2008年07月09日

泥棒が一躍ヒーローに ― 路上で車を盗もうとした男が中に爆弾を発見、身を挺して皆の命を救う


ニューヨーク市ブルックリン区のサンセット・パーク付近の路上に赤いフォード・エコノラインが放置されていた。男がそのバンに近寄ってきて、周りに人がいないことを確認する。男はまもなくロック解除に成功し、ドアを開けて中に乗り込む。7月3日の午後5時ごろのことだった。
その車は男の所有物ではない。男は要するに自動車泥棒。逮捕歴もある。いつもの手順で自動車を中の金品とともに頂戴する予定だった。荷台に何かが積まれているのもわかっていた。金になりそうな物ならいいなあ・・・と期待して荷台をチェックする。

まず目に入ったのは数個のガソリン缶。そして発砲スチロールの容器。よく見ると、その容器には正体不明な物質が詰められており、そこから電線やスイッチらしきものが外にはみ出している。

それが何を意味しているか、男にはすぐにわかった。

エコノラインが放置されていた53番街路とセカンド・アベニューの交差点付近には、褐色砂岩張りの建物が建ち並んでいる。バレエ・スタジオもあり、幼い女の子たちも通っている。イスラム教徒の子供たちが通う小さな学校もある。

爆弾は時限式でもうすぐ爆発しようとしているかもしれない。こんなところで爆弾が爆発したら、大勢の子供たちを含む罪のない人々が犠牲になってしまう。今みんなの命を救えるとしたら、それは自分しかいない。――もはや男は自分が泥棒であることさえも忘れて、使命感だけに突き動かされていた。

男は車を安全な場所に移動させることにした。配線をショートさせてエンジンを始動させる必要がある。もしかしたら、エンジンを始動した瞬間に爆発するように仕掛けられた爆弾かもしれない。だが、爆弾の配線は車体とつながってなさそうだった。

長い間放置されていたらしいバンだったが、バッテリーは上がっておらず、すぐにエンジンがかかった。爆弾が爆発しなかったことに胸を撫で下ろすと、男は細心の注意を払いながらバンを波止場地区へと走らせる。Costcoストアという年中無休の会員制倉庫型卸売店の裏手へと向かう。

今にも爆発しそうな爆弾が積まれたバンをめったに使われてなさそうな桟橋が並ぶあたりまで乗り入れると、彼は車外に飛び出す。安全な距離を確保すると、携帯電話を取り出す。ある番号をダイヤルする。以前警察といざこざがあったときに知り合いになった刑事の番号だった。訝しがる相手に一部始終を説明すると、話を把握した刑事が「本当か、でかしたぞ!」と声を上げる。

本件は、New York Postオンライン版が7月4日に情報筋からの話として第一報を伝えた。上記は、伝えられた情報に「なんでも評点」流の肉付けを加えた内容となっている。New York Postオンライン版の第一報を書いた記者も、この窃盗常習犯の勇気ある行動に感銘を受けたようで、次のような冒頭文で始まっている。

He's a criminal, but he "did the right thing" when it mattered
(彼は犯罪者だが、いざというときに“正しい行いをした”)


そして、警察当局でも、今回この男がバンのロックを解除して中に侵入したことを罪に問わないことにした。男が窃盗常習犯でなければ、間違いなく感謝状を贈るところだっただろう。

New York Postオンライン版では、第一報の翌日(7月5日)に詳報を伝えている。赤いフォード・エコノラインに積まれていたのは、本物の爆弾だった。10オンスのボトル、防錆潤滑剤の缶、5ガロンの水入れなどにガソリンが満たされており、発泡スチロール製の容器に起爆剤が入っていた。リモコン式のドア・オープナーで外部から起爆できる仕組みになっていた。

さらに、警察ではエコノラインの持ち主(すなわち自家製爆弾の作り主)としてユン・タンという名前の39歳の男を特定した。中国国籍のタンは、今年の6月29日から別件の爆弾事件でコネティカット州で身柄を拘束されている。

ニューヨーク市警がタンの自宅を家宅捜索したところ、今回のものに酷似した爆弾がマツダMPVの中に仕掛けられているのが見つかった。ただし、タン容疑者の弁護士は、タンがエコノラインに仕掛けられた爆弾には関与していないと主張している。6月29日からコネティカット州で身柄を拘束されていることが、その根拠である。

しかし、赤いフォード・エコノラインは1か月ほども前からサンセット・パーク付近の路上に放置されていたらしいことがわかっている。ならば、タン容疑者がコネティカット州で逮捕される前に、エコノラインをそこに停めることは十分可能だったことになる。しかも、その放置場所は彼の前妻の家から至近距離であったこともわかっている。

ともあれ、自らの危険を顧みず、今にも爆発しそうな爆弾を人けのない安全な場所に移した窃盗犯の勇気は褒め称えられて然るべきである。彼にとって、今回のことが生き方を改める契機になったことを願いたい。世をすねて悪の道に染まったのかもしれないが、“世界が自分を必要とする瞬間”が思いがけず彼の身に訪れ、そして迷いなく純粋にそれに応えることができたのだ。

評点チャート





■ Sources:


【関連記事】


この記事の先頭に戻る
Google
WWW を検索 評点

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 7月10日のニュース  [ ごった煮 ]   2008年07月10日 12:36
今月のホットミルクに『らき★すた』のかがみがいるんだが・・・ ドリル氏じゃ仕方ないな 泥棒が一躍ヒーローに ― 路上で車を盗もうとし??.
2. 車上荒しが爆弾を発見、処理  [ clydemender ]   2008年07月10日 12:54
http://rate.livedoor.biz/archives/50675440.html ちょっと感動の良い話。筆者の文才だと思いますが、車上荒しからヒーローに転ずる決心が目に浮かびます。やべー、ハンコック見てえ。...

この記事へのコメント

1. Posted by    2008年07月10日 01:21
4 チャート!面白いですね^^

せっかく良い事で有名になれたのだから、ホント今後は盗みなどせず明るく生活して欲しいですね♪
2. Posted by jacklegdoc   2008年07月10日 12:38
評点面白いですね。コソ泥がヒーローになるところが熱いですね。刑事も銭型っぽくて良い。
3. Posted by 純一郎   2008年07月10日 12:54
感動した!
4. Posted by hasegawa   2008年07月10日 12:56
これはまたTV受けしそうな題材ですね。
再現VTRがナレーション付きで頭の中で構成されました。
5. Posted by しらさん   2008年07月10日 13:20
5 映画化しても悪くない話だと思いました。 少なくとも、近いうちに某番組で再現VTRを目にしそうな気がします。
6. Posted by     2008年07月15日 10:03
>赤いフォード・エコノラインは1か月ほども前からサンセット・パーク付近の路上に放置されていたらしいことがわかっている

なら、タイマーは『いつ』爆発するようにセットされていたのか
まあ不発だったんだろうが
7. Posted by     2008年07月16日 04:33
フォードに爆弾か…無いとは思うがイメージ戦略の方向もあるかもと疑ってしまう俺ガイル
8. Posted by -   2008年07月28日 04:23
車上荒らしから一躍ヒーローか。
自作自演臭く感じてしまうな

タンが作った爆弾の情報って彼にも知ることが出来たんだろうか…

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