2005年05月07日
インド・西ベンガル州のダマイティクリ村で、数ヶ月前、貧しい農家の娘チャビ・シャバール（17歳）の腹部が膨らみ始めた。周りの村人たちも、やがてそのことに気付き、チャビは未婚の身でありながら妊娠しているに違いないと決め付けた。
チャビの父は、あわてて彼女を地元の医者に診せた。医者は、彼女の腹部が膨らみ続けていること、そして彼女が吐き気と呼吸障害を患っていることを根拠に、チャビは確かに妊娠していると断定した。
チャビの父は、あわてて彼女を地元の医者に診せた。医者は、彼女の腹部が膨らみ続けていること、そして彼女が吐き気と呼吸障害を患っていることを根拠に、チャビは確かに妊娠していると断定した。
村の長老たちは、それを聞いて黙っていなかった。チャビを呪術医のところに無理やり連れて行った。そして呪術医は、こう言い下した。「チャビは悪魔の子供を身ごもっている」。
呪術医が御祓いをしても効果はなかった。チャビは、村から追放されてしまった。彼女は腹が膨らみすぎて歩くのもままならない状態だった。
幸い、カルカッタに住んでいる親戚がチャビに救いの手を差し伸べた。その親戚が今週、彼女をカルカッタ市内の胃腸科専門医に診せた。彼女は腹が膨らみすぎて歩くのもままならない状態だった。ヘモグロビン値が正常範囲の12〜14グラムをはるかに下回る4グラムまで低下していた。
超音波検査の結果、彼女の腹が膨らんでいる原因が判明した。妊娠ではなかった。腹腔内に巨大な腫瘍が出来ていた。その大きさたるや、胎児5体分に相当する。重さは、なんと15kgもあった。
診察に当たったアルコ・バネルジー医師は、「真相を知ったご両親は、驚きの余り呆然としていましたよ」と語っている。彼自身、こんな腫瘍の手術を行った経験は一度もないと吐露している。
さて、妊娠中の体重増加は10キロ〜14キロが妥当範囲と言われている。15キロの腫瘍が出来たチャビは、ちょっと体重オーバーの妊婦のように見えたのだろうか。外から見るだけでは、確かに紛らわしかったのかもしれない。しかし、病気のために腹が膨らんでいる可能性だって検証されてしかるべきだった。その点を差し引いて、次のように評価しておこう。
本件に関しては、むしろ、紛らわしさに惑わされて適当な診断を下した村の医者の軽率さ、何でも悪魔の仕業にしてしまう呪術医の無責任さ、それを鵜呑みにしてチャビを村八分にしてしまった村人たちの愚かさが複合した“ずさんさ”の方が気になるところである。しかし、インドの田舎の村における、この手のずさんさの基準が不明のためコメントしにくい。
われわれの常識が通用せず、想像をはるかに超えた“閉じた世界”も存在するわけである。おりしも日本では今、JR西日本の“ずさんさ”が集中砲火を浴びているが、中の人が日頃「これ以上はずさんだと感じるレベル」が外部社会におけるそれと大きくかけ離れていた可能性もあるだろう。
■ Source: Tumour is 'devil's child' (SAPA)
【関連記事】
呪術医が御祓いをしても効果はなかった。チャビは、村から追放されてしまった。彼女は腹が膨らみすぎて歩くのもままならない状態だった。
幸い、カルカッタに住んでいる親戚がチャビに救いの手を差し伸べた。その親戚が今週、彼女をカルカッタ市内の胃腸科専門医に診せた。彼女は腹が膨らみすぎて歩くのもままならない状態だった。ヘモグロビン値が正常範囲の12〜14グラムをはるかに下回る4グラムまで低下していた。
超音波検査の結果、彼女の腹が膨らんでいる原因が判明した。妊娠ではなかった。腹腔内に巨大な腫瘍が出来ていた。その大きさたるや、胎児5体分に相当する。重さは、なんと15kgもあった。
診察に当たったアルコ・バネルジー医師は、「真相を知ったご両親は、驚きの余り呆然としていましたよ」と語っている。彼自身、こんな腫瘍の手術を行った経験は一度もないと吐露している。
さて、妊娠中の体重増加は10キロ〜14キロが妥当範囲と言われている。15キロの腫瘍が出来たチャビは、ちょっと体重オーバーの妊婦のように見えたのだろうか。外から見るだけでは、確かに紛らわしかったのかもしれない。しかし、病気のために腹が膨らんでいる可能性だって検証されてしかるべきだった。その点を差し引いて、次のように評価しておこう。
| まぎらわしさ７ | ■■■■■■■□□□ |
本件に関しては、むしろ、紛らわしさに惑わされて適当な診断を下した村の医者の軽率さ、何でも悪魔の仕業にしてしまう呪術医の無責任さ、それを鵜呑みにしてチャビを村八分にしてしまった村人たちの愚かさが複合した“ずさんさ”の方が気になるところである。しかし、インドの田舎の村における、この手のずさんさの基準が不明のためコメントしにくい。
われわれの常識が通用せず、想像をはるかに超えた“閉じた世界”も存在するわけである。おりしも日本では今、JR西日本の“ずさんさ”が集中砲火を浴びているが、中の人が日頃「これ以上はずさんだと感じるレベル」が外部社会におけるそれと大きくかけ離れていた可能性もあるだろう。
