G- なんでも評点:あなたが本当にクリックしているのは画面上のリンクではなくマウスのボタンではないのか?

2007年09月25日

あなたが本当にクリックしているのは画面上のリンクではなくマウスのボタンではないのか?


たとえば、あなたが当ブログへのリンクをクリックするとき、本当にクリックしているのは画面上のリンクなのか、それともマウスのボタンなのか? こんなことが気になる人は、めったにいないだろう。しかし、クリック(click)という言葉本来の語義に忠実であろうとすると、クリックしているのはあくまでマウスのボタンだということになる。
たとえばライターに点火するとき、「カチッ」という音が鳴る。英語では、この音をclickという名詞で表現する。clickを自動詞として使うと「カチッと音を立てる」、他動詞として使うと「〜をカチッと鳴らす」の意味となる。

「[削除] ボタンをクリックする」を最近のコンピュータ英語で表現すると、“Click the Delete button”となる。この英文ではclickを他動詞として使用していることになるので、「クリック」という外来語を使わずに日本語に逆翻訳すると「[削除] ボタンをカチッと鳴らす」の意味になる。しかし、冒頭で触れたように、実際にカチッと鳴らしているのは、マウスのボタンである。

筆者は20年近くにわたって翻訳を生業としてきたが、つい10数年前までは“Click the Delete button”のような表現が見られなかったように記憶している。“Click the Delete button”ではなく、“Click on the Delete button”でなければならなかった。

この前置詞“on”は、「[削除] ボタン自体をカチッと鳴らす」のではなく、「(マウスカーソルを [削除] ボタンの上に置いて)マウス・ボタンをカチッと鳴らす」ことを暗に示している。

1990年代前半に米国で出版されたコンピュータ用語集や解説書が本棚で眠っているので、それらを紐解いてclickに関する説明を参照してみても、やはりことごとく“click on a button”のパターンしか見つからず、“click a button”のパターンは見つからない。

実際のところ、現在でも“click on”を好む書き手は少なくないようだ。実際にネットを検索してみれば無数にヒットがある。

筆者のおぼろげな記憶なのだが、“click a button”という表現を最初に多用するようになったのは、Microsoftのマニュアルライターたちだったのではないかと思う。確か、Windows 95が登場した当時にそれまでめったに見たことのなかった“click a button”のパターンを頻繁に見かけるようになって、なんとなく気持ち悪い印象を持ったのを覚えている(もしかしたら、Windows 95登場より少し前のことだったかもしれないが)。

また、英文で“click a button”のパターンが使われるようになるまで、日本語のソフトウェアマニュアルなどでも、「〜ボタンの上でクリック」という、今から考えれば回りくどい表現が多用されていたように記憶している。日本語のソフトウェアマニュアルといっても、日本で開発されたソフト以外は、すべて英語からの翻訳だったわけで、万人が使用できるGUI(Macを別として)が登場して間もなかった当時に“click on a button”という表現が「〜ボタンの上でクリック」とぎこちなく訳されていたのであろうことは想像に難くない。

確かに論理的に考えれば“click on a button”(ボタンの上でクリック)の方が正しい。しかし、言葉の用法は不動ではない。“click a button”が定着してしまえば、たとえ実際にカチッと音を立ているのが画面上のボタンではなくマウスのボタンであろうと、それがスタンダードになるのである。

何を今さら度7■■■■■■■□□□


★  ★  ★


以上、普段とまったく毛色の違う話題を取り上げた。過去にも毛色の違う話題としては、【悪文を回避する文章テクニック】と題するシリーズ記事を3回目まで書いて中断しているわけだが・・・。


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この記事へのトラックバック

1. そんなこと考えたこともなかったわ  [ 話題の攻略 ]   2007年09月25日 21:37
なんでも評点:あなたが本当にクリックしているのは画面上のリンクではなくマウスのボタンではないのか? はぁーなるほど

この記事へのコメント

1. Posted by 1get   2007年09月25日 21:41
        ./ ニYニヽ
 r、r.rヽ  / (0)(―)ヽ
r |_,|_,|_,|/  ⌒`´⌒ \ ふむふむ… |_,|_,|_,|_,| , -)    (-、.|   
|_,|_,|_人 (^ i ヽ__ ノ l |
| )   ヽノ |  ` ⌒´   /
|  `".`´  ノ
   入_ノ
 \_/
   /
  /
2. Posted by     2007年09月26日 00:17
あなたが本当にクリックしているのは
脳内のシナプスの接点ではないのか?
3. Posted by k13   2007年09月26日 09:26
手で直接触ることのできない画面の中にあるボタンを
マウスでポインタを操作して手の代わりに押している

ので

click a buttonでも別に違和感はないかと。
4. Posted by ai   2007年09月26日 14:03
>>2それは、禁句…
それ言っちゃうと、見ているものも、触れているものも
この世界がすべてそれになっちゃうっっ
5. Posted by Tetutetu   2007年09月27日 10:10
PC初心者には「クリック」よりも「カチリッ」の方がしっくりくるかも。
6. Posted by 俊   2007年09月27日 12:23
私は、自分のプログラムの説明書などには、クリックという言葉は、ほとんど使いません。
ボタンの場合は、「画面上の・・ボタンを押して下さい。」、メニューの場合は「メニューから・・・・を選択して下さい。」という表現をしています。
電話や対面しての説明の場合は、「・・・を選んで、左ボタンを押して下さい」という様に心がけています。
ずっと昔、先輩から「なにかのキーを押して下さい」との説明で、リセットキーを押したユーザがいる。」と説明する時の言葉の注意を受けました。
また、私自身、マニュアルに「フロッピーは、使用前に初期化を行って下さい。」と書くと、電話で「コンピュータに電源を入れて、プログラムを使用する前にフロッピーを初期化しているが、前日に入力したデータが記録されない。」という質問を受けたことがあります。
7. Posted by woody   2007年09月28日 23:17
認知言語学で言うところのメトニミー(Metonymy)やシネクドキ(Synecdoche)?
「自転車をこぐ(→本当はペダルをこいでいる)」と同じように、それが一般に認知されてゆくと、便宜上、上位あるい隣接する概念で省略して指すようになってしまうのでしょう。そんなわけで、日常会話で使う言葉のほとんどはメトニミー(あるいはシネクドキ)になっています。
8. Posted by (゚∀゚)   2007年09月29日 00:00
どーでもいい それがどうかしたか?
9. Posted by ムシムシ   2007年10月04日 22:04
あなたが本当にクリックしているのは画面上のリンクではなくマウスのボタンでもない。

DOM EVENTの仕様を見てみると、ckick eventは、mouse eventやkey eventとは別のイベントとされています。
ようするに、
.櫂ぅ鵐燭脳貊蠅鮖慊蠅垢襦
∋慊蠅靴疹貊蠅妊好ぅ奪舛鯑れる。

△旅坩戮clickとされています。

ブラウザの仕様上は、「click」はマウスだけにあるアクションでは無いことになってます。
キーボードでも「click」は発生しています。

ブラウザの仕様から考えると
「(自らの意思で)選ぶ」
が一番しっくりいきます。
10. Posted by helpful site   2014年05月10日 19:17
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11. Posted by continue reading this   2014年05月11日 19:50
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