2006年03月10日
日本では、人喰いバクテリアといえば、肝臓疾患のある人が生の魚介類を食べて感染し、重篤な容態に陥って亡くなったというニュースがこれまで何度となく伝えられている。ビブリオ・バルニフィカス菌と呼ばれるバクテリアの仕業である。一方、どこに潜んでいるかわからず、健康な人でも何かのはずみに感染してしまう可能性があるという意味で、もっと恐ろしい人喰いバクテリアもいる。侵襲性Ａ群連鎖球菌と呼ばれる。
米国ノースカロライナ州ハーネット・カウンティで、2月24日のこと、老人ホームの職員をしているシャロン・ビッショップさんという44歳の女性が親指の腫れと痛みを夫のデビッドさんに訴えた。
少し前、仕事中に車椅子を押しているときに車輪に挟まれてしまったのだが、いっこうに良くならず、脱臼しているのではないかと心配になってきた。
デビッドさんはシャロンさんをベスティ・ジョンション地域病院に連れて行った。彼女を診た医師は、さほど深刻な症状とは診断せず、鎮痛薬を処方してくれただけだった。
シャロンさんは、しばらく鎮痛剤で痛みをしのいでいたが、腫れは悪化するばかりだった。2月27日の朝には、腫れが腕全体に広がり、腕が通常の2倍の大きさにまで膨らんでしまった。今にも破裂してしまいそうなほどだった。さらに、肘と手首からは膿状の液が漏れ出していた。シャロンさんは激痛を訴えた。
シャロンさんは、ノースカロライナ大学（UNC）付属病院に搬送された。彼女を診たアブラハム・オウデン医師は、彼女がA 群連鎖球菌性壊死性筋膜炎にかかっており、このままでは体中の組織が破壊されてしまうとの診断を下した。
大学病院の医師たちは、シャロンさんの命を救うべく、2月27日の夜に以下の処置を行った。
だが、もはや手遅れだった。シャロンさんは、発症からわずか4日目にして帰らぬ人となってしまった。
ノースカロライナ州の福祉保健局が本件の調査を開始した。福祉保健局の広報担当者デビー・クレーンさんは、こう述べている。「（激症連鎖球菌感染症は）サメに襲われたり、稲妻に打たれたりするのと同じほどまれにしか起きません。地域社会に感染が広がるというような怖れはありません」
A 群連鎖球菌には、これほどまでに深刻な症状を招かない非侵襲性のものもある。連鎖球菌性咽頭炎という病気を引き起こすが、通常は抗生物質の投与で治る。
福祉保健局のデビー・クレーンさんによると、ノースカロライナ州では、毎年、侵襲性Ａ群連鎖球菌の感染例が125件ほど報告されている。うち、死に至るのは10パーセント程度だという。
シャロンさんの夫デビッドさんは、シャロンさんが亡くなった大学病院の医師たちから、彼女がどこで感染したのかを特定することは不可能だ聞かされた。A 群連鎖球菌自体は、どこにでもいる菌だからである。そのどこにでもいるはずの菌が何かのはずみで恐ろしい人喰いバクテリア（侵襲性Ａ群連鎖球菌）に突然変異してしまうのだ。そういう意味では、紙一重な存在である。
ただの打ち身や捻挫などで手足が腫れているのだと思っているうちに、どんどん腫れが悪化し、その正体が明らかになったときには手遅れである可能性が高いわけで、実に恐ろしい病原体である。だが、ノースカロライナ州保健局の広報担当者が言うように、確率的にはサメに襲われたり、落雷に打たれたりするのと同じくらい珍しいことなので、あまり神経質になる必要はないだろう。というわけで、上の評点は3ポイント減じておいた。
なお、本件より少し前に、同じく米国のシアトルでも、バスケットボールをしていて唇を切った6歳の少年が人喰いバクテリアに感染したことが伝えられていた。その少年の場合は、運よく快方に向かいつつあるという。ただ、そのニュースを伝えている記事（下記）には、腫れ上がった少年の顔写真が掲載されていて、少しショッキングである。
日本でも、侵襲性Ａ群連鎖球菌で亡くなる人は毎年何人もいるはずである。ただ、その実態が明確に伝えられていない。ネット上を検索しても、明確な数値は見つからない（調べ方が悪いのかもしれないが）。
■ Sources:
【関連記事】
【参考リンク】
少し前、仕事中に車椅子を押しているときに車輪に挟まれてしまったのだが、いっこうに良くならず、脱臼しているのではないかと心配になってきた。
デビッドさんはシャロンさんをベスティ・ジョンション地域病院に連れて行った。彼女を診た医師は、さほど深刻な症状とは診断せず、鎮痛薬を処方してくれただけだった。
シャロンさんは、しばらく鎮痛剤で痛みをしのいでいたが、腫れは悪化するばかりだった。2月27日の朝には、腫れが腕全体に広がり、腕が通常の2倍の大きさにまで膨らんでしまった。今にも破裂してしまいそうなほどだった。さらに、肘と手首からは膿状の液が漏れ出していた。シャロンさんは激痛を訴えた。
