2014年03月07日

真の意味でのコミュニケーション能力欠如とは?


情報伝達と意思疎通

「空気が読めない(KY)」と同じくらいよく聞かれるのが「コミュニケーション能力がない」という表現。そう自覚して人付き合いに苦手意識を持っている人も少なくないようだ。「コミュニケーション」という言葉には、情報伝達と意思疎通の2つの意味がある。実際のところ、たとえば自らをオタクと分類している人が「コミュニケーション能力がない」と自覚している場合は、「情報伝達」には長けているのに「意思疎通」が苦手だということになる。

「情報伝達」は、明示的な言葉によるコミュニケーションがメインである。一方、「意思疎通」には、相手の言外に込められた感情や含みなどを暗黙裏に汲み取る能力が要求される。母国語が異なる同士でも意思疎通が可能なことがある。言葉が通じなくても物々交換なら十分可能だったからこそ、古くから異民族間での交易が行われてきた。現代においても、互いに言葉の通じない男女が恋に落ちることなど珍しくない。

現代文明の原動力になっているのはまさしく「情報伝達」。人類全体の情報伝達能力はITの登場により飛躍的に向上した。しかし、「情報伝達」のキャパが増えても、「意思疎通」が促進されるわけではない。むしろ、「明示的な情報伝達」に「暗黙的な意思疎通」が追いつかない状況。それゆえ、情報伝達能力や情報収集能力に優れていても「コミュニケーション能力がない」と自覚する人が増えてきているのではないか。

"モーグリ症候群"



ごくまれに人里離れたジャングルの中などで、動物に育てられた人間の子供が見つかることがある。彼らは育ての親や一緒に育った兄弟たちとなら意思疎通ができるのだが、人間とは意思疎通ができない(犬科や霊長類の動物が育ての親となるのが普通だが、後述するように鳥類が事実上の育ての親になったケースもある)。真の意味で「コミュニケーション能力がない」子供なのだ。

文明社会に連れ戻されると、"モーグリ症候群"という診断が下される。これは、ジャングルブックの主人公モーグリのように動物に育てられたため、人間の言語、意思疎通の方法、行動様式を習得できていないことを意味する。最近、"モーグリ症候群"の子供がロシアで見つかることが多い。しかも「人里離れた場所で見つかる」という従来の常識を打ち破り、堂々たる"町中"で見つかったという事例が2000年代後半にで何件か報告された。

町中で野良犬に育てられた男の子

2006年の2月のこと、ロシア南部のスタブロポリ地方の町中で犬に育てられた4歳の男児が発見された。後述する理由により既に身元が判明しており、アーサー・ズベレフという名前。アーサーちゃんは、最初、四つんばいの姿勢で水溜りから水を飲んでいるところを目撃された。民生委員たちが目撃現場周辺を捜索し、アーサーちゃんを発見した。

発見時、アーサーちゃんは、ゴミ捨て場近くに作った隠れ場所で、野良犬たちと寄り添うように眠っていた。だが、民生委員たちが近づくと、犬のように吼え両手両足で地面を蹴って、すばしっこく逃げ去ってしまう。アーサーちゃんを保護するまでに、結局、3週間もかかってしまった。

保護されたとき、頭からかぶって着るタイプの服を1枚身に着けているだけだった。だが体重は4歳児の標準レベル。野良犬たちの助けを借りて、十分な量の食料にありつけていたのだろう。アーサーちゃんは、同じ町で路上生活を営んでいるビクトリア・ズベレフというホームレス女性(45歳)の息子。しかし、酒びたりの母ビクトリアは育児を放棄した。そして、いつの間にか野良犬たちが面倒を見るようになったらしい。

家の中で飼い犬に育てられた女の子

2009年の2月にも、同じくロシアのウファという都市で、アーサーちゃんと同じように犬に育てられた3歳の女児が発見された。彼女の名はマディナ。アーサちゃんの場合とは異なり、育ての親は野良犬ではなく飼い犬である。しかも、見つかったのはなんと家の中。

