月26日 16:44
miccckey様はあまり、「法」に照らして「こうだ」という書き方をしないので、そのような、書き方が嫌いなタイプと勝ってに推測して書いてます。違っていたらすいません。(前に「法」にっていうのが嫌いな人がいたので、言い訳です。)

示したかった精神は
「匿名だから、無責任でいいとは思わない精神」です。

匿名だから、無責任でいいと思わない人たちはブロガーだけではないはずです。
匿名でも責任はあると感じている人たちは無数にいるはずです。

だたし 匿名は「玉石混淆」だと思ってます。玉もあれば石もあると。
石が減って玉だけになってくれればいいなぁ。と思ってます。
6. Posted by yuki   2004年11月26日 19:40
ホスティングサービス側もブロガー側も、どちらともが決まったスタンスを得ることがでいる良い方法だと思います。
しかしLivedoorは「そんな面倒くさい事しないよ〜」という感じなのではないでしょうか。
その区別毎の管理などを、どう考えてもきちんとやれそうもないですし。

でも、細木数子が年末番組か何かでほりえもんを占うそうなので、その時に細木数子がそうやれと言ったらやりそうな気が(←無理だって)。
7. Posted by miccckey   2004年11月27日 02:05
>ムシムシさん

なるほど、私の記事を指してコメントしてくださってたんですね。ご面倒をおかけしました。

私は単に法律の知識がないので、法に照らしてみたいな話を思い浮かびもしないだけです。

「匿名だから、無責任でいいとは思わない精神」については、ブロガー限定でないのは重々承知です。ムシムシさんのおっしゃる意味もよくわかります。ただ、上記記事は、一応、ブログホスティングサービスを提供している企業の姿勢を問うという文脈なのでブロガーに焦点を絞った次第。

ブロガーをHP管理人やメールマガジン筆者と読み替えても同じことが言えると思います。ただし、2ちゃんねらーと読み替えることはできないという認識です。上の記事に書いたように、私自身、ときとして2ちゃんねらーの一員になっていたりもするのですが。

>yukiさん

ユーザーに選択肢を与えれば、簡単に済んだんですけどね。ただ、ご指摘のとおり、

》その区別毎の管理などを、どう考えてもきちんとやれそうもないですし

という問題があります。

ほりえもんが細木数子の言うことを聞きますかね? 老害呼ばわりしてそう(笑)。


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