シャロンさんは、ノースカロライナ大学（UNC）付属病院に搬送された。彼女を診たアブラハム・オウデン医師は、彼女がA 群連鎖球菌性壊死性筋膜炎にかかっており、このままでは体中の組織が破壊されてしまうとの診断を下した。
大学病院の医師たちは、シャロンさんの命を救うべく、2月27日の夜に以下の処置を行った。
- 腫れている方の腕を鎖骨部分から切断。
- 左側の胸、胴、大腿部から、あらゆる筋肉と組織を切除。
だが、もはや手遅れだった。シャロンさんは、発症からわずか4日目にして帰らぬ人となってしまった。
ノースカロライナ州の福祉保健局が本件の調査を開始した。福祉保健局の広報担当者デビー・クレーンさんは、こう述べている。「（激症連鎖球菌感染症は）サメに襲われたり、稲妻に打たれたりするのと同じほどまれにしか起きません。地域社会に感染が広がるというような怖れはありません」
A 群連鎖球菌には、これほどまでに深刻な症状を招かない非侵襲性のものもある。連鎖球菌性咽頭炎という病気を引き起こすが、通常は抗生物質の投与で治る。
福祉保健局のデビー・クレーンさんによると、ノースカロライナ州では、毎年、侵襲性Ａ群連鎖球菌の感染例が125件ほど報告されている。うち、死に至るのは10パーセント程度だという。
シャロンさんの夫デビッドさんは、シャロンさんが亡くなった大学病院の医師たちから、彼女がどこで感染したのかを特定することは不可能だ聞かされた。A 群連鎖球菌自体は、どこにでもいる菌だからである。そのどこにでもいるはずの菌が何かのはずみで恐ろしい人喰いバクテリア（侵襲性Ａ群連鎖球菌）に突然変異してしまうのだ。そういう意味では、紙一重な存在である。
| 紙一重指数７ | ■■■■■■■□□□ |
ただの打ち身や捻挫などで手足が腫れているのだと思っているうちに、どんどん腫れが悪化し、その正体が明らかになったときには手遅れである可能性が高いわけで、実に恐ろしい病原体である。だが、ノースカロライナ州保健局の広報担当者が言うように、確率的にはサメに襲われたり、落雷に打たれたりするのと同じくらい珍しいことなので、あまり神経質になる必要はないだろう。というわけで、上の評点は3ポイント減じておいた。
なお、本件より少し前に、同じく米国のシアトルでも、バスケットボールをしていて唇を切った6歳の少年が人喰いバクテリアに感染したことが伝えられていた。その少年の場合は、運よく快方に向かいつつあるという。ただ、そのニュースを伝えている記事（下記）には、腫れ上がった少年の顔写真が掲載されていて、少しショッキングである。
日本でも、侵襲性Ａ群連鎖球菌で亡くなる人は毎年何人もいるはずである。ただ、その実態が明確に伝えられていない。ネット上を検索しても、明確な数値は見つからない（調べ方が悪いのかもしれないが）。
■ Sources:
- http://www.wbt.com/news/detail_wbt.cfm?article
_id=25894(AP)（本稿の主なソース）
- http://www.nwcn.com/statenews/washington/stories/NW_030306
WABflesheatingDS.81791115.html（感染した6歳少年の顔写真あり）
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1. ◆仕事中に指を挟んだ女性が人喰いバクテリアに感染、わずか4日後に全身を食い尽くされる（なんでも評点さん） [ Teru's Web ] 2006年03月10日 23:55
((((；ﾟДﾟ)))ｶﾞｸｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
劇症溶連菌の恐さは知ってるし、事例の写真も見たことはあるけれど、実際の話を聞くとあまりにも恐すぎる。
この記事へのコメント
1. Posted by yoyo 2006年03月10日 06:04
なーんか最近の、全部昔どっかで読んだような記事ばっかね。もっと新鮮なのないのかよ。
2. Posted by miccckey 2006年03月10日 15:51
ここ数日、ネタ的には不漁かもね。こういうときは意外性よりも話題性を基準としてネタを選ぶことになる。ご理解されたし。
3. Posted by ろーにんあじ 2006年03月11日 08:03
自分は人喰いバクテリア知らなかった(--;
なんかこれ「バイオハザード」の世界だなあ。
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4. Posted by prs 2006年03月11日 13:52
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