2008年08月06日

逃走車両のキーを抜け ― 宝石店に押し入った3人組を通りすがりの男性が間接的に無力化した方法とは


英国南東部イーストサセックス州の州都リュースで、“WE Clark and Son”という家族経営の宝石店の前に野次馬が集まってきた。どうやら今現在、この宝石店の中で事件が発生している真っ最中らしい。目だし帽を被った男3人組が店に押し入ったという。
実際、店内では3人の男たちが大きなハンマーを振り回して店員と客を店の裏手に追い込んで、お宝を頂戴しようとしていた。陳列ケースの中では、ダイヤモンドの指輪など、高価なジュエリーが燦然ときらめいている。

あなたも野次馬の1人で、店の中を覗き込んでいたとしよう。犯罪行為の進行をただ見守っているだけでよいものだろうか? 警察に通報するのはもちろんのことだが、警官が到着するまでに何かできることはないか?

3人の賊は大きなハンマーで武装している。われこそはヒーローなりと店内に飛び込んでも返り討ちに合う可能性が高い。もっと間接的に連中を無力化する方法があるのではないか? 野次馬の中に頭の切れる男性が1人いて、3人組の計画にアキレス腱のような弱点があることに気づいた。

賊たちがお宝を奪った後、徒歩で逃げようとしているはずがない。逃走手段を必ず用意しているはずである。その逃走手段を使用できなくすれば、3人組を無力化できる。そう考えた彼は、すぐに逃走手段を見つけた。

店先の路上にエンジンがかけっぱなしで無人の青いプジョーが停まっていた。彼は運転席のドアを開けると、エンジンを切ってキーを抜き取った。

彼の行動の意味を理解した他の野次馬たちは、トラフィックコーンや道路標識などを周囲から運んできて、プジョーの上に積み上げた。こうしておけば、万一3人組がスペア・キーを持っていても逃走するまでに、かなりもたつくはずだった。

さて、ダイヤモンドなど、日本円で約4600万円相当の宝石類を手中に収めて意気揚々と店外に出てきた3人組は逃走車両からキーが抜き取られていることに衝撃を受ける。「げっ、車のキーを誰かが盗みやがった。やばいぜ! とにかく逃げろ!」

3人組は、約800メートル先の町外れに車をもう1台用意していた。プジョーで現場から逃走した後、その車に乗り換える予定だったのではないかと思われる。その車まで必死で走ってたどり着いたのだが、時すでに遅し。6台もの警察車両が彼らの車を追って来た。

結局、3人組の車は行き場を失い生垣の中に突っ込んで停まり、御用となった。5月8日のことだった。

捕まったのは、ジェーミー・エバンス(34歳)、アーロン・スティルウェル(26歳)、ステファン・リデル(23歳)の3人。8月4日にブライトン刑事法院で公判が開かれ、エバンスには8年、スティルウエルには7年、リデルには6年の懲役刑がそれぞれ言い渡された。

公判の後、宝石店“WE Clark and Son”の経営者ジョン・クラーク氏は、店外にいた人たちに感謝の意を表した。「皆さんの勇気と着眼に感動しました。私たちのために戦ってくれるチームがそこにいてくれたのだと思いましたよ」

3人組のうち1人が逃走車両の中に残っていたら、まんまと逃げおおせることができたかもしれない。どこかからお宝を頂戴して逃走する計画では、逃走車両が“単一障害点”となる。“単一障害点(single point of failure)”とは、何らかのシステムにおいて、その部分が故障するとシステム全体が故障に至るアキレス腱のような部分のことである。たとえば、パソコンなら電源装置が単一障害点である。

3人組が犯行に及んでいる最中に外にいて、その“単一障害点”の存在にすぐさま気づいた男性は、素晴らしい着眼点の持ち主だと言えよう。

評点チャート





■ Source: Jewel gang foiled as shoppers take getaway car keys

【関連記事】


この記事の先頭に戻る
Google
WWW を検索 評点

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by ヴァル   2008年08月06日 20:09
お見事!
頭がキレル人ってのはカッコイイですね!
2. Posted by jacklegdoc   2008年08月07日 10:58
白昼堂々ってのもすごいけど。何かもうテレビ向きのネタは番組名出しちゃってるんですね。
3. Posted by エスティ   2008年08月07日 12:49
お見事!
4. Posted by QS   2010年06月10日 19:01
犯人は馬鹿だけど、この男性はすごいと思う。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