2007年02月06日
2月6日現在、『僕は妹に恋をする』という題名の映画が日本全国の劇場で上映されている。同名のコミックが原作である。この物語の設定において、非常に重要な意味を持つキーワードとして「異父重複受精」が出てくるらしい。そして、「異父重複受精」をgoogleで検索すると、当ブログの記事がトップに表示される。このため、「異父重複受精」で検索して記事を参照する人がにわかに増えてきている。
「異父重複受精」とは、父親が異なる子が同じ母体の中に同時に宿ることを意味する。ヒットするのは、「姉牛が生まれたわずか21日後に妹牛が生まれる ― 人間の場合もありえなくはない異父重複受精」という記事である。家畜の牛において「異父重複受精」と判断された事例を紹介した。記事の後半部で人間の場合も起こりうることを示すデータに言及した。
では、異父重複受精は、どういう状況で発生しうるのだろうか? 女性が2人以上の男性と相次いで交わった場合というのを誰しも思い浮かべるところだろう。もちろん、それも異父重複受精が起こりうる状況なわけだが、最近では、子宝に恵まれないカップルが体外受精(IVF)に頼るケースが増えている。このとき、父親の精子に別の誰かの精子が紛れ込むというミスが起こりうる。
体外受精では、妊娠率を高めるために複数の受精卵が母親の胎内に戻されることが多い。もし、別の誰かの精子が紛れ込んでいて、その精子を受精した卵が本来の父親の精子を受精した卵とともに胎内に戻され、その両方が妊娠に至ったとするとどうだろう? まさしく、父親の異なる2人の子が母体に宿ることになる。なにせ、複数の受精卵が胎内に戻されるのだから、「相次いで・・・」のケースよりも、はるかに異父重複受精の発生率が高くなるはずである(もちろん、他人の精子が混入するというミスがあった場合に限られるが)。
人間における“異父重複受精”について、具体例を交えながら、わかりやすく説明している記事が“DamnInteresting”という英語サイトにあるのを見つけた。“Half-Brothers in the Womb”と題された記事である。
“Half-Brothers in the Womb”では、まず1993年にウィルマ・ステュアートという名の女性が一度の出産で生んだ2人の兄弟のことを取り上げている。この2人は、二卵性双生児として生まれた。だが、オランダ系移民の子孫である両親の形質を受け継いでいるのは一方の子だけで、もう一方の子は褐色の肌をしていた。
ウィルマさんの妊娠は、体外受精によるものだった。しかし、父親の精子を採取するときに使用したピペットに問題があった。許されざる怠慢だった。別の男性の精子を採取したピペットを再使用したのだという。このため、2人の男性の精子が体外受精に使用される結果となった。こうして父親の異なる2個の受精卵がウィルマさんの胎内に着床し、胎児へと育っていった。
この2人は“双子”として生まれたものの、厳密に言うと双子ではなく、同時に母体に宿り同時に生を受けた“異父兄弟”である。こうして、この2人は稀なる異父重複受精(heteropaternal superfecundation)の事例として医学文献に記載されることとなった。
“Half-Brothers in the Womb”によれば、最も古い例は、米国の医師ジョン・アーカーが1810年に報告した例だという。白人の女性が双子を出産したが、一方は肌が白く、もう一方は褐色だった。この女性は、黒人男性と交わりを持った数日後に白人男性とも交わったことがわかっている。この事例は、1980年に医学の教科書『Williams Obstetrics』に収録された。
1980年代半ばになって親子鑑定の技術が進歩すると、異父重複受精とされる例が相次いで報告された。「父親認知訴訟の対象となった双子のうち2.4パーセントは、父を同じくする双子ではなく異父重複受精による多胎児だ」とする論文も発表されたりしたわけである。
“Half-Brothers in the Womb”の記事には、関連情報へのリンクがいくつか示されているが、クロアチアで生まれた色違いの女の双子のことを写真入りで取り上げているサイトへのリンクがある。
