2022年01月16日
噴火に伴う津波は、人類があまり経験していないと思われる。Wikipediaの「歴史的な津波の一覧」で「噴火・山体崩壊に伴う津波」を参照すると、10例しか記載がない。1800年以降の例は、以下の6件のみである。
1815年 - インドネシア・タンボラ山(西ヌサ・トゥンガラ州) - 噴出物1,700億トン、直径6キロメートルのカルデラを形成。火砕流、津波、疫病、飢饉などにより犠牲者数117,000人。
1883年8月27日 - インドネシア・クラカタウ火山噴火による津波。噴火により噴出した火山灰・岩石・噴煙が上空20,000メートル以上にまで到達、噴火によって発生した津波も含め犠牲者数36,000人以上。島の北部約3km四方が崩壊し、インド洋、太平洋に津波が波及。
1888年 - パプアニューギニア・リッター島 - 火山性津波により死者3,000名。
1911年 - フィリピン・タール山(ルソン島) - 火砕流および津波により死者1,335名。
1958年7月10日 - リツヤ湾大津波: アメリカ合衆国・アラスカで発生した地震によりリツヤ湾奥で大規模な山体崩壊。高さ約524mに及ぶ津波が発生。
2018年12月22日 - スンダ海峡津波: インドネシア・火山島アナク・クラカタウ山の噴火で山体の一部が崩壊したことに誘発されて発生した海底地すべりに起因する津波。

2022年1月16日におきたトンガの海底火山噴火に伴う津波については、気象庁も「津波と言えないのではないか」など、困惑の色を露わにしているわけだが、噴火由来の津波に関する科学的知見が乏しいからだろう。気象庁の権威を貶めるつもりはないが、過去10年で二回、気象庁の対応が遅れたことがある。2011年の東日本大震災における津波の過小評価と、2014年の御岳山噴火に対する警戒の甘さだ。どちらもあまり追及されていないが、科学で防災に務めることの難しさを感じさせられるところだ。
た・だ・し、今回の津波について、気象庁は最初「日本への影響はない」と断定していた。災害に関しては、「あるある詐欺」より「ないない詐欺」の方が罪が深い。
こちらの新聞記事によると、「噴火に伴う衝撃波で津波が発生」したと見られるそうだが、地震由来の津波は海水だけが伝達媒体となるが、噴火由来の津波は大気までもが媒体となる―ということなのだろう。今まで知られていなかった知見である。
■バヌアツの法則発動も
さて、書籍『メガ地震がやってくる!』 には、「南太平洋のタヒチ〜フィジー諸島(トンガやバヌアツも該当)に高熱流の吹き出し口があり、このルートを通って日本の近くに高熱流が到達すると火山が噴火し、地震が発生する」と記されている。今回も、二週間以内など近いうちに日本で噴火や地震が起きる可能性がある。俗に言う「バヌアツの法則」である。
■軽石が大量発生していると最悪、世界滅亡まである
もう一点気になることがある。小笠原諸島の海底火山噴火で発生したのと同様に軽石が大量発生・漂着するのではないかという心配である。今回は、太平洋全域に軽石が漂着する可能性がある。世界の31の国と地域で437基の原子力発電所が操業しているが、このうち半数近くが影響を受けるのではないかと思われる。最も心配なのは、冷却系への影響である。オイルフェンスは対策にならないことがわかっているが世界各国に伝わるかどうか。
「
軽石は砕けて水没する ― 水中数メートルの位置にある原発取水口に干渉するおそれ」の記事で述べたようなトラブルが太平洋沿岸の数百基の原発で一斉に発生すると、世界滅亡までありえる。今回のような超大規模な海底火山噴火に関する経験値が人類には足りないのだ。
※本稿の投稿時には、トンガでの軽石発生の話も聞かれなかったのだが、やはりウェザーニュースなどの報道機関では軽石についてもケアされていたようだ。下のYoutube映像をご覧いただきたい。
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