2006年07月09日
まもなく5歳の誕生日を迎えるカイヤ・トーマスちゃんという女の子が英国ウェールズのスウォンジーにいる。彼女は“ミラクル・ガール”と呼ばれている。まだお母さんの子宮の中にいたときにガンと診断されたが、誕生までのわずかな期間でガン細胞が消えてしまい(“自然縮退”)、健康な赤ちゃんとしてこの世に生を受けることができたからである。
カイヤちゃんの母親デニス・アシュフォードさんは、19歳でカイヤちゃんを身ごもった。妊娠14週目で超音波検診を受けたところ、お腹の中のカイヤちゃんの体にガンが見つかった。初期の神経芽細胞腫という診断だった。
ガンは乳児にも生じる。乳児のガンで最も多く見られるのは、神経芽細胞腫だと言われる。腹部や胸の神経、副腎、脊髄などの神経組織がガン細胞に犯される病気である。乳児の神経芽細胞腫は、誕生後に生じたものとは限らない。実際には胎児のときから発生していて、誕生後しばらくして見つかることがある。このため、ごく稀ではあるが、本件がそうであるように胎児の超音波検診中に神経芽細胞腫が見つかることがあるようだ。
英国では、小児ガンで亡くなる子供の13パーセントが神経芽細胞腫の患者だという。医師たちは、このままガンが進行した場合、せっかくこの世に生を受けた赤ちゃんが深刻な事態に陥る可能性があることを懸念し、出産をあきらめるというオプションをデニスさん(当時19歳)とパートナーのピーター・トーマスさん(当時32歳)に提示した。
新しい命を授かり幸せいっぱいだったデニスさんとピーターさんは、急転直下、絶望の淵に投げ落とされた。だが二人は、出産をあきらめるというオプションを断固として拒否。奇跡が起きてくれることを願った。
未だその顔を見ぬわが子がガンにかかっているという宣告を受けてから数週間の間、デニスさんはピーターさんと共にウェールズ中の病院を駆け回って医師の意見を仰ぎ、腫瘍が成長していないこと、いや腫瘍が小さくなっていることを願いながらスキャンを受けた。
デニスさんが最初の診断の直後に出産をあきらめなかったのは大正解だった。なんと、4回目のスキャンで、腫瘍が小さくなっていることが確認されたのである。検査を担当した医師はデニスさんにこう話した。「生後間もない赤ちゃんの場合は、神経芽細胞腫が自然に消えることがあります」
そして、その後、4週間のうちに子宮の中の赤ちゃんから腫瘍が完全に消えてしまった。“自然縮退”が起きたのである。デニスさんとピーターさんが願った“奇跡”が現実のものとなった。
その後、カイヤちゃんはデニスさんのお腹の中ですくすくと育った。ついに出産の時を迎え、2750グラムで生まれた。カイヤちゃんの健康状態を確認するための一連の検査が行なわれたが、一切、異常は見つからなかった。
神経芽細胞腫を研究しているデビッド・ラッチマン博士によると、ごく少数ながら、これまでにも小児/乳児の体内に生じたガン細胞が“自然縮退”し、正常細胞と置き換わった例が報告されているという(上記と重複する話だが)。
一方、英国神経芽細胞腫協会の会長を務めているアントーニャ・クーパー博士は、子宮内の胎児が神経芽細胞腫から自然治癒することはもとより、神経芽細胞腫と診断されること自体、極めて稀なことだと話している。
英国では、毎年70人の乳幼児が神経芽細胞腫と診断されている。日本の「医学辞典」サイト(http://www.kirishimacho.com/HouseCall/)によると、神経芽細胞腫の原因はまだわかっておらず、遺伝的な傾向があるとも考えられている。多くの場合は、5才未満で診断される。発生率は、およそ100,000人に1人とのこと。
Cancer Research UKのスポークスマンは、本件に関して次のようにコメントしている。「ありえないと思われたことが現実に起きたわけです。同じ病気の子を持つ親御さんたちに希望を与えてくれる話です。そして、こうして生き延びたお子さんに関する調査研究を続けていけば、やがてはこの病気の治療法確立に繋がるかもしれませんね」
ともあれ、デニスさんは出産をあきらめないでよかった。最初に診断した医師の勧めに従って出産をあきらめていたら、本来ならその後、ガン細胞が縮退して、この世に健康に赤ちゃんとして生を受ける予定だった命をいたずらに奪う結果になっていた(運命論的な言い方をすればだが)。絶望的状況に立たされても、最後まであきらめるべきではないという教訓を与えてくれる好例だと言えよう。
とはいえ、超音波検査が普及するより以前のことだったら、カイヤちゃんが神経芽細胞腫と診断されることも、ガン細胞が自然縮退したと確認されることもなかっただろう。“知らぬが仏”だったかもしれない。超音波検査が普及しているばかりに、お腹の中の子がガンと聞かされて受けた精神的ショックの大きさを考えれば・・・。
医学や検査技術の進歩には、一抹の“ありがた迷惑さ”が付随することがあったりするかもしれない。実際、ガン細胞が発生してから縮退するまでの期間中にデニスさんが超音波検診を受けそびれていたら、何事もなかったに等しいわけでもある。
それと、ネタ元にした2つの記事で少し気になる点がある。これらの記事では、神経芽細胞腫と診断されたカイヤちゃんが5歳の誕生日を迎えたこと自体、“something experts thought would never happen(専門家たちがありえないと考えたこと)”とか“never supposed to be this old”(まさか5歳まで生き延びられるとは考えられていなかった)などと大げさに書かれているが、誇張のしすぎかもしれない。『メルクマニュアル家庭版』には、次のように書かれている。
■ Sources:
