2009年12月07日

南アでワールドカップは本当に大丈夫? ― 凶悪犯罪、外国人嫌悪、貧弱な交通インフラ、電力不足、医療不備、etc.


南アは、毎年1万8千件、毎日50件の殺人事件が発生している凶悪犯罪発生率世界第1位の国である。性犯罪の発生率が異常に高いことでも知られ、警察に通報があったものだけで毎年5万件以上のレイプ事件が発生している。
南アフリカ共和国での2010 FIFAワールドカップ開催が決定されたのは、2004年5月15日のこと。筆者は奇しくもその数日後に当ブログを立ち上げて以来、南アで起きた怪事件や珍事件を取り上げるたびに、彼の地(かのち)でワールドカップを開催することの危険性に言及してきた。

しかし、予定どおり来年6月11日から7月11日にかけて南アでワールドカップが開催されることはもう確実である。ストライキが発生して建設工事の進行が危ぶまれた時期もあったが、10箇所の新スタジアムの建設はその後順調に進み、いずれも年末までに竣工する見込みだという。

筆者はアパルトヘイト(人種隔離政策)撤廃前の南アに2年間ほど生活の拠点を置いていたことがある。ヨハネスブルグの中心街近くの高層マンションに部屋を借りていた。その当時、日本人は名誉白人という扱いであり、私が暮らしていたのも白人専用の高級マンションだった。

あの当時も治安の悪さは相当なものだった。凶悪事件も多く、目の前で強盗に刺されて血を流している人を目撃したこともあれば、私自身がのど元に蛮刀を突きつけられて金品を奪われたこともあり、警官に撃たれた直後の強盗犯の首から大量に血が噴き出している光景を目撃したこともある。夜の町を出歩けば、ネズミ花火みたいに足元を流れ弾がかすめていくこともよくあった。

そういった個人単位での凶悪事件とは別に、あの当時は爆破テロが頻繁に発生していた。治安維持のため、ヨハネスブルグ中心街の要所要所には自動小銃を携えた兵士たちが配備されていた。

アパルトヘイト撤廃後は一度も彼の地に足を踏み入れたことがないのだが、昨年あたりまでは「本当に南アでワールドカップ開催できるの?」と人に聞かれることが多かった。しかし、最近では「南アでワールドカップ開催して何事も起きずにすむわけないですよね」みたいなことを聞かれる方が多い。

南アでのワールドカップ開催に当たっての課題点をリストアップした記事(“SA's World Cup challenges”)が11月30日付けでReutersからリリースされていた(日本語化された形跡はなさそう)。その記事では、課題点を「治安(Security)」、「輸送(Transport)」、「宿泊設備(Accommodation)」、「経済(Economy)」の4つのカテゴリに分類している。まずこれらの4つのカテゴリを下敷きにして現時点でわかっている情報と筆者の分析を述べてみようと思う。ただし、筆者の分析では、この4つのほかに「気候」と「医療」というカテゴリにも重大なリスクが潜在していると思われるので、それらについても後述する。

治安:フーリガンより厄介で恐ろしい人たちが国内に大勢いるのでは?

「治安(Security)」に関しては、冒頭で述べたようにずば抜けて高い凶悪犯罪発生率が最大の懸念となる。Reutersの記事によれば、5万人規模の警官がワールドカップ開催時の治安維持部隊として動員されることになっている。さらに、フランス憲兵隊の訓練を受けた警官たちがフーリガン対策に当たるという。南ア自体にはフーリガンに類する暴力的サッカーファンは少ないとされる。ゆえに欧州などからのフーリガンへの対策の術を学ぶべく、フランス憲兵隊の訓練を受けた警官たちが配備されるのである。

しかし、その凶悪犯罪発生率の高さが如実に示しているように、フーリガンよりもっと恐ろしい人たちを国内に大量に抱えているのが南アではなかろうか。近年の南アで起きている凶悪犯罪の多くは個人単位の犯行だが、暴動や私刑なども決して珍しくはなく、最近では外国人が被害に遭う“Xenophobia”殺人が頻繁に発生している。

“Xenophobia”とは「外国人嫌悪」を意味する。南アでは、特に、黒人が他国から来た黒人を憎悪する傾向がある。彼の地では、モザンビークなど近隣諸国からの出稼ぎ労働者が増えている。自分たちより安い賃金で働き仕事を奪う出稼ぎ労働者を憎み、私刑を加える事件が頻発しているのだ。

日本人がワールドカップ観戦に訪れた場合には“Xenophobia”の対象になりにくいはずだが、ブラジル語を話す黒人のサッカーファンは(ポルトガル語が公用語の)モザンビーク出身者と間違われて何らかの被害に遭う可能性がある。英語を話す黒人のサッカーファンも、ケニアやタンザニアの出身者と間違われるかもしれない。

