クラウドソーシング「ランサーズ」 なんでも評点:ベスラン学校人質事件を生き延びたゲオルグ少年(後編)

2004年09月10日

ベスラン学校人質事件を生き延びたゲオルグ少年(後編)


前編に引き続き、SUN紙に掲載された記事「I'm alive」に基づいて、彼が助かった理由や彼の口から語られた事件の経緯をまとめてみたい。

■「ネズミのように静かに」と自分に言い聞かせた

このように半裸の子供たちが逃げ出してきた人質になっていた子供たちの多くが上半身裸になったまま外に逃げてきていたのをテレビで見て不思議に思った人は多いと思う。ゲオルグ君も、最初は、制服(白い開襟シャツと黒いズボン)を着ていた。

制服のまま、犯人に命令されたとおり、何時間ものあいだ両手を後頭部に添えていた。しかし、ゲオルグ君たちには水さえ与えられなかった。外で見守る報道陣からは、気温が30度に達していると報告されていたにもかかわらず。

このため、児童・生徒たちは服を脱いで暑さをしのぐしかなかった。

ゲオルグ君が座っているすぐそばにあったバスケットボールのネットにテロリストたちが2つの爆弾を仕掛けた。さらに、ゲオルグ君を取り囲むように、いくつもの地雷が設置された。


ゲオルグ君は、そんな中、後頭部に両手を添えた姿勢を維持した。「ネズミのように静かにしておこう」と自分に命じていた。

犯人たちは人を殺すことなんか何とも思っていないように見えた。誰かが物音を立てると、すぐに銃を突き付けた。

突然、女の人が持っていた携帯電話が鳴った。犯人がそれを取り上げる。そして、今後、もし1回でも誰かの携帯が鳴ったら、20人殺すと脅した。

恐れおののいた大人たちが携帯電話を放棄し、ジムの中央に山積みになるほど携帯電話が集まった。

ゲオルグ君の隣には、ビデオに映っていたように女の人と女の子がいた。彼もそのことははっきり覚えているが名前は知らないという。

彼女たちもゲオルグ君と同じくらい怯えていた。ゲオルグ君だろうか誰だろうが、声を出したら、犯人にすぐに殺されてしまうのはわかっていた。だからゲオルグ君は、そばにいた二人に決して話しかけなかった。ゲオルグ君は、絶対に死にたくないと思っていた。

とにかく大人しくしている以外のことは考えられなかった。もう一度、自分の家に帰れることだけを願っていた。

■とっさの行動

ゲオルグ君は、テロリストたちが最初に爆発させた対人地雷から、5メートル足らずの距離に座っていた。彼自身、その爆発が本当に彼のすぐそばで起こったことを覚えている。爆発後、自分が死んでいないことが理解できなかったという。

ゲオルグ君は起き直って、ほかの皆が絶叫しているのをただ茫然と見ていた。そのパニック状況の中、彼は立ち上がってテロリストの1人に水を飲んで来てもよいかと尋ねたのである。

その男はゲオルグ君を止めようとしなかった。ゲオルグ君は、水道管が破裂している部屋の方に向かって歩き出した。

これは爆発の直後の話である。爆発の直後でなければ、彼は射殺されていただろう。混乱をうまく付いたのだ。さすがのテロリストも自分の間近で爆弾が炸裂して、自失していたのではないだろうか。これ以外に、ゲオルグ君が逃げ出すタイミングはありえなかった。

■永遠に続くかと思われた

しかし、ゲオルグ君が歩き出すと、さらに大きな爆発が起こり建物全体が揺れた。彼は体育館の屋根が落ちたと思った。

前にもまして悲鳴が渦巻き、銃声が激しく鳴り響いた。ゲオルグ君は脱出しようとした。

ゲオルグ君は体育館に戻り、出口を探した。しかし、体育館の中では、この世のものとは思えない光景が彼を待ち受けていた。

ちぎれた手足があちこちに転がっている。大怪我をした人たちが泣き叫んで助けを求めている。だが、テロリストたちは、みんなに砲火を浴びせ続けている。

さらに爆弾が爆発し、女の人の体が真っ二つになって飛んでいく光景さえ目撃した。

ゲオルグ君の座っていた場所とその周囲にいた人は、全員が爆発の犠牲になって死んでいた。

ゲオルグ君は床の上を這って、窓のそばに上手く身を隠した。「ネズミのように静かに、ネズミのように静かに」と自分に言い聞かせながら、そこでじっと隠れていた。

悲鳴と銃声は永久に続くかのように思えた。だがもちろん終わりはあった。彼の体が力強い手でつかまれた。彼はこれで自分も死ぬんだなと思った。

■生還

しかし、彼を抱きかかえたのは、救出するために突入してきたロシア兵だった。自分が死なずに済んだことをゲオルグ君はにわかには信じられなかった。

ゲオルグ君は、手榴弾による傷を左膝に負っていた。その他、細かい破片であちこちに切り傷が出来ていた。

現在、病院に収容されている彼は、左膝から破片を取り除く手術を受ける予定である。切り傷は、殺菌クリームで処置すればよい程度の軽傷だった。

彼が心に追った傷の深さは、今のところ誰にも分からない。

それでも、SUN紙の記者がおもちゃの自動車を見舞い品としてプレゼントすると、ゲオルグ君はけなげな笑みを見せた。

自分が映っているビデオの1コマを見せられたゲオルグ君ゲオルグ君と母親のマリナさん(31歳)は、まさか彼がビデオに映っていたとは知らなかった。キャプチャ画像を見せると、「僕だ! 僕が映っている!」と声を上げた。

ゲオルグ君の隣に座っていた女性と女の子の名前が判明した。シマ・アリコバさん(57歳)とベラ・グリエバちゃん(12歳)だった。この二人は、バスケットボールのゴールに仕掛けられた爆弾が爆発したときに即死したと見られている。

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1. Posted by sneak a peek at these guys   2014年05月11日 18:43
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