2008年05月10日
生まれたばかりの赤ん坊は、だいたい1日に18時間眠る。しかし、3年前に米国フロリダ州セントピーターズバーグで生まれた男の赤ちゃんは、生まれた直後から、赤ん坊らしくすやすやと眠っている姿を見せることが一度もなかった。
もちろん、生まれたばかりの赤ん坊が眠っているか起きているかを明確に見分けることは難しい。だから最初のうち、その子の両親であるデビッド&シャノン・ラム夫妻は我が子レットが一睡もしていないことにはっきりとは気づいていなかった。
ただ、どう見ても様子がおかしい。1日2日、1週2週、1か月2ヶ月と時が流れ、レットちゃんが成長していくにつれて、疑念が膨らんでいった。もしかしたら、この子は一睡もしていないのではないか、と。
不眠の世界記録は11日間だとされている。生まれた直後からその記録を延々と更新し続けている赤ん坊が無事に育つことができるとは、にわかには信じがたい話である。
だが、レットちゃんはその後も成長を続けた。ある程度、成長して自由に動き回れるようになると、彼が一睡もしていないことに疑問を挟む余地はなくなった。昼寝をしたことなど一度もないし、夜になってもなかなかベッドに入ろうとしない。ベッドに入っても、目を閉じて眠ることはない。
もちろん、両親はレットちゃんを医者に診せた。だが、どの医者も明確な診断を下すことができない。両親はまず自閉症を疑った。だが、最初に診断を仰いだ医師は自閉症の疑いを否定し、発達小児科医に診せろという。発達小児科医も「自閉症ではない」と言うものの、診断を下さず、神経外科医への紹介状を書く。神経外科医は「自閉症の可能性をチェックしましたか」と蒸し返す。こんなふうに“いたちごっこ”が延々と続いた。
ようやく、不眠の原因になっている可能性の高い先天異常が発見された。“キアリ奇形”という診断が下ったのだ。“キアリ奇形”とは、、後頭部にある小脳や脳幹の一部が頭蓋骨から脊椎に落ち込んでいるという先天異常である。このために脳に異常な圧力がかかっていて、レットちゃんの睡眠を妨げている可能性が高い、という結論が得られた。
われわれ“外野”としては、生まれて3年間、一睡もせずに成長してきた子供がいるという事実にただただ驚愕するばかりである。しかし、幼い我が子が一睡もしない日々が何年も続いたら、両親がどれだけ大変な目に遭うか。
そもそも、幼い子供は目が離せない。だがその幼い子供が昼夜を問わず、一睡もしようとしない。今年に入って、父デビッドさんはレットちゃんの世話をするために仕事を辞めた。現在、母シャノンさんがフルタイムの仕事で一家を養っている。
デビッドさんとシャノンさんが“三交代制”でレットちゃんを見守っている。午前から午後にかけてはデビッドさんのシフト、午後から夜にかけてはシャノンさんのシフト、そして夜間は二人でシフトを共有する。その上、医療費も増える一方なのだ。
下のリンクをクリックすると、レットちゃんの姿を映像に見ることができる。見た目はごく普通の3歳児である。まさか生まれてから一睡もしていないようには見えない。眠そうなそぶりも見せていない。
5月15日にキアリ奇形を矯正する手術が執刀されることになった。デビッド&シャノン・ラム夫妻は、この手術でレットちゃんの不眠が治ることを切に願っている。ただし、手術で不眠が確実に治るという保証はない。医師らは、成功率を五分五分と見ている。
親御さんの苦労を考えれば、脳への圧力が解消されて不眠が治るのが一番だ。
しかし、もしキアリ奇形による脳への圧力が原因でないとしたら、こんなふうに考える人(科学者を含む)だっているだろう。レットちゃんは睡眠を取らなくても普通に生活していけるという“進化した形質”の持ち主なのではないか、と。そして、幼少時には親が目を離している隙に事故に遭うリスクが高いが、その時期を過ぎれば、睡眠が不要であることが極めて大きなアドバンテージになるのではないか、と。
■ Sources:
【関連記事】
ただ、どう見ても様子がおかしい。1日2日、1週2週、1か月2ヶ月と時が流れ、レットちゃんが成長していくにつれて、疑念が膨らんでいった。もしかしたら、この子は一睡もしていないのではないか、と。
不眠の世界記録は11日間だとされている。生まれた直後からその記録を延々と更新し続けている赤ん坊が無事に育つことができるとは、にわかには信じがたい話である。
