2005年02月21日
当ブログでは、意味不明な漢字のタトゥーを2つの記事(#1&#2)で取り上げたことがある。なんのメッセージも伝わっていないどころか、逆の意味の漢字だったりする。だが、オーストラリアで救急医療に携わっている超ベテランが胸に彫ったタトゥーには断固とした拒否のメッセージが記されている。
“蘇生お断り(DO NOT RESUSCITATE)”と彫られているのだ。
ニューキャッスル地域の救急委託医をしているアルバート・カッターさんは、先日、80歳の誕生日を迎えた。自分自身へのバースデイ・プレゼント代わりにそのタトゥーを彫ったのだという。
“蘇生お断り(DO NOT RESUSCITATE)”と彫られているのだ。
ニューキャッスル地域の救急委託医をしているアルバート・カッターさんは、先日、80歳の誕生日を迎えた。自分自身へのバースデイ・プレゼント代わりにそのタトゥーを彫ったのだという。
過去何十年もの間、多数の患者に蘇生術を施してきたはずのカッター医師が自らの蘇生を拒むタトゥーを胸に彫ったのである。あまりにも意外なことのように見える。だが、彼に言わせれば、数多くの患者を蘇生してきた経験から身に染みて学んだ結論なのだという。
カッター医師はこう語っている。「今まで、数え切れないくらい多くの患者に人工蘇生を施してきました。しかし、蘇生に成功しても、その後、なんの後遺症もなく回復できた患者の割合は6パーセント以下ですよ」。
そもそも心停止(心不全)に至るのには、患者自身の体に何らかの問題(疾病や疾患)があるからだ。外的要因で心停止に至るとしたら、感電した場合くらいしか考えられない。だから、心臓が停止してしまうということは、もはや完全には回復できないことを暗示している。カッター医師はそう考えている。
また、心停止してから実際に蘇生術を受けるまでの時間差も悪要因だという。既に緊急救命室にいる患者が心停止し、すぐに除細動器をかけることができるのでもない限り、よい結果は待っていないという。
カッター医師は、もともとタトゥーを体に彫ることに抵抗がなかったわけではない。だが、自分が人工蘇生を拒否することを明確に訴えるには、胸にタトゥーを彫っておくのが最も効果的だと考えた。
「心停止や呼吸停止になったときには、当然意識がない。その場では、誰にも自分の意思を伝えることができないわけですからね」とカッター医師は言う。
さらに、こう続けている。「蘇生しないでくれと遺言状や遺書に書く人も多いようですが、実際に心停止になったときに、遺言状を確認しているヒマなんかありませんしね」。
高齢な自分が何らかの障害に陥り、意識はあっても人工蘇生拒否の意思を伝えることができなくなるのが困るのだと彼は言う。だから、その意思をタトゥーにでもして断固と表明しておくほかないのだと。
さらに彼は、こんなことまで言っている。「脳死になった場合も困りますね。私は社会のお荷物になんかなりたくない。つまり、脳が死んでいるのに体だけを生かしておくなんて、時間とお金の無駄遣いですよ」。
こんな言葉を聞かされると、“おいおい大丈夫か? 医者がそんなことを言っていいのか? ひょっとして、もうろくしているのか?”と思う人も多いだろう。
カッター医師は、1981年にアメリカ合衆国からオーストラリアに移ってきた。ロサンゼルスでの救急医療の仕事に燃え尽きてしまった。救急医であるにも関わらず、38口径をショルダー・ホルスターに忍ばせて駆けずり回る日々だった。それに嫌気がさして、銃で身を守らなくてもいいオーストラリアへの移住を決めたのだという。
修羅場をくぐれば、肝が据わるとは限らない。彼のように悲観主義者になってしまうこともあるのだろう。彼は「まあ、私が心停止で運び込まれたとき、医療スタッフが私の服を脱がさずに人工蘇生を開始した場合は、私が蘇生を拒否していることは伝わらないでしょうけどね」と自らを皮肉ってもいるが。
さて、救急医療に携わる超ベテランがこんなふうに考えてしまっているのは、とても意外なことに思えそうだが、ほかの業種でも現状を知れば知るほど限界が見えてくるということはありがちである。筆者にしても、翻訳という自分の仕事の限界が見えすぎて、翻訳家志望の人に夢を与えるようなことなんて口が裂けても言えない気がしているくらいである。
よって、本件の意外性は少し低めに評価しておこう。
