2007年03月26日
日本肥満学会、日本糖尿病学会、日本動脈硬化学会などの8学会が2005年4月に合同で公表した「メタボリックシンドローム診断基準」によると、男性ではウエスト周囲径85cm以上、女性では90cm以上が内臓脂肪型肥満を疑う目安だという。また、体重(kg)÷身長(m)の二乗で算出されるBMI(ボディ・マス・インデックス)も肥満判定の基準として定着している。
さらに、家庭用体脂肪計
が量産され広く普及している。しかし、この3つはいずれも目安に過ぎない。それぞれ欠点がある。
内臓脂肪はCTスキャナを使えば、かなり正確に検査できるわけだが、CTスキャナは大掛かりな装置であり、コストがかかる。実際問題、病院に行ってCTスキャンを受けようとしても、予約がいっぱい詰まっていて、なかなか検査を受けられなかったりする。
英国BBC NEWSオンライン版が伝えるところによると、バーミンガムのハートランズ病院で体脂肪検査に特化したBVIスキャナなる装置の臨床試験が進められている。BMI(ボディ・マス・インデックス)が体重(ボディ・マス)に基づく指数であるのに対し、BVI(ボディ・ボリューム・インデックス)は体の容積に基づく指数である。
BVIスキャナは、人体の形状を考慮しつつ、被験者の体内に蓄積されている脂肪の量を測定する仕組みになっているという。BBC NEWSの記事では、BVIスキャナの動作原理と構造についてこれ以上詳しく説明していないが、何らかの方法で被験体を各方向から撮像し、それをソフトウェアで解析してビジュアル化すると共に測定値を出力するようになっていると思われる。
BBC Newsの記事には、人間モルモットとしてBVIスキャンを受けた19歳の少年、アシュリー・グレンジャー君のことが書かれている(写真もある)。アシュリー君は身長が188cmあり、体重が99キロある。BMIを算出すると、標準値を上回る28となり、“肥満”と判定されてしまう。
しかし、アシュリー君は2年前からボート競技に熱心に取り組んでいるアスリートである。BVIスキャンの結果、アシュリー君の体には体脂肪がごくわずかにしか付いておらず、過体重のほとんどが筋肉の発達によるものであることが証明された。
ハートランズ病院の肥満・内分泌科のアサド・ラヒム医師によると、同病院では2年以上前からBVIスキャナの応用試験を進めている。「患者評価のステージを既に完了し、現在は検査結果を精査しているところです」
「BVIスキャンを受けたことで、体重管理の意欲が明らかに向上した患者さんたちが何人もおられます。もっとも、BVIスキャンを受けていなくても、減量に成功した患者さんたちもおられますが」
同病院では、今後2年間にわたり、少なくとも2万人のスキャンを行う計画を実行に移そうとしている。BVIスキャナの開発元であるSelect Research社は、この装置を一般開業医向けに“手ごろな価格”で提供することを目指しているという。
ともあれ、単なるウエストサイズやBMIのような単純計算値だけに頼って、メタボリックシンドロームを予防しようとするのは、大雑把な話だと感じる。筋肉が付きすぎて過体重な人が肩身の狭い思いをするというのもあるが、最も懸念されるのは隠れ肥満の見落としだろう。
もっとも、日本と異なり、英国は肥満率が極めて高い国である。「自分のBMI値が高いのは筋肉質なせいだ」と勝手に決め付けて体重を落とそうとしない人も結構多そうに思う。そこにBVIスキャナが普及すれば、もはや言い訳はできなくなる。
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- ウエストサイズによるメタボ判定:対象者の身長がまったく考慮されていない。低身長であれば85cm(男)/90cm(女)を数センチ下回っていても内臓脂肪型肥満である可能性、高身長の場合は数センチ上回っていても内臓脂肪型肥満ではない可能性があるのではないだろうか。腹筋の付き方も考慮されていない。
目安を単純化することにより、メタボリックシンドロームへの意識を喚起しようという狙いなのかもしれないが、もう少し、きめの細かい基準にするべきではないだろうか。
- 体脂肪計:人体のインピーダンスを測定し、そこから体脂肪率を割り出す仕組みだが、家庭用体脂肪計はいずれもパラメータとして体重と身長の入力を必要とする。一般人(スポーツなどで筋肉が発達していない人)の体形に応じた代表的なパターンに基づく式にインピーダンス、体重、身長、さらには年齢などのパラメータを代入して推測値を算出しているに過ぎない。(参考:Wikipedia - 体脂肪計)