そして日本人サッカーファンが最も注意しなければならないのは、強盗被害のほか、性犯罪の被害に遭うことだろう。筆者に言わせてもらえれば、女性がサッカー観戦のために彼の地を訪れるのはあまりにも危険である。もしどうしても行くというなら、単独行動は絶対に避けること。夜間にバーなどで酩酊してしまうのはもってのほかである()。

それどころか男性ですら性犯罪の被害に遭う危険性が他のどの国よりも高いと思われる。女性たちが男性に薬物を飲ませて“レイプ”するという事件さえ起きている()。まあ、それは非常に珍しいケースとしても、男性が男性に犯されるケース(例1例2)などいくらでもある。

輸送:貧弱なインフラ

今年の6月にコンフェデ杯が南アで開催されたとき、Fifaが交通インフラの不備を指摘している。南アは特に鉄道網が未発達なのだ。ワールドカップ観戦者の輸送には、主に大型バスが使われることになる。

しかし、南アは凶悪犯罪の発生率もさることながら、交通事故の発生率もかなり高い。優秀な運転手をワールドカップ開催に合わせて大量に確保できるとは考えにくい。未熟な運転手が大事故を引き起こすおそれを払拭できない。

日本は、たとえば6月14日にブルームフォンテーンでカメルーンと戦う日程が組まれている。ブルームフォンテーンはヨハネスブルグの南西300キロほどに位置するが、ヨハネスブルグから鉄道で移動することはできない。おそらくバスか飛行機での移動となるだろう。

:ちなみにカメルーン戦が行われるブルームフォンテーンもまた治安の良い都市などではなく、児童売春シンジケートの最大拠点の1つとして知られている(詳細)。


ヨハネスブルグを宿泊拠点にする場合は、300キロもの距離をバスで移動する必要があるわけだ。筆者が現地にいたころは自分で車を運転して1日1000キロくらい移動することなどざらにあったが、ワールドカップ開催ともなれば普段はがら空きのハイウェイが大混雑することも考えられる。

犯罪の被害に遭うことが何より心配なのは言うまでもないが、交通網の不備によりどこかで立ち往生して試合を観戦できなくなったり、交通事故に巻き込まれるリスクも無視できないレベルにあると思われる。

宿泊設備

南アでのワールドカップ観戦に海外から訪れるファンの数は45万人に上ると予想されている。そして、現時点で、ホテルの収容キャパには4万6千室の不足があると見られている。

宿泊設備に不足があることから、インチキ業者が横行することも十分に考えられる。たとえば、意図的にダブルブッキングして同室させたり、本来宿泊施設ではないところに宿泊させるなどである。宿泊先にインチキや不備があるとなると、これまた強盗や窃盗などの犯罪の呼び水になるだろう。

電力

Reutersの記事には「経済(Economy)」というカテゴリがあるが、実際に一番の懸念があるのは、電力供給である。これが意外な落とし穴になる可能性もある。

というのも、スタジアムの建設やインフラの整備などに注力されてきたものの、発電設備の容量には疑問符が付くらしいのだ。ワールドカップ開催中に大規模な停電が発生する可能性がある。スタジアムには予備発電装置があるので心配ないというが、都市部の電力が不足しかねない。

仮に都市部で大規模停電が起きると、どんな恐ろしい結末が待ち構えているか。

気候

欧米のサッカーファンの場合は、ホテル代を節約するために屋外にキャンプすることも考えるようだが、6月7月の南アは冬である(そもそも治安の悪いところでキャンプすること自体が無謀なわけだが)。

6月は日本の12月、7月は日本の1月に相当すると考えればわかりやすい。試合の多くは、ガウテング(ハウテン)と呼ばれる内陸高地で行われる(ガウテング州にはヨハネスブルグやプレトリアが含まれる)。その標高は1000メートル以上に達する。南アはアフリカなので暖かいと勘違いしてはならない。

ガウテング一帯では冬場に降雪が見られ、凍死する者もいる。実際、筆者もヨハネスブルグで氷点下8度を経験している(降雪の経験はないが)。とにかく冬場のガウテング一帯は空気が乾燥し、落雷がたびたび発生する。この落雷も、サッカー観戦のリスクの1つとなるかもしれない。

前述したように観戦客の移動手段として大型バスがフル稼働することになるが、路面の凍結や積雪がインフラの弱さに拍車をかける可能性もある。

そして、もう一つ心配なのが新型インフルエンザの動向である。来年の6月から7月にかけては、新型インフルがパンデミックになってから南アが初めて迎える冬となる。

医療

南アでは、医療機関の質の低下が止まらない。筆者が南アに生活の拠点を置いていた当時の医療機関は先進諸国並に充実していた。しかし、現在では医療従事者の労働環境が悪いことなどから、現場は常に人手不足である。