【関連記事】
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英国では、小児ガンで亡くなる子供の13パーセントが神経芽細胞腫の患者だという。医師たちは、このままガンが進行した場合、せっかくこの世に生を受けた赤ちゃんが深刻な事態に陥る可能性があることを懸念し、出産をあきらめるというオプションをデニスさん(当時19歳)とパートナーのピーター・トーマスさん(当時32歳)に提示した。
新しい命を授かり幸せいっぱいだったデニスさんとピーターさんは、急転直下、絶望の淵に投げ落とされた。だが二人は、出産をあきらめるというオプションを断固として拒否。奇跡が起きてくれることを願った。
未だその顔を見ぬわが子がガンにかかっているという宣告を受けてから数週間の間、デニスさんはピーターさんと共にウェールズ中の病院を駆け回って医師の意見を仰ぎ、腫瘍が成長していないこと、いや腫瘍が小さくなっていることを願いながらスキャンを受けた。
デニスさんが最初の診断の直後に出産をあきらめなかったのは大正解だった。なんと、4回目のスキャンで、腫瘍が小さくなっていることが確認されたのである。検査を担当した医師はデニスさんにこう話した。「生後間もない赤ちゃんの場合は、神経芽細胞腫が自然に消えることがあります」
そして、その後、4週間のうちに子宮の中の赤ちゃんから腫瘍が完全に消えてしまった。“自然縮退”が起きたのである。デニスさんとピーターさんが願った“奇跡”が現実のものとなった。
その後、カイヤちゃんはデニスさんのお腹の中ですくすくと育った。ついに出産の時を迎え、2750グラムで生まれた。カイヤちゃんの健康状態を確認するための一連の検査が行なわれたが、一切、異常は見つからなかった。
神経芽細胞腫を研究しているデビッド・ラッチマン博士によると、ごく少数ながら、これまでにも小児/乳児の体内に生じたガン細胞が“自然縮退”し、正常細胞と置き換わった例が報告されているという(上記と重複する話だが)。
一方、英国神経芽細胞腫協会の会長を務めているアントーニャ・クーパー博士は、子宮内の胎児が神経芽細胞腫から自然治癒することはもとより、神経芽細胞腫と診断されること自体、極めて稀なことだと話している。
英国では、毎年70人の乳幼児が神経芽細胞腫と診断されている。日本の「医学辞典」サイト(http://www.kirishimacho.com/HouseCall/)によると、神経芽細胞腫の原因はまだわかっておらず、遺伝的な傾向があるとも考えられている。多くの場合は、5才未満で診断される。発生率は、およそ100,000人に1人とのこと。
Cancer Research UKのスポークスマンは、本件に関して次のようにコメントしている。「ありえないと思われたことが現実に起きたわけです。同じ病気の子を持つ親御さんたちに希望を与えてくれる話です。そして、こうして生き延びたお子さんに関する調査研究を続けていけば、やがてはこの病気の治療法確立に繋がるかもしれませんね」
ともあれ、デニスさんは出産をあきらめないでよかった。最初に診断した医師の勧めに従って出産をあきらめていたら、本来ならその後、ガン細胞が縮退して、この世に健康に赤ちゃんとして生を受ける予定だった命をいたずらに奪う結果になっていた(運命論的な言い方をすればだが)。絶望的状況に立たされても、最後まであきらめるべきではないという教訓を与えてくれる好例だと言えよう。
とはいえ、超音波検査が普及するより以前のことだったら、カイヤちゃんが神経芽細胞腫と診断されることも、ガン細胞が自然縮退したと確認されることもなかっただろう。“知らぬが仏”だったかもしれない。超音波検査が普及しているばかりに、お腹の中の子がガンと聞かされて受けた精神的ショックの大きさを考えれば・・・。
医学や検査技術の進歩には、一抹の“ありがた迷惑さ”が付随することがあったりするかもしれない。実際、ガン細胞が発生してから縮退するまでの期間中にデニスさんが超音波検診を受けそびれていたら、何事もなかったに等しいわけでもある。
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それと、ネタ元にした2つの記事で少し気になる点がある。これらの記事では、神経芽細胞腫と診断されたカイヤちゃんが5歳の誕生日を迎えたこと自体、“something experts thought would never happen(専門家たちがありえないと考えたこと)”とか“never supposed to be this old”(まさか5歳まで生き延びられるとは考えられていなかった)などと大げさに書かれているが、誇張のしすぎかもしれない。『メルクマニュアル家庭版』には、次のように書かれている。
経過の見通しと治療
1歳未満の子供と癌が小さい子供の経過の見通し(予後)はかなり良好です。転移がない場合は、手術で切除できます。ほとんどすべての子供は、ビンクリスチン、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エトポシド、シスプラチンなどによる化学療法を受けます。さらに放射線療法を行う場合もあります。1歳以上の子供で癌が転移していた場合は、治癒率が低くなります。
【引用元URL】http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec23/ch283/ch283c.html
■ Sources:
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