■ Source: Tumour is 'devil's child' (SAPA)
【関連記事】
- 太っていたのは脂肪のせいじゃなくて25キロの腫瘍のせいでした ― これはイギリスで実際にあった話である。上の少女の腹部には15キロの腫瘍が出来ていたが、この53歳男性の腹部には25キロの腫瘍が出来ていた。
- 女子色情症扱いされた少女が市中引き回しの刑に ― これもインドの話である。被害に遭ったのも同じく17歳少女。
- 75歳女性の胎内に50歳胎児 ― ちょっとありえないような話だが。
- トラに食われる住民が後を絶たないガンジス川デルタ域の島 ― これもインド・西ベンガル州の話。彼らがたびたびトラに食われているのは、都市生活者がしばしば交通事故に遭うようなものだという。
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この記事へのコメント
1. Posted by インヤン。 2005年05月07日 02:53
私は昔、インドのど田舎に井戸掘りのNGOで行きました。掘る場所は、村に来た占い師が決めます。占い師が鶏をほうり投げて、鶏がばたばたと羽ばたいて落ちたところを中心に掘ります。・・・２回に１回は水が出るらしいです。
インドはそんなところです。１０年以上前の話ですが、インドには悠久の時が流れているので、今も変わらないでしょう。あーあ。
インドはそんなところです。１０年以上前の話ですが、インドには悠久の時が流れているので、今も変わらないでしょう。あーあ。
2. Posted by はみ 2005年05月07日 05:08
この手の思いこみや勘違いが日常茶飯事にあるなら、年間何人の人間が被害にあってるんだろう。。
3. Posted by Dすけ 2005年05月07日 10:30
何でも悪魔の仕業にしてしまう呪術医の無責任さって本当に恐い
今現在の日本ではありえないほどの出来事のように思うが、実は日本でこそありえることなんではないでしょうか
日本は閉じた世界ではないにしろ、集団の意見の重みと言うのが、他の国にくらべると強いと思う。だれがはじめたのかしらないが、みんながそうするならそうしようという簡単な他人任せ主義は日本人にこそ強く、根強く残っていくものであると私は考えます
内容も、文章も簡潔で好きです お気に入りいれまいたので、また来ます
今現在の日本ではありえないほどの出来事のように思うが、実は日本でこそありえることなんではないでしょうか
日本は閉じた世界ではないにしろ、集団の意見の重みと言うのが、他の国にくらべると強いと思う。だれがはじめたのかしらないが、みんながそうするならそうしようという簡単な他人任せ主義は日本人にこそ強く、根強く残っていくものであると私は考えます
内容も、文章も簡潔で好きです お気に入りいれまいたので、また来ます
4. Posted by カリスマネットナンパ師 2005年05月07日 13:07
昔は罪のない人がしいたげられたことがたくさんあったんでしょうねえ。。
5. Posted by 若槻千夏が大好きなマスター 2005年05月08日 03:02
人体って不思議ですね!!!!
しかしただ悪魔の子を宿したとかとんちんかんなことを言って彼女を追い払う人が信じられません
これも文化の違いなのですかね
しかしただ悪魔の子を宿したとかとんちんかんなことを言って彼女を追い払う人が信じられません
これも文化の違いなのですかね
6. Posted by miccckey 2005年05月09日 03:12
みなさん、コメントありがとうございます。
＞Dすけ さん
》日本は閉じた世界ではないにしろ、集団の意見の重みと言うのが、
》他の国にくらべると強いと思う。
おっしゃるとおりの傾向がありますね。
ただし、先進諸国の中で日本だけにそういう傾向があるとは限らないかもしれません。個人を尊重する文化であったはずの米国の今の有様なんてどうなんだろうと思います。韓国や中国なんかも・・・。
＞Dすけ さん
》日本は閉じた世界ではないにしろ、集団の意見の重みと言うのが、
》他の国にくらべると強いと思う。
おっしゃるとおりの傾向がありますね。
ただし、先進諸国の中で日本だけにそういう傾向があるとは限らないかもしれません。個人を尊重する文化であったはずの米国の今の有様なんてどうなんだろうと思います。韓国や中国なんかも・・・。
8. Posted by hyperlink 2014年05月10日 18:45
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9. Posted by click the up coming web site 2014年05月11日 11:26
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