実際のところ、筋肉が多いために過体重の人は、家庭用体脂肪計では“肥満”とか“固太り”と判定されることがままある。そのため“アスリート・モード”なるものを備えている機種もあるが、アスリートと言っても必要最小限の筋肉しか付いていない長距離ランナーもいれば、骨格が分厚い白筋(速筋)に覆われたウエイトリフターもいる。あらゆる筋肉組成のパターンに対応できるわけではないだろう。
- BMI:パラメータが体重と身長の2つだけであるがゆえ、実際には肥満かどうかを判定しているわけではなく、標準体重に対する偏差を出しているに過ぎない。筋肉と脂肪を区別していないのだ。だから、筋肉が発達していて体重の重い人も、肥満と同じ扱いになってしまう。
さらに大きな問題として、BMI値が標準以下であっても、内臓脂肪が厚く蓄積している人(隠れ肥満)がいる。もともと骨細で華奢な人や筋肉が貧弱な人は、その分体重が少なくなるので、筋肉より比重の低い脂肪がBMI値の影に隠れてしまうのだ。
内臓脂肪はCTスキャナを使えば、かなり正確に検査できるわけだが、CTスキャナは大掛かりな装置であり、コストがかかる。実際問題、病院に行ってCTスキャンを受けようとしても、予約がいっぱい詰まっていて、なかなか検査を受けられなかったりする。
英国BBC NEWSオンライン版が伝えるところによると、バーミンガムのハートランズ病院で体脂肪検査に特化したBVIスキャナなる装置の臨床試験が進められている。BMI(ボディ・マス・インデックス)が体重(ボディ・マス)に基づく指数であるのに対し、BVI(ボディ・ボリューム・インデックス)は体の容積に基づく指数である。
BVIスキャナは、人体の形状を考慮しつつ、被験者の体内に蓄積されている脂肪の量を測定する仕組みになっているという。BBC NEWSの記事では、BVIスキャナの動作原理と構造についてこれ以上詳しく説明していないが、何らかの方法で被験体を各方向から撮像し、それをソフトウェアで解析してビジュアル化すると共に測定値を出力するようになっていると思われる。
BBC Newsの記事には、人間モルモットとしてBVIスキャンを受けた19歳の少年、アシュリー・グレンジャー君のことが書かれている(写真もある)。アシュリー君は身長が188cmあり、体重が99キロある。BMIを算出すると、標準値を上回る28となり、“肥満”と判定されてしまう。
しかし、アシュリー君は2年前からボート競技に熱心に取り組んでいるアスリートである。BVIスキャンの結果、アシュリー君の体には体脂肪がごくわずかにしか付いておらず、過体重のほとんどが筋肉の発達によるものであることが証明された。
ハートランズ病院の肥満・内分泌科のアサド・ラヒム医師によると、同病院では2年以上前からBVIスキャナの応用試験を進めている。「患者評価のステージを既に完了し、現在は検査結果を精査しているところです」
「BVIスキャンを受けたことで、体重管理の意欲が明らかに向上した患者さんたちが何人もおられます。もっとも、BVIスキャンを受けていなくても、減量に成功した患者さんたちもおられますが」
同病院では、今後2年間にわたり、少なくとも2万人のスキャンを行う計画を実行に移そうとしている。BVIスキャナの開発元であるSelect Research社は、この装置を一般開業医向けに“手ごろな価格”で提供することを目指しているという。
ともあれ、単なるウエストサイズやBMIのような単純計算値だけに頼って、メタボリックシンドロームを予防しようとするのは、大雑把な話だと感じる。筋肉が付きすぎて過体重な人が肩身の狭い思いをするというのもあるが、最も懸念されるのは隠れ肥満の見落としだろう。
はがゆさ7 | ■■■■■■■□□□ |
もっとも、日本と異なり、英国は肥満率が極めて高い国である。「自分のBMI値が高いのは筋肉質なせいだ」と勝手に決め付けて体重を落とそうとしない人も結構多そうに思う。そこにBVIスキャナが普及すれば、もはや言い訳はできなくなる。
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この記事へのコメント
1. Posted by k 2007年04月01日 01:21

2. Posted by miccckey 2007年04月01日 02:13
>>1
タイポのご指摘ありがとうございます。直しておきました。
タイポのご指摘ありがとうございます。直しておきました。