だが、レットちゃんはその後も成長を続けた。ある程度、成長して自由に動き回れるようになると、彼が一睡もしていないことに疑問を挟む余地はなくなった。昼寝をしたことなど一度もないし、夜になってもなかなかベッドに入ろうとしない。ベッドに入っても、目を閉じて眠ることはない。
もちろん、両親はレットちゃんを医者に診せた。だが、どの医者も明確な診断を下すことができない。両親はまず自閉症を疑った。だが、最初に診断を仰いだ医師は自閉症の疑いを否定し、発達小児科医に診せろという。発達小児科医も「自閉症ではない」と言うものの、診断を下さず、神経外科医への紹介状を書く。神経外科医は「自閉症の可能性をチェックしましたか」と蒸し返す。こんなふうに“いたちごっこ”が延々と続いた。
ようやく、不眠の原因になっている可能性の高い先天異常が発見された。“キアリ奇形”という診断が下ったのだ。“キアリ奇形”とは、、後頭部にある小脳や脳幹の一部が頭蓋骨から脊椎に落ち込んでいるという先天異常である。このために脳に異常な圧力がかかっていて、レットちゃんの睡眠を妨げている可能性が高い、という結論が得られた。
われわれ“外野”としては、生まれて3年間、一睡もせずに成長してきた子供がいるという事実にただただ驚愕するばかりである。しかし、幼い我が子が一睡もしない日々が何年も続いたら、両親がどれだけ大変な目に遭うか。
そもそも、幼い子供は目が離せない。だがその幼い子供が昼夜を問わず、一睡もしようとしない。今年に入って、父デビッドさんはレットちゃんの世話をするために仕事を辞めた。現在、母シャノンさんがフルタイムの仕事で一家を養っている。
デビッドさんとシャノンさんが“三交代制”でレットちゃんを見守っている。午前から午後にかけてはデビッドさんのシフト、午後から夜にかけてはシャノンさんのシフト、そして夜間は二人でシフトを共有する。その上、医療費も増える一方なのだ。
下のリンクをクリックすると、レットちゃんの姿を映像に見ることができる。見た目はごく普通の3歳児である。まさか生まれてから一睡もしていないようには見えない。眠そうなそぶりも見せていない。
- ビデオへのリンク(最初にCMあり。動作やや遅し)
5月15日にキアリ奇形を矯正する手術が執刀されることになった。デビッド&シャノン・ラム夫妻は、この手術でレットちゃんの不眠が治ることを切に願っている。ただし、手術で不眠が確実に治るという保証はない。医師らは、成功率を五分五分と見ている。
親御さんの苦労を考えれば、脳への圧力が解消されて不眠が治るのが一番だ。
しかし、もしキアリ奇形による脳への圧力が原因でないとしたら、こんなふうに考える人(科学者を含む)だっているだろう。レットちゃんは睡眠を取らなくても普通に生活していけるという“進化した形質”の持ち主なのではないか、と。そして、幼少時には親が目を離している隙に事故に遭うリスクが高いが、その時期を過ぎれば、睡眠が不要であることが極めて大きなアドバンテージになるのではないか、と。
■ Sources:
- Rare condition doesn't let St. Petersburg kid sleep (Bay News 9)
- 3-Year-Old Has Never Fallen Asleep (Local 6)
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この記事へのコメント
1. Posted by 村人M 2008年05月10日 06:55
恐ろしい症例のような気がしますね。
確かに、
>睡眠が不要であることが極めて大きなアドバンテージになるのではないか
と考えることもできるかもしれませんが、成長して意味のある活動をする前に体の各器官がへばりそうな予感が。
耳や目などは真っ先に酷使に耐えかね用を為さなくなるのではないでしょうか。
キアリ奇形の矯正手術によって不眠が解消されると良いですね。
確かに、
>睡眠が不要であることが極めて大きなアドバンテージになるのではないか
と考えることもできるかもしれませんが、成長して意味のある活動をする前に体の各器官がへばりそうな予感が。
耳や目などは真っ先に酷使に耐えかね用を為さなくなるのではないでしょうか。
キアリ奇形の矯正手術によって不眠が解消されると良いですね。
2. Posted by * 2008年05月10日 10:13
睡眠をとらなくても健康に成長できるものなのか。
なにか成長に問題がおきたりしないの??
