なんでも評点:夢島 ― 東京湾に出現した桜島

2022年02月18日

夢島 ― 東京湾に出現した桜島


当ブログは、海外珍ニュースで名が売れた時期があるので、ずっとそれにこだわってきたが、10数年前に大手メディアが海外珍ニュースに力を入れるようになっから、まったく歯が立たなくなった。最近は、災害系にシフトしてきたが、今や検索エンジンからしか人が来ない(今でも必ずリンクを貼ってくれる女神のような超有名サイトが1つだけあるが)。アクセス数は300ないしは800分の1まで減った。この10年ほど、まったくお金を稼げていない。

アクセスが減る前、Google Adsenseに対して私が変更した設定はすぐに更新されていた。1日のアクセス数が今の1年分くらいあったからだと最近になってようやく気付いた。

また、コメント数が夥しく多い記事がよくあった。悪意を持って荒らされていると感じたこともたびたび。中国関係の記事には、アンチ中国のコメントが連なり、中国か、親中派に睨まれ、出版した本の版元に圧力がかかって、普通に売れていた本が廃版になり、編集者が首になる事態を招いた。今思えば、それもアクセス数の「賜物」であった。

もう好き勝手するか。と思い、小説みたいなものを断片的に公開したこともあるが、何かに応募することを目的としていたりして既製の体裁にとらわれてきた。もっと好き勝手しよう。

これから《厄災パラレルワールド》と題するコンテンツをぼちぼち追加しようと思う。基本的にはSFショートショートなのだが、体裁は考えない。賞に応募するとかは何も考えない。「厄災」と言っても災害とは限らない。個人が直面する厄災もある。

そんなにアクセスを呼べるものではないと思う。だが、世界珍ニュースを伝えていたころの経験と、SFまがいのものを書いて発表の場もなかった知識の「燃えカス」を焼きイモの最後の火にくべるような無駄な抵抗をもう少し続けてみる。

「パラレルワールド」と題するのは、ツキに見放された人間って、たいてい自分が並行宇宙に彷徨いこんだせいだと思い込むものだからだ。大きく違っていれば、人は諦めて受け入れる。微妙にずれた世界に来てしまったからこそ、微妙にうまくい行かず、ツキに見放されたと感じている。そういうものだ。

というわけで、一遍目がこれ。東京湾が鹿児島湾に似ているというネットの最新の話題にインスパイアされた。文学や小説のように人を描く気は端からない。描くのは、あくまでパラレルワールドに起きたと筆者がでっち上げる事象。

東京湾鹿児島湾

夢島

東京湾に火山「夢島」が生まれて早四半世紀。その噴火量は、かつての桜島と変わらない。夢島(むとう)が生まれたのは2025年のことだった。その年は、大阪万博が開催される予定だった夢洲(ゆめしま)が鬱陵島カルデラ噴火の火山灰で埋没した年でもあった。

竹島の西に眠る「死火山」と信じられていた時期もある鬱陵島は、韓国が日本に抱き続けた恨(はん)の化身として、西に隣接する朝鮮半島には害をあまり及ぼさず、東南東に位置する日本列島を火山灰で葬った。まあ、しかし、火山灰に麻痺させられた列島を多くの半島民が「祝福」して恨を晴らした朝鮮半島は、快哉を叫んだ翌年、北朝鮮に存在したあの美しい天池(ティエンチ)が将軍様の生まれ故郷の火山活動により爆発してあっけなく壊滅したのだが。

鬱陵島と白頭山の噴火は破局噴火に近く、地球規模の環境変化をもたらし、21世紀初頭からすでに始まっていた大量絶滅を加速させた。絶滅した生物種のうち、人類との縁が最も深かった1つがゴキブリである。ゴキブリは年間平均気温が下がると棲息できない。意外や、おそるべき生命力を持ちながら、寒冷化に最も脆弱な生き物がゴキブリだった。ゴキブリがかつての温帯地方から絶滅してしまったのだ。

極東の火山の準破局噴火が葬り去ったもう1つの伝説(イニシアチブ)は「地球温暖化」である。しかし、日光の少なさから色素を失った欧州の人たちは、氷河期に遡ればトラウマの根が深い「寒冷化」への恐れを忘れ去っていたのだろうか。欧州に火山灰が届くには地球を東向きに半周以上しなければならない遠方にある極東の火山が、今や冬場には欧州をまごうことなき北極圏の一部として冷凍するほどにまで、欧州を寒冷化してしまった。

さて、2050年のある日、もはや春か夏かも判別できないほど地下の天然ガス田からメタンガスが供給され続けて、寒冷化と温暖化が相殺しあっている路地裏で、寒冷の相殺による冷たいともぬるいとも知れぬ雨にさらされながら、生き残った火山島民の少女が度重なる富士・箱根噴火と震災に耐えてぼろぼろになった家屋の屋根が重なり合い視界を阻む富士遠景に背を向けて、瓦礫の山に立ち、東京湾を眺めていた。落陽にも背を向けた彼女の瞳は、つぶらな二眼でありながらフォーカス性能が鋭敏な一眼レンズのように夢島から立ち上る噴煙を捕らえていた。

少女の名はリンドウ。リンドウは東京湾の瓦礫にわずかに棲息するゴキブリを探していた。ある日、日本を占領した新紅衛兵のおねえさんがリンドウに虫かごを見せて言った。「少女、この虫を見たことあるか? 日本に生き残っているこの虫は、高値が付くある。捕まえたら、一匹、一元で買うあるね」

今や一元の価値は、二百円にも相当する。日本は敗戦国から経済大国に成り上がったが、中国に追い抜かれ、災害には惨めに敗北し続けた。その結果が、一匹二百円で不潔な虫を漁る少女の赤貧が夕日に染まる東京湾岸の「殺風景」。中国では、漢方薬の材料として日本産ゴキブリに需要があるが、食材としても需要があり、近年ではペットとしても人気が出ているという。食材をあえて食べずにペットにするというスノビズム。小日本蟑螂として哀れを誘うものほど、高値が付くともいう。

東京は、春と夏をほぼ失ったし、花火という無駄にだれも見向かなくなった。25年前に、大阪で上がるはずだった花火の代わりに、日本領のはずなのに韓国に「実効支配」されていた竹島近くで300キロのマグマ溜まりが確認されていた鬱陵島から、あまりにも大きな花火が上がった。偏西風のため、その火山灰の大半は日本列島に飛来し、歴史も伝統も、日本国が世界に誇った技術力も工業力も何もかもを埋め尽くした。

鹿児島湾との類似性が囁かれていた東京湾に桜島のクローンのような夢島が出現したのも、そのときのことである。夢島(むとう)の出現位置は、埋め立て島として悪名を馳せたが、後に関東直下地震で液状化して東京湾の(ダイオキシンなどで汚染された)藻屑となった「夢の島」の旧所在地にかなり近かった。火山灰に埋もれた海岸地帯から火山が出現する様子は、汚染物と噴出物の境も定かではなく、汚染物を含めた人工物が自然のサイクルの中に呑み込まれる壮絶さをただ冷淡に示していた。


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