自らの胸に“蘇生お断り”のタトゥーを入れた医師が患者の胸に除細動器を当てる。もちろん彼が上半身裸で処置に当たりでもしない限りタトゥーは見えないし、そもそも患者は心停止しているのでタトゥーを見ることもない。
■ Source: NEWS.com.au | Doctor's new tat: 'Do not resuscitate'
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カッター医師はこう語っている。「今まで、数え切れないくらい多くの患者に人工蘇生を施してきました。しかし、蘇生に成功しても、その後、なんの後遺症もなく回復できた患者の割合は6パーセント以下ですよ」。
そもそも心停止(心不全)に至るのには、患者自身の体に何らかの問題(疾病や疾患)があるからだ。外的要因で心停止に至るとしたら、感電した場合くらいしか考えられない。だから、心臓が停止してしまうということは、もはや完全には回復できないことを暗示している。カッター医師はそう考えている。
また、心停止してから実際に蘇生術を受けるまでの時間差も悪要因だという。既に緊急救命室にいる患者が心停止し、すぐに除細動器をかけることができるのでもない限り、よい結果は待っていないという。
カッター医師は、もともとタトゥーを体に彫ることに抵抗がなかったわけではない。だが、自分が人工蘇生を拒否することを明確に訴えるには、胸にタトゥーを彫っておくのが最も効果的だと考えた。
「心停止や呼吸停止になったときには、当然意識がない。その場では、誰にも自分の意思を伝えることができないわけですからね」とカッター医師は言う。
さらに、こう続けている。「蘇生しないでくれと遺言状や遺書に書く人も多いようですが、実際に心停止になったときに、遺言状を確認しているヒマなんかありませんしね」。
高齢な自分が何らかの障害に陥り、意識はあっても人工蘇生拒否の意思を伝えることができなくなるのが困るのだと彼は言う。だから、その意思をタトゥーにでもして断固と表明しておくほかないのだと。
さらに彼は、こんなことまで言っている。「脳死になった場合も困りますね。私は社会のお荷物になんかなりたくない。つまり、脳が死んでいるのに体だけを生かしておくなんて、時間とお金の無駄遣いですよ」。
こんな言葉を聞かされると、“おいおい大丈夫か? 医者がそんなことを言っていいのか? ひょっとして、もうろくしているのか?”と思う人も多いだろう。
カッター医師は、1981年にアメリカ合衆国からオーストラリアに移ってきた。ロサンゼルスでの救急医療の仕事に燃え尽きてしまった。救急医であるにも関わらず、38口径をショルダー・ホルスターに忍ばせて駆けずり回る日々だった。それに嫌気がさして、銃で身を守らなくてもいいオーストラリアへの移住を決めたのだという。
修羅場をくぐれば、肝が据わるとは限らない。彼のように悲観主義者になってしまうこともあるのだろう。彼は「まあ、私が心停止で運び込まれたとき、医療スタッフが私の服を脱がさずに人工蘇生を開始した場合は、私が蘇生を拒否していることは伝わらないでしょうけどね」と自らを皮肉ってもいるが。
さて、救急医療に携わる超ベテランがこんなふうに考えてしまっているのは、とても意外なことに思えそうだが、ほかの業種でも現状を知れば知るほど限界が見えてくるということはありがちである。筆者にしても、翻訳という自分の仕事の限界が見えすぎて、翻訳家志望の人に夢を与えるようなことなんて口が裂けても言えない気がしているくらいである。
よって、本件の意外性は少し低めに評価しておこう。
意外性3 | ■■■□□□□□□□ |
自らの胸に“蘇生お断り”のタトゥーを入れた医師が患者の胸に除細動器を当てる。もちろん彼が上半身裸で処置に当たりでもしない限りタトゥーは見えないし、そもそも患者は心停止しているのでタトゥーを見ることもない。
■ Source: NEWS.com.au | Doctor's new tat: 'Do not resuscitate'
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しかし患者はすでに脳死しており、機械によってかろうじて生かされてはいるが植物状態で回復する見込みはない。
プラッ....