さらに、南アで医師資格を取得した人が南アに定着しないことも問題化している。なんと毎年17パーセントの医師が南アを去るという。

45万人ものサッカーファンが世界各国から訪れるというのに、医療機関のキャパシティは絶対的に不足している。しかも、北半球からのファンは夏の国から冬の国にやってくる。新型インフルや風邪などを発症するリスクが高まる。しかし病院はキャパが足りない。

前述したように道路網での移動がメインとなることから、必然的に交通事故が増える。しかし、怪我をしたサッカーファンが運ばれた先の病院は医師が足らず、救急処置を受けることができないといった事態を招きかねない。

★  ★  ★


つい先日、某超有名サイトの運営者の人と朝方まで飲む機会に恵まれ、なんだか上記のような情報を記事に書けとリクエストされているっぽい雰囲気だったので、頑張って記事にまとめてみることにした。週刊誌等でパクられそうな内容かもしれないが、無断転載や無断引用はやめてくださいよ。




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この記事へのコメント

1. Posted by jcla   2009年12月07日 04:43
南アでレイプされるとHIVの感染もありそうなので、踏んだり蹴ったりってレベルじゃないですよね。

観光客は下手すると観戦ではなく感染に行く羽目になりそうですね。
2. Posted by ななななよん   2009年12月07日 11:05
観戦に行く人はそれなりの覚悟をしておかないといけないね。
3. Posted by よねまる   2009年12月07日 12:20
5 ネズミ花火のように跳弾が足元をかすめ…ヒイイ
何も考えずに夜ふらつく観戦ファンとかいるんだろうなーニュースとか流れるんだろうなー
4. Posted by    2009年12月07日 16:52
まぁ、はじまりゃ何とかなる。
前世紀のソウルでオリンピックだってやれたんだから。

っていうか、こないだサッカー見にいった日本人が強盗にあったばかりな気がする。
5. Posted by bobo   2009年12月07日 20:15
行く人は自己責任でどうぞ、と言いたいところですけど、変な病気持って帰る人が大量に出そうで怖いです。
6. Posted by     2009年12月07日 23:51
こうしてまとめて頂くと、改めて南アW杯はとんでもなく無謀なイベントだと感じますね。
というか、観戦に行こうと考えている人ははっきり言って愚か過ぎるでしょう。
何が起こっても自業自得。

しかしいずれにしてもどうしたって観戦に行くと決めている人間は腐るほどいるわけだし、
寧ろ前代未聞の大惨劇が起こって歴史的ニュースが報道されるのを期待すべきか。
7. Posted by    2009年12月08日 08:11
南ア行く奴は、南アで何かあっても国に泣きつかないって誓願書書いとけよ。
8. Posted by     2009年12月08日 20:06
米7
というか、行ったら帰ってこないで欲しい
本文中にミッキーさんが書かれてる通り医療の質が低いのであれば、当然異邦人の出入国の感染病チェックも甘いに相違ない
病気にかかっていてもザルな検査を潜り抜け、どこぞの飛行機の中継国、または日本の空港で初めて感染が確認されたとなれば既に何十何百と言う人が同じ病気にかかっている危険があるのだから

行った先で強盗にあった、ならば個人の自己責任だけで終わるが、外国で感染してその病気を他人にうつした、では本当に洒落にならない
9. Posted by      2009年12月08日 22:45
状況次第ではワールドカップ自体が中止になるかもしれませんね。
10. Posted by     2009年12月09日 11:26
行った人達の身に何が起きても報道されなさそうなのが最大の心配。
米1
男でも日本人なんか特に強盗レイプの標的になりそうだし、HIV感染者が爆発的に増えて戻ってくるかもしれませんね…。
11. Posted by     2009年12月10日 02:41
人質に取られても勿論南アワールドカップを大々的に宣伝した糞旅行会社が交渉料金・人質好感料金払うんだよな?
まさかまさか旅行会社は糞乞食みたいな事しないよな?
12. Posted by あ   2009年12月12日 06:39
観戦するなとは言わないけど、レイプされてHIVとかまで持って帰ってこられたらな…
アフリカでは赤ちゃんレイプしたらエイズが治るっとかっていう迷信あったよな
13. Posted by io   2009年12月12日 17:30
欧州とか南米のトップ選手たちに何かあったらどうすんだよ…
14. Posted by    2010年02月20日 13:09
今頃現地の人質ビジネス関係者は大忙しだね
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