2008年03月07日

少なくとも大阪市には“流しの救急車”が実在する ― 手を挙げても停まってくれないが、どうすれば乗せてもらえる?


私は大阪市内に住んでいて、タクシーで移動するにしても近距離になることが多い。だから、タクシー乗り場などに停車しているタクシーはなるべく避けて、流しのタクシーをつかまえることが多い。大阪市内には、実は“流しの救急車”も走っている(大阪以外の都市にも“流しの救急車”が存在している可能性があるが、筆者が“流しの救急車”の存在を確認できているのは大阪市内だけである)。
ただし、“流しの救急車”は手を挙げても停まってくれない。ならば、たまたまそこで交通事故を起こしていたら停まってくれるのかというと、かなり微妙だ。“流しの救急車”は交通事故現場に遭遇することを想定して走っているのではないからだ。

「えー!、事故の現場に遭遇しても無視する救急車なんて職務怠慢ではないか」という声も聞こえてきそうだ。だが、“流しの救急車”はそもそも消防署に所属していない。運転手および乗員は公務員ではない。

ピンと来た人もいるだろうと思うが、“流しの救急車”は特定の私立病院に所属している救急車なのだ。ただし、病院が自前の救急車を所有していることは少なくないとしても、その救急車を“流しの救急車”として運行している病院はそう多くない。その理由は、この続きを読めばわかる。

“流しの救急車”は、路上生活者が特に多い区域を巡回している。あなたがそういう区域で不自然に倒れていたら、“流しの救急車”が停車し、乗員が降りてきて、あなたの容態をチェックしてくれる。単に路上で寝ていただけだとわかったら、彼らはあなたを乗せずに去って行く。

あなたが明らかに病気に見えたり、あなたの意識が朦朧としていたり、意味不明な言葉を発したり、あるいは完全に意識不明であったなら、彼らはあなたをタンカに乗せ、病院へと運んでいく。“流しの救急車”を運行している病院がこうして行き倒れの患者を収容しているのは、決して慈善活動などではない。

立派なビジネスなのだ。収容した患者が健康保険に加入している必要などない。行き倒れの患者の入院費および治療費は自治体(大阪市内なら、当然、大阪市ということになるだろう)が出してくれることになっている。検査費も出してくれるので、収容された患者はさまざまな検査を受けることになる。

このように路上で倒れているところを収容された患者は、“行路(こうろ)さん”と呼ばれる。行路さんを受け入れている病院は、そんなに多くはないかもしれないが、大阪市内のあちこちに存在する。行路さん専門の病院もあれば、一般患者と行路さんの両方を受け入れている病院も存在する(“流しの救急車”を運行しているのは、主に後者の病院のようである。行路さん専門病院の場合は、消防署の救急車で患者が搬送されてくるところが多いようだ)。

ある病院では、意識不明の行路さんの身元がわからない場合は、「○○五十太郎」のような呼び名をつけているという。○○の箇所は、その病院の名前が入る。「五十太郎」の「五十」の部分は一種のシリアル番号である。その次に意識不明&身元不明の行路さんが運ばれてきたら、「○○五十一太郎」という呼び名が付けられることになる。

路上で意識不明に陥っているところを発見された行路さんたちは、病室で生命維持装置と接続され、いつ覚めるともわからない眠りを眠り続ける。彼らの眠りが長ければ長いほど、自治体から多くのお金が支給されるという寸法である。つまり、それは市民の血税である。

しかし、これらの病院があこぎな商売をしていると決め付けることはできない。住む場所を失った挙句、路上で衰弱していく彼らの受け皿がどこかに必要だからだ。だが、こういった事実に触れることはタブー視されているのか、詳しい情報が文章で伝えられているのを見たことがない。

とはいえ、大阪市内であちこちを渡り歩いた経験のある医療関係者なら、こんな話はいくらでも知っているはずだ。実際、そんな医療関係者たちに直接聞いた話が本稿のベースとなっている。

なお、上記のように意識不明のケースもあるわけだが、実際には収容された行路さんの多くが快方に向かい、やがて退院していく。病室である程度回復すると、元の“自由な環境”に戻りたくて浮き足立つ患者も多いという。

ずいぶん前に一部上場企業に勤める友人の部下が車にはねられて病院に搬送されたことがある。搬送先の病院は、行路さんたちを受け付けている病院だった。そして、その部下は案の定、行路さんたちと相部屋に入れられてしまった。意識はあったが、足を複雑骨折していた。