この記事へのコメント
1. Posted by 玲子 2005年02月22日 17:52
私の両親も、人工蘇生して寝たきりで生きるくらいなら
そんな処置するなよ、とよく話しています。
そんな時は
「お兄ちゃんとなんとか世話するし、生きれるとこまで生きれば?」とか
「今までさんざん親に迷惑かけてきたし、それくらいはするよー?」
などと、なるたけ安心してもらうよう、受け答えしてますけど。
今回はより人事じゃない記事でした。
私だったら、死を選びたいかな・・・? 私、独身だし(笑)
そんな処置するなよ、とよく話しています。
そんな時は
「お兄ちゃんとなんとか世話するし、生きれるとこまで生きれば?」とか
「今までさんざん親に迷惑かけてきたし、それくらいはするよー?」
などと、なるたけ安心してもらうよう、受け答えしてますけど。
今回はより人事じゃない記事でした。
私だったら、死を選びたいかな・・・? 私、独身だし(笑)
2. Posted by thorn_rose 2005年02月22日 20:11
(^_^)/ thorn_roseです。
久々のコメント‥ こんなジャンルはつい‥ してしまいます(^^;;;
私も常々、
・蘇生は無し。
・臓器や角膜など、使える部分は全て提供。
・本当は土に返りたいので、土葬が認められれば、即、それ。
・火葬なら、海に撒いて欲しい。
そんなことを何かにつけて言っていますが‥
この方法は、ホント、有効ですネ〜
私の場合、4点のうち、上から二つは‥ タトゥーした方がよさそうです。
ただ‥
やっぱり、美しく彫りたい‥(^^;;;
世界共通のステキなマークみたいになれば‥ なんて考えてしまいました(^^;;;
でもそうなると‥ 何もタトゥーじゃなくても、
決まったデザインのピアスのようなものでも意思表示が可能かも?
ただ‥ そうなると今度は‥
誰にでもわかるものだと‥ 臓器を狙うヒミツ組織に狙われかねないのかナ‥
「アイツなら即、臓器取り出し可能‥」ってことで‥
最小で確実なダメージで‥ 拒否反応の一番出ない人の身体‥ 高額取引‥
ブンブン(>_< )( >_<)ブンブン
そう考えると‥
やっぱり、『DO NOT RESUSCITATE』だけ、脱がないと見えない部分に彫った方がいいのかもしれません。
結局、ここに落ち着くのかも‥(^^;;;
せめて‥
『DNR』((^^;;;ありがちな頭文字)をカッコよくデザインしたものが一般医療現場で知られるようになると‥
結構、受容はあるような気がします。
本人がいくらその気でも、遺族の側ではどうしても躊躇しがちですし、
たとえ一番近い連れ合い?の一方が理解していたとしても‥
極端な話、昔ながらの考え方のお姑さんから『鬼嫁』などと罵られるようなゴタゴタも避けられますしネ‥
でも、これは‥
何度もチャリで事故に遭遇しているというmiccckeyさんに‥
一番関係がありそうです。。。コソコソ(・.|
m(_ _)m
久々のコメント‥ こんなジャンルはつい‥ してしまいます(^^;;;
私も常々、
・蘇生は無し。
・臓器や角膜など、使える部分は全て提供。
・本当は土に返りたいので、土葬が認められれば、即、それ。
・火葬なら、海に撒いて欲しい。
そんなことを何かにつけて言っていますが‥
この方法は、ホント、有効ですネ〜
私の場合、4点のうち、上から二つは‥ タトゥーした方がよさそうです。
ただ‥
やっぱり、美しく彫りたい‥(^^;;;
世界共通のステキなマークみたいになれば‥ なんて考えてしまいました(^^;;;
でもそうなると‥ 何もタトゥーじゃなくても、
決まったデザインのピアスのようなものでも意思表示が可能かも?
