2008年02月28日
ごく稀に、人間の赤ん坊が動物に育てられることがある。やがてその子は、姿かたちがまったく異なるはずの育ての親や兄弟たちと同じような行動様式を示すようになる。文明社会に連れ戻されても、人間の言葉を理解しないし、なかなか人間社会に適応できない。
そして、人間の赤ん坊を我が子同然に育てるのは、たいていの場合、イヌ科の動物か、サルまたは類人猿である。哺乳類以外の動物が人間の赤ん坊を育てるということは、まず考えられない。ところが、このたびロシアで非常に珍しい例が報告された。――“鳥少年”である。
“鳥少年”が見つかった場所は、人里離れた森林の中などではなかった。人口110万人を擁するボルゴグラードの一画に所在するアパートの一室で見つかったのである。しかも、現在7歳になる“鳥少年”は生みの母親と同じ屋根の下で暮らしていた。
だが、この母親(31歳)は決して自分の息子に話しかけようとしなかった。彼女は無類の鳥好きらしく、たった2部屋しかないアパートの中には、数え切れないほどの鳥篭が置かれていた。無数の鳥が餌をついばみ、糞を落としながら、さえずっていた。さらに、ベランダでは野鳥にも餌を与えていた。
母親が少年に暴力を振るった形跡はなく、食べ物もちゃんと与えていた。だが決して息子に人間の言葉で話しかけることはなかった。外で近所の子供たちと接触させることもなかったようだ。
こうして7歳まで鳥小屋同然のアパートの中で外界と接触を絶たれて育ってきた少年は、人間の言葉をまったく理解できない。その代わり、鳥たちとのコミュニケーションは得意なようだ。
「話しかけても、鳥のようにさえずるだけです」と地元のソーシャルワーカー、ガリナ・ボルスカヤさんは言う。
ただし、少年にとって、そのさえずりは何らかの意味を持つコミュニケーション手段となっているらしい。自分のさえずりが相手に理解されないことがわかると、鳥が羽ばたくように手を振り始める。はがゆいのだろう。
現在、“鳥少年”は母親から引き離され、児童養護施設に収容されている。まもなく、心理ケア・センターに移されることになっている。
この7歳の少年には、“モーグリ症候群”という診断が下されている。“モーグリ症候群”とは、ジャングルブックの主人公モーグリのように動物に育てられたため、人間の言語や人間としての行動様式を習得できていないことを意味する。
母親は少年に対する親権を放棄したと伝えられているが、何らかの刑事責任に問われたようには伝えられていない。身体的暴力を加えていなかったとしても、虐待やネグリジェンスの疑いが濃いのではなかろうか。
結果的には“モーグリ症候群患者”を人工的に作り出すプロジェクトを成功させたのと同じである(母親にそういう意図があったとは思えないが)。というか、なにかしら釈然としないものを感じる話である。
この母親にとって、息子は飼い鳥のうちの一羽に過ぎなかった・・・と見ることもできそうだ。飼い鳥に人間の言葉で話しかける癖のある人もいる。もしこの母親にも同じ癖があったなら、少年はかろうじて人間の言葉を覚えていたかもしれない。
あるいは、この母親自身も鳥とのコミュニケーションが得意で、鳥のようにさえずることができるのかもしれない。そして、自分の息子とは“鳥語”でコミュニケーションが取れていたのかもしれない。
なお、本稿は、ロシアのPravda英語版に掲載された記事を情報源としている。しかし、ロシア語からの翻訳であるこの英文記事は、英語が変てこである。定冠詞と不定冠詞の正しい使い分けができていない。筆者の本業では、しばしばこの手の変てこな英語に遭遇するわけだが。
■Source: 'Bird-boy' found in Russia
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だが、この母親(31歳)は決して自分の息子に話しかけようとしなかった。彼女は無類の鳥好きらしく、たった2部屋しかないアパートの中には、数え切れないほどの鳥篭が置かれていた。無数の鳥が餌をついばみ、糞を落としながら、さえずっていた。さらに、ベランダでは野鳥にも餌を与えていた。
母親が少年に暴力を振るった形跡はなく、食べ物もちゃんと与えていた。だが決して息子に人間の言葉で話しかけることはなかった。外で近所の子供たちと接触させることもなかったようだ。
こうして7歳まで鳥小屋同然のアパートの中で外界と接触を絶たれて育ってきた少年は、人間の言葉をまったく理解できない。その代わり、鳥たちとのコミュニケーションは得意なようだ。
「話しかけても、鳥のようにさえずるだけです」と地元のソーシャルワーカー、ガリナ・ボルスカヤさんは言う。
ただし、少年にとって、そのさえずりは何らかの意味を持つコミュニケーション手段となっているらしい。自分のさえずりが相手に理解されないことがわかると、鳥が羽ばたくように手を振り始める。はがゆいのだろう。
現在、“鳥少年”は母親から引き離され、児童養護施設に収容されている。まもなく、心理ケア・センターに移されることになっている。
この7歳の少年には、“モーグリ症候群”という診断が下されている。“モーグリ症候群”とは、ジャングルブックの主人公モーグリのように動物に育てられたため、人間の言語や人間としての行動様式を習得できていないことを意味する。
母親は少年に対する親権を放棄したと伝えられているが、何らかの刑事責任に問われたようには伝えられていない。身体的暴力を加えていなかったとしても、虐待やネグリジェンスの疑いが濃いのではなかろうか。
結果的には“モーグリ症候群患者”を人工的に作り出すプロジェクトを成功させたのと同じである(母親にそういう意図があったとは思えないが)。というか、なにかしら釈然としないものを感じる話である。
この母親にとって、息子は飼い鳥のうちの一羽に過ぎなかった・・・と見ることもできそうだ。飼い鳥に人間の言葉で話しかける癖のある人もいる。もしこの母親にも同じ癖があったなら、少年はかろうじて人間の言葉を覚えていたかもしれない。
あるいは、この母親自身も鳥とのコミュニケーションが得意で、鳥のようにさえずることができるのかもしれない。そして、自分の息子とは“鳥語”でコミュニケーションが取れていたのかもしれない。
なお、本稿は、ロシアのPravda英語版に掲載された記事を情報源としている。しかし、ロシア語からの翻訳であるこの英文記事は、英語が変てこである。定冠詞と不定冠詞の正しい使い分けができていない。筆者の本業では、しばしばこの手の変てこな英語に遭遇するわけだが。
■Source: 'Bird-boy' found in Russia
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この記事へのコメント
1. Posted by こさく 2008年02月29日 12:50
(´ω`)
2. Posted by さよ 2008年03月01日 09:49

3. Posted by 花 2008年03月02日 07:44

私事ですが、Off日には過去の記事へ遡って読むのを一興としています。
禽種での本記事、題目共に惹かれましたので、ここに残させて戴きます。
これからも気長に閲覧する次第です。
5. Posted by similar webpage 2014年05月10日 21:34
e-cigarette vaporizer なんでも評点:“鳥少年”が発見される ― 人間の言葉を理解せず、鳥のようにさえずり鳥のように羽ばたく
6. Posted by 2016年07月21日 20:42
鳥の鳴き声には意味があって、少年はそれを理解していたという事なのかな。
母親が鳥の鳴き声で少年とコミュニケーションをとっていたとしたら少しは救いになるけど…
母親が鳥の鳴き声で少年とコミュニケーションをとっていたとしたら少しは救いになるけど…