なにか成長に問題がおきたりしないの??
3. Posted by jacklegdoc 2008年05月10日 11:56
一見すると幸せそうな家族なのに、物心つくまで目が離せない極端な例ですね。睡眠をとらなくても良いとか食事を取らなくても生きている人の話を読むと、欲求から開放された特異体質に憧れますが、世話する側は大変ですね。
4. Posted by GoN 2008年05月10日 18:20
進化した人間が、眠らずにすむものか・・・
そんな「進化」した未来は、ちょっとこわいですね。
いままで以上に労働条件がきびしくなっていそうで。
総合格闘技のチェ・ホンマン選手も、頭のどこか
成長にブレーキをかける部分が欠損していて、
あそこまでの身長なのだと聞いたことがあります。
あらゆるブレーキを人間からはずしたら、すごい
「超人」が生まれそうですね。
そんな「進化」した未来は、ちょっとこわいですね。
いままで以上に労働条件がきびしくなっていそうで。
総合格闘技のチェ・ホンマン選手も、頭のどこか
成長にブレーキをかける部分が欠損していて、
あそこまでの身長なのだと聞いたことがあります。
あらゆるブレーキを人間からはずしたら、すごい
「超人」が生まれそうですね。
5. Posted by 2008年05月10日 20:03
何か、全く新しいものを発明した人たちって、昼寝や睡眠から目が覚めたら、ぱっと思いついた、と話している人が多い。
寝ている間って、脳の中で情報を整理している時間だから、あったほうはいいと思っています。
寝ている間って、脳の中で情報を整理している時間だから、あったほうはいいと思っています。
6. Posted by るる 2008年05月10日 21:45
現在1歳と3歳の子育て中です。
子供が眠った時間の中からやっとリラックスタイムがとれるというのに、子供が24時間眠らないだなんて想像を絶する状況ですね。
例え夜中1時間ごとに子供がぐずったとしても、眠ってくれているだけありがたいと思うようにします(笑)
子供が眠った時間の中からやっとリラックスタイムがとれるというのに、子供が24時間眠らないだなんて想像を絶する状況ですね。
例え夜中1時間ごとに子供がぐずったとしても、眠ってくれているだけありがたいと思うようにします(笑)
7. Posted by かつお 2008年05月11日 11:11
以前何かの番組で観たのですが、同じ症状の不眠の老人がいたと思いました。ただ、この老人は先天的なものではなく後天的な理由で眠らなくなったと思いました。
8. Posted by 経済学者の妻 2008年05月11日 20:57
眠らないのなら軍人には向いているかもしれませんね〜。
でも、元気なのに手術をするのも・・・。眠らない人に、眠らせるための麻酔も効くものでしょうか?今度は3年間寝たままになってしまったりして・・・。
でも、元気なのに手術をするのも・・・。眠らない人に、眠らせるための麻酔も効くものでしょうか?今度は3年間寝たままになってしまったりして・・・。
9. Posted by tf 2008年05月15日 19:36
渡り鳥みたいに右脳と左脳を交互に使ってるんじゃないかな?
10. Posted by 2008年06月02日 01:51
一生眠らないまま90代まで生きた人が居たような気が、、、
亡くなった時期はもっと早かったかもしれませんが
1世紀ほど前のアメリカにそんな人が居たときいた事があります。
亡くなった時期はもっと早かったかもしれませんが
1世紀ほど前のアメリカにそんな人が居たときいた事があります。