このリンク先には、「母親は2人の男性と同時に交渉を持った」という赤裸々な記述がある。DNA鑑定の結果でも、父親が異なることが証明されたという。「相次いで」よりも「同時に」の方が発生確率が高くなるのは当然のことであろう。もちろん、そのときたまたま複数個の卵子が排卵されている必要がある(通常は、1個ずつしか排卵されない)。
これまでに異父重複受精と確認された例は、ほとんどすべてが肌の色の違いからその疑いが持たれた場合のようである。この点において日本では、実際には異父重複受精による異父兄弟であっても、その疑いが持たれる可能性自体が少ないと言えそうだ。(もっとも、双子の片方の血液型が父親と母親の間に生まれるはずのない血液型だった場合は話が別だが)。
ともあれ、“異父重複受精”とは都市伝説の1種だと思っていた人もいるかもしれない。しかし、実際には、ごく稀に起こりうるわけである。可愛い双子が生まれて、どちらも自分の子だと信じていた父親にしたら、その事実を知ったときほど青天の霹靂なことはないだろう。
さらに、体外受精時に他人の精子が混入したことが異父重複受精の原因であった場合は、母親も等しくショックを受ける。そうでない場合は、修羅場が待ち受けていそうだが。
た・だ・し、異父重複受精でなくても、両親から受け継いだ遺伝子の組み合わせ次第で肌の色の違う双子が生まれることがある。当ブログで過去に2回取り上げたことがある(下記「関連記事」)。
【関連記事】
たとえば、1992年にイタリアで発表された論文によると、39,000件の親子鑑別結果が記録されているデータベースを分析したところ、異父重複受精と思われる例が3件見つかった。父親認知訴訟の対象となった双子のうち2.4パーセントは、父を同じくする双子ではなく異父重複受精による多胎児だという。
では、異父重複受精は、どういう状況で発生しうるのだろうか? 女性が2人以上の男性と相次いで交わった場合というのを誰しも思い浮かべるところだろう。もちろん、それも異父重複受精が起こりうる状況なわけだが、最近では、子宝に恵まれないカップルが体外受精(IVF)に頼るケースが増えている。このとき、父親の精子に別の誰かの精子が紛れ込むというミスが起こりうる。
体外受精では、妊娠率を高めるために複数の受精卵が母親の胎内に戻されることが多い。もし、別の誰かの精子が紛れ込んでいて、その精子を受精した卵が本来の父親の精子を受精した卵とともに胎内に戻され、その両方が妊娠に至ったとするとどうだろう? まさしく、父親の異なる2人の子が母体に宿ることになる。なにせ、複数の受精卵が胎内に戻されるのだから、「相次いで・・・」のケースよりも、はるかに異父重複受精の発生率が高くなるはずである(もちろん、他人の精子が混入するというミスがあった場合に限られるが)。
人間における“異父重複受精”について、具体例を交えながら、わかりやすく説明している記事が“DamnInteresting”という英語サイトにあるのを見つけた。“Half-Brothers in the Womb”と題された記事である。
“Half-Brothers in the Womb”では、まず1993年にウィルマ・ステュアートという名の女性が一度の出産で生んだ2人の兄弟のことを取り上げている。この2人は、二卵性双生児として生まれた。だが、オランダ系移民の子孫である両親の形質を受け継いでいるのは一方の子だけで、もう一方の子は褐色の肌をしていた。
注:この兄弟については、米国のMSNBC.comが2005年の9月29日付の記事で2人の画像、映像、母親へのインタビューを伝えている。決してガセではない。
ウィルマさんの妊娠は、体外受精によるものだった。しかし、父親の精子を採取するときに使用したピペットに問題があった。許されざる怠慢だった。別の男性の精子を採取したピペットを再使用したのだという。このため、2人の男性の精子が体外受精に使用される結果となった。こうして父親の異なる2個の受精卵がウィルマさんの胎内に着床し、胎児へと育っていった。
この2人は“双子”として生まれたものの、厳密に言うと双子ではなく、同時に母体に宿り同時に生を受けた“異父兄弟”である。こうして、この2人は稀なる異父重複受精(heteropaternal superfecundation)の事例として医学文献に記載されることとなった。
