2007年02月16日
斜面からパラシュートのような翼を広げて走り降り、滑空して離陸していくパラグライダー。その気になれば高度1万メートル近くまで上昇することが可能だという。ただし、生きて戻って来れる見込みはゼロに等しい。
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州で、世界大会に向けて北京から訓練にやってきたパラグライダー・チームの一員で、パラグライダー歴10年のヘイ・ツォンピンさん(42歳)が行方不明になった。彼の姿が最後に目撃されたのは、2月14日の午後3時ごろのこと。おりしも、付近の上空には積乱雲が発達し、雷雨があちこちで発生していた。
翌2月15日、上空から捜索していたヘリが、ビンガラの南東25キロの地点で彼の変わり果てた姿を発見した。彼の死因は、凍死または酸欠死と見られている。積乱雲を形成する降雨セルの1つに吸い上げられ、高度9000メートルあたりまで上昇したらしいのである。
豪州ハンググライディング連盟のクリス・フォッグ理事によれば、ヘイさんは積乱雲の中の激しい上昇気流に巻き込まれ、その高さまで吸い上げられた可能性が高いという。
フォッグ氏は言う。「彼は、呼吸ができず、体の熱を激しく奪われる高さまで到達してしまったのではないかと思います。積乱雲の上部では雹(ひょう)が形成されており、凄まじい乱気流が生じています」
南半球のオーストラリアは現在、夏の真っ盛りだが、9000メートルの高さでは気温は氷点下だという。
フォッグ氏はこう続ける。「彼が巻き込まれた積乱雲は、かなり強力なものでした。彼はおそらく、毎分365メートルの速度で上昇していったと思われます。これほどまで強力な積乱雲が発達しているのを目にしたとき、ほとんどのパラグライダー乗りは、さっさと着陸しようとするでしょうね」
エワ・ウィスニエルスカという名のドイツ人女性パラグライダー乗りがこのような上昇気流に呑み込まれながら生還したことが知られている。彼女の場合、上昇速度は毎秒20メートル、すなわち毎分1200メートルにも達していた。(注:この箇所、コメント欄で指摘された誤記があったので「毎分1200メートル」に訂正)
フォッグ氏によれば、ヘイさんが意識を失った後もパラグライダーが上昇を続けたのではないかという。
豪州ハンググライディング連盟会員のゴッドフレイ・ウェネス氏も、本件にコメントしている。「このあたりのパラグライダー乗りは、積乱雲を極力避けるようにしています。ヘイさんは、積乱雲を形成しているセルとセルの間を潜り抜けようとチャレンジしたのかもしれませんが、現時点では何とも言えませんね。ヘイさんが携帯していたGPS機器からデータを回収すれば、実際に彼がどのような経路で飛行したのかが、もっと詳しく分かるでしょう」
ウェネス氏によると、ヘイさんが上昇気流に吸い上げられた当日は、早朝から積乱雲が発達の兆しを見せていたため、訓練飛行の開始前にその危険性に関するブリーフィングが行なわれていたという。
ウェネス氏は言う。「積乱雲の近くを飛行するのは無茶です。ボーイング747のような大型旅客機ですら、積乱雲の中を通り抜けようとはしません」
「意図的に積乱雲セルの中に針路を定めたのだとしたら、リスクを負う行為どころか、99.9パーセントの確率で死が待ち受けている自殺行為ですよ」
飛行機、パラシュート、パラグライダー、ハンググライダーなど、空を飛ぶ(あるいは空から降下してくる)乗り物で死に至るケースといえば、真っ先に墜落が思い浮かぶところである。ところが、本件のように、まったく正反対に空高く上昇しすぎて死に至るケースもあるのだ。
ギリシャ神話のイカロスは空高く飛びすぎて、太陽の熱で蝋が融けて翼を失って死んだことになっている。だが、実際には、乗員の体が保護されていない乗り物で空高く飛びすぎると、寒さと空気の薄さのために命を落としてしまう。
■ Source: Storm sucked paraglider up to ...
