なんでも評点:2058年からやってきた時給5万円の人力会計士 《厄災パラレルワールド》

2022年02月21日

2058年からやってきた時給5万円の人力会計士 《厄災パラレルワールド》


2058年からやってきた時給5万円の人力会計士 《厄災パラレルワールド》

彼の名は、デロ東松。東松は最初1985年から2021年にタイムトラベルをした。新型インフルが大流行。これが最初に東松がいた世界線に定められた運命だったようだ。時間旅行初心者だったころ、東松は「世界線」の概念を知らなかった。少し違う世界線だと、新型インフルの代わりに“低毒性エボラ”や“新型風邪”が流行っていたりする。インフルではなく、“新型インフエンザ”が流行している世界線もある。そういえば「コロナ」という自動車が流行し過ぎて、各地で人身事故を多発させた世界線もある。

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東松は2021年に会計事務所で勤務した後、2058年にタイムスリップして、コンピュータやAIの使用が禁止された世界線で人力会計業務に忙殺された。コンピュータやAIが生体-電脳感染ウイルス・バグファージを大量発生させ、軽微なバグであろうと、あらゆるバグが含まれているハードウェアを完全に破壊させたからである。ここで言う「ハードウェア」には、人類の平均寿命を三百歳まで延長した各種のインテリジェント人工臓器が含まれる。このウイルスは、AI内臓のチップを生体に埋め込むことが普及してから増殖した。神を冒涜する行為は、往々にしてこの種の悲劇を招く。

東松が2058年で手作業に明け暮れると、たった1年の間に東松個人の生体時間は10年経っていた。2058年で10年分老けた東松は、別の世界線上の2021年に戻った。そこは、「コロナウイルス」が流行している世界線であった。東松 が2058年で10年も老けることによって身に付けた人力会計計算術を伝授することになった。1年で10年老けるのは、生産性が10分の1であることを意味する。

まさか、自分は1970年代生まれと信じていた東松が親殺しのパラドックスを実行してしまうとは彼自身にも予想できなかった。東松の実の父は、2021年の日本でコロナ禍に喘ぐ自営業者だったのだ。東松は、2020年代に生まれた後、1970年代にタイムスリップしてしまった“神隠されっ子”だった。東松は、収入を減らした自営業者への給付金支給業務を請け負った会計会社に時給5万円で雇われたのだ。

抽象企業庁の管理体制が一新されたことが大きく影響している。それまでに不正に給付を得た自営業者が多かったことから、抽象企業庁では不正防止の取り組みを強化したのだ。東松が2058年の世界から招かれたのは、そのためである。未来人を呼べるなんてこと善良な市民は何も知らないが、政府の要職に就いている者には公然の秘密だった。

時給制は、仕事が早いかどうかではなく、正確かどうかを重視している。東松は勝手にそう信じていた。だから、どんな軽微なミスも見逃さない厳密さで業務を進めた。時給5万円の仕事に通常の10倍の時間をかける。つまり、東松の時給は50万円である。しかし、支給までの時間がかかると、餓死する貧者が後を絶たなかった。東松の父も、その一人である。親殺しのパラドックスの達成である。

しかし、東松の父もまた、餓死したのにコロナウイルスに感染していたとの「見なし診断」を受け、コロナ死者の一人とカウントされたのである。善良な市民は、肝心なことを何も知らされずに死んでいく。嗚呼ディストピア。なお、東松は「親殺しのパラドックス」を達成してしまった瞬間、ぷすぷすと悲しい音を立てて消滅した。


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