アンナという名の女の家に足を踏み入れた民生委員たちは、飼い犬たちに混じって四つん這いで骨をかじっている女の子の姿を見て愕然とした。ロシア中央部のウファは2月の気温が氷点下20度近くまで下がる厳寒の地。なのに、マディナちゃんは裸のまま犬たちと寄り添っているではないか。

近づくと、犬のようなうなり声を上げて威嚇する。直立歩行はできず、常に四つん這いで歩く。人間の言葉はほとんど理解できない。かろうじて「ダー(はい)」と「ニエット(いいえ)」の2つの言葉を言えるが、人が近づくと攻撃的な態度を取り、まともなコミュニケーションができない。

ロシアの都市部にはアルコール依存症の人が多い。マディナちゃんの実の母アンナ(23歳)も酒浸りの毎日を送っていた。マディナちゃんが生まれてまもなく夫が家を出たことが、その引き金だったという。

アンナ自身はテーブルで食事をとるが、娘には人間の食事を与えたことがない。マディナちゃんは、床の上で犬たちと一緒に"エサ"を食べていた。アンナは何日も家を空けることがよくあった。かと思うと、酒飲み仲間を家に連れてきてドンチャン騒ぎ。だが、仲間たちの前でマディナちゃんの存在を完全に無視していた。

「マディナちゃんは天使のように可愛らしい女の子です。でも、母親に完全にネグレクトされていました。彼女に愛情を注いで面倒を見てくれたのは犬たちだけです」と民生委員の1人は話している。また、地元紙によれば、母親が怒り出すと、マディナちゃんが外に逃げ出すことがあったが、近所の子供たちが彼女と遊ぼうとすることはなかったという。そりゃ、言葉もしゃべれず裸で四つん這いになって走り回るマディナちゃんは、他の子供たちにとって不気味この上ない存在だったはず。

言葉を理解せず、鳥のようにさえずり鳥のように羽ばたく"鳥少年"

2008年の2月には、同じくロシアのボルゴグラードで7歳の"鳥少年"が発見されている。"鳥少年"はマディナちゃんと同様に母親(31歳)と同じ屋根の下で暮らしていたが、母親は決して自分の息子に話しかけようとしなかった。彼女は無類の鳥好きらしく、たった2部屋しかないアパートの中に数え切れないほどの鳥篭が置かれていた。無数の鳥が餌をついばみ糞を落としながら、さえずっていた。ベランダでは野鳥にも餌を与えていた。

母親が暴力をふるった形跡はなく、食べ物もちゃんと与えていた。だが決して息子に人間の言葉で話しかけず、外で近所の子供たちと接触させることもなかった。こうして7歳まで鳥小屋同然のアパートの中で外界と接触を絶たれて育ってきた少年は、人間の言葉をまったく理解できない。その代わり、鳥たちとのコミュニケーションは得意のようだ。

「話しかけても、鳥のようにさえずるだけです」と地元の民生委員は言う。ただし、少年にとって、そのさえずりは何らかの意味を持つコミュニケーション手段となっているらしい。自分のさえずりが相手に理解されないことがわかると、鳥が羽ばたくように手を振り始める。

"鳥少年"は母親から引き離され、児童養護施設に収容された。この7歳の少年にも、やはり"モーグリ症候群"という診断が下されている。母親は、結果的に"モーグリ症候群患者"を人工的に作り出すプロジェクトを成功させたのと同じである(母親にそういう意図があったとは思えないが)。それとも、この母親にとって、息子は飼い鳥のうちの一羽に過ぎなかったのだろうか。飼い鳥に人間の言葉で話しかける癖のある人もいる。もしこの母親にも同じ癖があったなら、少年はかろうじて人間の言葉を覚えていたかもしれない。

ご注意: 本稿は2009年に休刊になったコンピュータ誌Windows Server Worldに私が連載していたコラム“コンピュータと人間のあいまいなカンケイ”の記事を若干修正して転載したものです。





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1. Posted by 俺   2014年03月07日 21:22
滅びろロシア!!!
2. Posted by 君   2014年03月08日 01:49
なんかブラックジャックみたい
3. Posted by check these guys out   2014年04月26日 02:40
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