普通なら、周囲の患者の様子に違和感を覚えて転院を訴えてもおかしくない。しかし、彼は世界中の発展途上国を放浪した経験などもあり、すっかりその雰囲気に溶け込んでしまった。見舞いに来た人が転院を勧めても、「ここが気に入っている」と頑として言い放った。足が治るまでの1か月半ほどを、住めば都とばかりに、その異様な雰囲気の病室で楽しげに過ごし続けたという。

【付記】

更新が滞り、いろいろと方針転換を模索している当ブログだが、今回は独自取材の国内ネタという非常に珍しいパターンで記事を書いてみた。

【蛇足】

ホームレスと化した中学生が長期にわたり公園で寝泊りしていても自治体から助けが来ないのが大阪クォリティと思われているようだが、大いに疑問である。助けが来ないとしても、せいぜい数日がよいところではないだろうか。

【3月26日追記】

「探偵ファイル」というサイトで本件が検証されているらしいことをコメント欄で伝えてくださった方がいる。しかし、「探偵ファイル」からこちらにリンクが貼られているわけでもなさそうだし、普段から「探偵ファイル」は見ていないし、その記事は今のところ読んでいない。

ともかく、私は現にこの目で確認しているし、このような救急車を運行している病院の関係者から直接事情を聞いたこともある。私が毎日のように自転車で走っている河川敷でも、ときどき“流しの救急車”を見かけることがある。今度遭遇したら写真を撮影し、できれば運転手や乗員にも話を聞いて、記事にしようと思う。

“流しの救急車”や“行路さん収容病院”については、もう何年も前から情報を得ている(たとえば、2004年10月13日付けのエントリでも、半ばフィクションとして“行路さん収容病院”のことを取り上げたことがある)。昨日や一昨日小耳に挟んだような不確かな噂に基づいて記事を書いたわけではない。


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1. 大阪には流しの救急車が存在する  [ Omnivorous News  旬なTOPIX ]   2008年03月07日 11:54
なんでも評点さんの記事によると大阪には、緊急車両である救急車とは違った、流しの救急車というのが存在するらしい。 この救急車は、消防??.

この記事へのコメント

1. Posted by モッチ   2008年03月07日 10:11
流しの救急車!?その正体とは一体!?と興味津々読み進めていくと、はぁなるほど…タイトルの【少なくとも大阪には】の部分に最後かなり頷けました。
それにしても、流しの救急車の存在自体にかなり驚かされた私ですが、税金を流しの救急車という形で不運なホームレスの方々救済のために使い、そしてそれはビジネスとしても成り立っている、学習させられました!
しかし、中学生も放ってはおけないですよね…。
2. Posted by ヴァル   2008年03月07日 10:39
ひとつ勉強になりました☆
3. Posted by ろご   2008年03月07日 18:33
管理人さん大阪の人だったのか
4. Posted by あや   2008年03月08日 04:11
全く知りませんでした!実情を詳しくは知りませんが、本当に受け皿は必要ですよね

流しの救急車が1番いい手なのかはちょっと疑問ですが
(でも倒れていても一般市民は助けてくれない可能性もありますよね、役所で胸の上に米を置かれ放置され亡くなってしまった件もありますし)

個人的にこういう税金の使い方には賛成ですね

それと今回の形式とてもいいと思います!

ペッパーランチ事件がどうなったのか記事にして貰いたいなー、なんて思います
5. Posted by ?   2008年03月09日 23:10
最新記事の“独自取材の国内ネタ”も良いとは思ったけれど、いつか、ミッキーさんの今までの恋愛に纏わるエピソードのようなものや恋愛観を語るような記事にもお目にかかれれば、なんてふと思いました(^^;
もし、不謹慎・この場にふさわしくない投稿と判断されましたらごめんなさい。削除お願いしますm(__)m
6. Posted by えつ   2008年03月10日 00:58
大阪なんですか、近親感を持ちました〜。うち京都です〜。
 流しの救急車?とびっくりしましたが、読んでいってなるほど…とうなずけました。こういう税の使い方はほんまにいいと思います〜。
 独自取材、おもしろいと思いますよ〜。頑張って下さい〜応援してます〜
7. Posted by 元大阪   2008年03月18日 04:56
なんで俺らが働きもせんオッサンらの治療費払わなアカンねん、と言う皮肉にも受け取れた私は精神が捻じ曲がってるんでしょうか。
8. Posted by RO   2008年03月26日 11:57
探偵ファイル http://www.tanteifile.com/
というサイトで、この件の事を検証していましたが、まったくそういった話はない。
という結論が出ていました。

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