ただ‥ そうなると今度は‥
誰にでもわかるものだと‥ 臓器を狙うヒミツ組織に狙われかねないのかナ‥
「アイツなら即、臓器取り出し可能‥」ってことで‥
最小で確実なダメージで‥ 拒否反応の一番出ない人の身体‥ 高額取引‥
ブンブン(>_< )( >_<)ブンブン
そう考えると‥
やっぱり、『DO NOT RESUSCITATE』だけ、脱がないと見えない部分に彫った方がいいのかもしれません。
結局、ここに落ち着くのかも‥(^^;;;
せめて‥
『DNR』((^^;;;ありがちな頭文字)をカッコよくデザインしたものが一般医療現場で知られるようになると‥
結構、受容はあるような気がします。
本人がいくらその気でも、遺族の側ではどうしても躊躇しがちですし、
たとえ一番近い連れ合い?の一方が理解していたとしても‥
極端な話、昔ながらの考え方のお姑さんから『鬼嫁』などと罵られるようなゴタゴタも避けられますしネ‥
でも、これは‥
何度もチャリで事故に遭遇しているというmiccckeyさんに‥
一番関係がありそうです。。。コソコソ(・.|
m(_ _)m
3. Posted by miccckey 2005年02月23日 02:39
>玲子さん
カッター医師に近い意見をお持ちなんですね。
私の場合は、6パーセント未満でも可能性があるなら、蘇生してほしいですね。それと、もしからしたら臨死体験できるかもしれないし(^_^;)。
まあ、それは私が基本的にギャンブラー気質だからなんでしょうね。この博打、負けたときが確かに不本意すぎますね。
堅実派は死を選ぶのかも・・・なーんてことはないかもしれないけど。
> thorn_rose さん
カッター医師も言っていることですが、胸にタトゥーだと、処置の前に服を脱がしてくれることに依存してしまいますよね。かといって、額にそんなメッセージをタトゥーするわけにもいかないし(笑)
どこに彫るかが問題ですよね。タトゥーの代わりに、ドナーカードみたいなものには出来ませんよね。なんせ、拒否の意志を瞬時にわかってもらわないといけないわけで。
》何度もチャリで事故に遭遇しているというmiccckeyさんに‥
もう大丈夫です。燃費4キロ/ℓ未満という車で行動するようになりましたので、むしろお金の心配はしますが(笑)
カッター医師に近い意見をお持ちなんですね。
私の場合は、6パーセント未満でも可能性があるなら、蘇生してほしいですね。それと、もしからしたら臨死体験できるかもしれないし(^_^;)。
まあ、それは私が基本的にギャンブラー気質だからなんでしょうね。この博打、負けたときが確かに不本意すぎますね。
堅実派は死を選ぶのかも・・・なーんてことはないかもしれないけど。
> thorn_rose さん
カッター医師も言っていることですが、胸にタトゥーだと、処置の前に服を脱がしてくれることに依存してしまいますよね。かといって、額にそんなメッセージをタトゥーするわけにもいかないし(笑)
どこに彫るかが問題ですよね。タトゥーの代わりに、ドナーカードみたいなものには出来ませんよね。なんせ、拒否の意志を瞬時にわかってもらわないといけないわけで。
》何度もチャリで事故に遭遇しているというmiccckeyさんに‥
もう大丈夫です。燃費4キロ/ℓ未満という車で行動するようになりましたので、むしろお金の心配はしますが(笑)
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