クラウドソーシング「ランサーズ」 なんでも評点:高度4600メートルで突然視力を失ったパイロットが操縦桿を握り続けて着陸に成功

2008年11月08日

高度4600メートルで突然視力を失ったパイロットが操縦桿を握り続けて着陸に成功


英国エセックス州で旅行代理店を営むジム・オニールさん(65歳)は、その日、スコットランドのプレストウィック空港から4人乗りのセスナ機に1人で乗り込み、エセックス州へ向けて飛び立った。彼の目に異変が生じたのは、高度4600メートルに達したときのことだった。最初は太陽の光で目がくらんでいるだけかと思った。
しかし、次の瞬間、彼は自分が完全に視力を失っていることを悟る。目の前が真っ暗になったのではなく、何もかもがぼやけていて色や形を認識できない。ついさっきまで眼下に広がっていた雄大な景色も、目の前にあるはずの計器類も何も見ることができない。

オニールさんは大慌てでメーデー(救難信号)を発信した。メーデーを受信した管制官が、彼をヨーク近郊のフル・サットン飛行場に誘導しようと試みた。しかし、オニールさんは完全に視力を失っている。しかも、彼はたった一人でセスナに乗り込んでいた。乗客がいたなら、彼の代わりに計器や視界を確認して言葉で伝えることもできただろうに。

管制官は、オニールさんのセスナを肉眼で確認しながら誘導できるわけではない。オニールさんが管制官の指示に従ってセスナを安全に着陸させることは不可能だった。このままでは、民家の上などに墜落して他人を巻き添えにしてしまいかねない。絶望的状況に思えた。

しかし、英国空軍(RAF)のリントン・オン・ウーズ基地(ノース・ヨークシャー州)でも、オニールさんのメーデー信号を受信していた。基地からスクランブル発進したTucano T1訓練機が数分後、オニールさんのセスナを発見し、併走を開始した。

RAFのパイロットと管制官たちは「落ち着いてください。必ず無事に着陸できますから」とオニールさんを励ましながら、「左に旋回」、「右に旋回」、「下降」などと冷静に指示を出す。オニールさんは、視力を完全に失いながらも無線を通じた指示に従いながら懸命にセスナを操縦した。そして、リントン・オン・ウーズ基地上空に接近する。

最後に最も難しい着陸が待っている。1回、2回と着陸を試みるが、うまく行かず上昇・旋回して再試行。4回目に見事に着陸に成功した。着陸したセスナは滑走路を大きくそれて芝の上を暴走したが、まもなく機体が芝の上で停まった。

オニールさんは無傷だった。飛行中に突如として視力を失ったにもかかわらず奇跡の生還を果たしたのである。オニールさんはRAFの軍医による診察を受けた後、エセックス州ロムフォードの病院へ搬送され、現在は脳外科病棟に入院している。

飛行中に突如として彼の目が見えなくなったのは、脳の血管が切れたせいだった。後頭葉に生じた血腫が視神経を圧迫して、視力を奪ったのだ。オニールさんは血腫を取り除く手術を受けた。医師らによれば、今後、脳の腫れが収まるにつれて、視力がある程度まで回復するはずだという。

リントン・オン・ウーズ基地のマーク・ホプキンス司令官は言う。「RAFのパイロットと管制官は世界一優秀です。当基地の今回の救援活動成功は、まさにその証です。こんなふうに飛行機を誘導することは決してまれではありませんが、本件は非常に特殊な事例でしたね。オニールさんの着陸を無事成功させることができて誇りに感じています」

オニールさんは、奇跡の生還から1週間後の10月6日、病室で英国Mirror紙の取材に答えている。「今こうして生きているのが不思議なくらいです。RAFの救援がなければ、私は死んでいたでしょう。しかも、何十人もの人たちを巻き添えにしていたかもしれない。恐ろしい体験でした。突如として計器板が見えなくなったのです。目の前にあるものがすべてぼやけていました。なすすべがありませんでした」

妻のエイリーンさん(63歳)は言う。「夫が今ここにいるのは、まさに奇跡です。とても冷静沈着に夫を滑走路に誘導したRAFは、まさにヒーローです。私たちは信心深いクリスチャンですが、目の見えなくなった夫がRAFの助けを借りて着陸に成功したとき、夫の肩にはきっと天使が舞い降りていたのでしょう」

息子のダグラスさん(37歳)は言う。「皆が冷静さを保っていなければ、父は民家や学校などの上に墜落しかねませんでした。父は運が良かった」

なお、オニールさんは18年のキャリアを持つベテラン・パイロットである。長い経験があったからこそ、目が見えなくなっても無線を使いこなすことができ、操縦桿のほか各種制御レバーを操ることができたのだろう。経験が浅かったら、着陸はおろか、滑走路上空までたどり着くことさえできなかっただろう。

長い経験があったからこそ、レバーをどれくらい動かせば機体がどれくらい反応するかを体が覚えていたのだろう。しかし、数千メートルの高度から目が見えないまま着陸に成功するなんて、いくら的確な誘導があっても神業以外の何物でもない。

本件は、「アンビリバボー」ならびに「世界仰天ニュース」には打って付けの話題となることだろう。別にイヤミでも何でもなく、どちらの番組が先に取り上げるか興味津々である。秀逸な再現ドラマが制作されることに期待したい。




■ Source: mirror.co.uk

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この記事へのコメント

1. Posted by まこと   2008年11月08日 10:39
テレビ…吹っ切れたようですね。清々しさを感じました。

淘汰されますから。放っておきましょう。

残るのはmiccckeyさんの方ですよ。

にしても本心から期待までももてるようになったのならば、本当に器のおおきい方ですね。
2. Posted by tpart   2008年11月09日 02:01
さすがサキだ!
音だけを頼りにクフィルを着陸させた。
3. Posted by     2008年11月09日 02:19
併走しての誘導はまれじゃないってどんなシチュエーションだ?
俺の知らない内に空では一体何が起こっているんだ
4. Posted by shi-ta   2008年11月09日 10:07
「誘導するのはまれではない」というのは文字通り(無線や計器で)誘導して着陸させる経験は充分ある、ということで、伴走飛行まで必要になった今回のケースは、さすがにまれなんじゃないでしょうか?:-)
6. Posted by ・   2008年11月10日 12:48
見えない状態での着陸なんてミラクル杉だなぁ

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