“Half-Brothers in the Womb”によれば、最も古い例は、米国の医師ジョン・アーカーが1810年に報告した例だという。白人の女性が双子を出産したが、一方は肌が白く、もう一方は褐色だった。この女性は、黒人男性と交わりを持った数日後に白人男性とも交わったことがわかっている。この事例は、1980年に医学の教科書『Williams Obstetrics』に収録された。
1980年代半ばになって親子鑑定の技術が進歩すると、異父重複受精とされる例が相次いで報告された。「父親認知訴訟の対象となった双子のうち2.4パーセントは、父を同じくする双子ではなく異父重複受精による多胎児だ」とする論文も発表されたりしたわけである。
“Half-Brothers in the Womb”の記事には、関連情報へのリンクがいくつか示されているが、クロアチアで生まれた色違いの女の双子のことを写真入りで取り上げているサイトへのリンクがある。
このリンク先には、「母親は2人の男性と同時に交渉を持った」という赤裸々な記述がある。DNA鑑定の結果でも、父親が異なることが証明されたという。「相次いで」よりも「同時に」の方が発生確率が高くなるのは当然のことであろう。もちろん、そのときたまたま複数個の卵子が排卵されている必要がある(通常は、1個ずつしか排卵されない)。
注:複数の卵子が同時に排卵されているとき、同じ父親の精子を複数の卵子が受精すれば、二卵性双生児(もしくは、三つ子など、それ以上の多卵性多胎児)を妊娠することになる。だが、何らかの理由により二人以上の男性の精子が相前後して女性の体内に入ると、異父重複受精が生じる可能性がある。
精子は女性の胎内で数日間生きていることがある。ただし、卵子は約24時間のうちに受精しないと死んでしまう。
これまでに異父重複受精と確認された例は、ほとんどすべてが肌の色の違いからその疑いが持たれた場合のようである。この点において日本では、実際には異父重複受精による異父兄弟であっても、その疑いが持たれる可能性自体が少ないと言えそうだ。(もっとも、双子の片方の血液型が父親と母親の間に生まれるはずのない血液型だった場合は話が別だが)。
ともあれ、“異父重複受精”とは都市伝説の1種だと思っていた人もいるかもしれない。しかし、実際には、ごく稀に起こりうるわけである。可愛い双子が生まれて、どちらも自分の子だと信じていた父親にしたら、その事実を知ったときほど青天の霹靂なことはないだろう。
青天の霹靂度10 | ■■■■■■■■■■ |
さらに、体外受精時に他人の精子が混入したことが異父重複受精の原因であった場合は、母親も等しくショックを受ける。そうでない場合は、修羅場が待ち受けていそうだが。
た・だ・し、異父重複受精でなくても、両親から受け継いだ遺伝子の組み合わせ次第で肌の色の違う双子が生まれることがある。当ブログで過去に2回取り上げたことがある(下記「関連記事」)。
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1. 風風書堂‐ニュースログ‐ [ 風風書堂‐ニュースログ‐ ] 2007年02月06日 21:03
この記事へのコメント
1. Posted by びじ 2007年02月07日 03:20

海外の仰天ニュース扱うサイトも近ごろ増えてきましたよね。その反面、AZOZとか有名どころが更新ストップしていたり。AZOZは文章のペーソスが利いていておもしろいサイトだったのに。 競争が激しいなかで独自路線進めるのも、評点さんの強みですよね。
急にやめたとか言わないでくださいよ。この記事の現時点でのアンマッチなキーワード広告見てると、ちょっと不安に。本業に専念しているほうが百倍儲かるなんていわないでくださいよ。
2. Posted by QC 2007年02月07日 03:44

おっしゃるとおりの懸念を覚えます。本業でもひっぱりだこな翻訳家がどこまでボランティア活動みたいなことを続けられるのかって
前に筆者さんもご自分でそんな主旨のこと書いていたけど
あ、でもこの記事みたいな路線は私自身はあまり好きではありません。感動系の記事のファンです。
3. Posted by # 2007年02月07日 18:28

4. Posted by 七瀬 2007年02月12日 04:19

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