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豪州ハンググライディング連盟のクリス・フォッグ理事によれば、ヘイさんは積乱雲の中の激しい上昇気流に巻き込まれ、その高さまで吸い上げられた可能性が高いという。
フォッグ氏は言う。「彼は、呼吸ができず、体の熱を激しく奪われる高さまで到達してしまったのではないかと思います。積乱雲の上部では雹(ひょう)が形成されており、凄まじい乱気流が生じています」
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フォッグ氏はこう続ける。「彼が巻き込まれた積乱雲は、かなり強力なものでした。彼はおそらく、毎分365メートルの速度で上昇していったと思われます。これほどまで強力な積乱雲が発達しているのを目にしたとき、ほとんどのパラグライダー乗りは、さっさと着陸しようとするでしょうね」
エワ・ウィスニエルスカという名のドイツ人女性パラグライダー乗りがこのような上昇気流に呑み込まれながら生還したことが知られている。彼女の場合、上昇速度は毎秒20メートル、すなわち毎分1200メートルにも達していた。(注:この箇所、コメント欄で指摘された誤記があったので「毎分1200メートル」に訂正)
フォッグ氏によれば、ヘイさんが意識を失った後もパラグライダーが上昇を続けたのではないかという。
豪州ハンググライディング連盟会員のゴッドフレイ・ウェネス氏も、本件にコメントしている。「このあたりのパラグライダー乗りは、積乱雲を極力避けるようにしています。ヘイさんは、積乱雲を形成しているセルとセルの間を潜り抜けようとチャレンジしたのかもしれませんが、現時点では何とも言えませんね。ヘイさんが携帯していたGPS機器からデータを回収すれば、実際に彼がどのような経路で飛行したのかが、もっと詳しく分かるでしょう」
ウェネス氏によると、ヘイさんが上昇気流に吸い上げられた当日は、早朝から積乱雲が発達の兆しを見せていたため、訓練飛行の開始前にその危険性に関するブリーフィングが行なわれていたという。
ウェネス氏は言う。「積乱雲の近くを飛行するのは無茶です。ボーイング747のような大型旅客機ですら、積乱雲の中を通り抜けようとはしません」
「意図的に積乱雲セルの中に針路を定めたのだとしたら、リスクを負う行為どころか、99.9パーセントの確率で死が待ち受けている自殺行為ですよ」
飛行機、パラシュート、パラグライダー、ハンググライダーなど、空を飛ぶ(あるいは空から降下してくる)乗り物で死に至るケースといえば、真っ先に墜落が思い浮かぶところである。ところが、本件のように、まったく正反対に空高く上昇しすぎて死に至るケースもあるのだ。
ギリシャ神話のイカロスは空高く飛びすぎて、太陽の熱で蝋が融けて翼を失って死んだことになっている。だが、実際には、乗員の体が保護されていない乗り物で空高く飛びすぎると、寒さと空気の薄さのために命を落としてしまう。
過ぎたるは及ば ざるがごとし度10 | ■■■■■■■■■■ |
■ Source: Storm sucked paraglider up to ...
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1. 彼氏からプレゼントを貰えなかったので……彼の陰茎と自分の乳首をナタで切除した女 他 [ 風風書堂‐ニュースログ‐ ] 2007年02月18日 18:31
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この記事へのコメント
1. Posted by name 2007年02月18日 07:39
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2007/02/17/06.html
生きて帰った人もいれば、帰れなかった人もいるようで、紙一重ですね。
温暖化の異常気象の関係もあるんでしょうか?
日本も最近、強風で座礁する船のニュースが多いように思うのですが。
生きて帰った人もいれば、帰れなかった人もいるようで、紙一重ですね。
温暖化の異常気象の関係もあるんでしょうか?
日本も最近、強風で座礁する船のニュースが多いように思うのですが。
2. Posted by ・ 2007年02月18日 13:01
毎秒20メートルだったら毎分は1200メートルじゃないのか?
3. Posted by 2007年02月18日 18:17
ドラマのCSIで、これを使って殺人をした回がありましたね。
4. Posted by mw 2007年02月19日 12:53
「夜鷹の星」も高空で凍えて、
そのままお星様になってたっけ。
そのままお星様になってたっけ。
5. Posted by 鱈 2007年02月19日 13:25
9000メートルか、、、エベレスト(8800メートル級)の山頂近くには、何十年もの間放置されたアルピニストの遺体が数多くあるという。冒険野郎どもの死に合掌。
6. Posted by √ 2007年02月20日 18:55
クトゥルフ神話のイタカを彷彿とする記事だね
7. Posted by you 2007年02月20日 19:58
やっぱイタカ書かれてたw
8. Posted by 1フライヤー 2007年03月24日 16:45
普通のフライヤーなら積乱雲が発達し始めたら出来うる限りの降下手段を講じて着陸しようとします。
この記事のフライヤーは積乱雲に気付かなかったのか、
生来の無茶か、考えが極端に甘かったか・・・
この記事のフライヤーは積乱雲に気付かなかったのか、
生来の無茶か、考えが極端に甘かったか・・・