2007年09月14日

片言英語しか話せなかったチェコ人ライダーがレース中に頭部を強打、目を覚ますと英語の天才に(ただし長続きせず)


頭部に強い衝撃を受けるなどして気を失った人が再び意識を取り戻したとき、彼は天才になっていた。あるいは、別の誰かと人格が入れ替わっていた。フィクションの世界なら、ありがちな設定である。どうやら、現実にそれに近いことが起きたらしく、英国のメディアがこぞって記事にしている。
9月9日、グラスゴーで開催されていた二輪レースにマテイ・クスという名の18歳のレーサーが参戦していた。彼は英国人ではなく、チェコ人である。最近、英国にやって来たばかりで、英語でのコミュニケーションに不自由していた。

少ないボキャブラリの中から単語を2つか3つ繋げただけの片言の英語しか話せないため、自分の言いたいことを周囲のネーティブ・スピーカーになかなか理解してもらえず、かなり苦労していた。それでもめげずに、なんとか英語が上手くなるようにと毎日熱心に努力しているところだった。

しかし、9月9日のレース中、マテイさんはアクシデントに見舞われる。走行中にバランスを失って転倒したところに、後ろを追っていたバイクが突っ込んできた。後続のライダーはマテイさんを避けることができず、彼の頭をもろに轢いてしまった。

事故の直後、マテイさんは呼びかけに反応せず、意識を失っていた。やがて救急車がレース場に到着した。幸い、彼は、病院に搬送されている途中に目を覚ました。45分間にわたって意識を失っていたことになる。

救急車には、彼の所属チームのプロモーターであるピーター・ウェイト氏も同乗していた。そのウェイト氏の目の前で、救急隊員に具合を聞かれたマテイさんが、なんとネーティブ並みの流暢な英語を喋り始めたのである。

ウェイト氏は言う。「彼がまさかあんなに流暢に英語で受け答えできるとは、びっくり仰天でした。本当にきれいなアクセントでした。何の訛りもありません。クラッシュ時の衝撃のせいで、彼の頭の中の回路が組み換えられてしまったのだとしか思えませんでした」

そして、病院到着後は病院のスタッフたちとも、ネーティブと変わりない流暢な英語で会話を交わしたのだという。

「クラッシュの前、控えめに言っても彼の英語は“ブロークン”でした。私は医者じゃありませんが、普通では考えられない変わりようであったとだけは言えるでしょう」とウェイト氏。

しかも、単に英語を流暢に話しただけではなかった。しばらくの間、自分がいったいどこの誰かなのを忘れていた。それどころか、自分がチェコ人であることさえも忘れていた

さて、マテイさんは後続のバイクに頭部をヒットされたものの、実際に負った大きい怪我は左膝靭帯の損傷だけだった。今後1ヶ月は安静にする必要があり、現在は松葉杖をついている。

マテイさんは、厳密には事故当時17歳だった。事故の2日後、9月11日に18歳の誕生日を迎えたばかりである。怪我を負って戦列を離れなければならなくなったことはマイナスだが、突然に芽生えた英語力は、言葉に悩んでいた彼にとってまたとないバースデー・プレゼントであったかに見える。ところが、この話にはまだ落ちがある。

彼は現在、療養のため母国チェコで過ごしているが、事故当日とその後2日間の記憶が完全に消失している。記憶だけでなく、英語力も消失してしまったのである。

マテイさんはチェコで英国メディアの取材を受けたが、英語の質問を正しく理解して英語で正しく答えることなど、もはやできないレベルまで逆戻りしてしまっていた。そのため通訳を介して、取材に答えている。

「そんなふうに訛りもなく英語を話していただなんて信じられません。来年のシーズン開幕までには、誰かに頭を小突かれなくても意思の疎通ができるように英語を上達させたいと思います」

事故の後しばらくの間、そんなに英語を上手に喋れたのだから、自分の無意識下には英語の表現がごっそりと記憶されているのだと彼は信じている。だから、今後はもっと急速に英語が上達するのではないか、と。

所属チームのプロモーター、ウェイト氏は、こんなコメントを付け加えている。「事故の後、目を覚ますと、流暢なイタリア語を話せるようになっていた人とか、なぜかウェールズ訛りでしか英語を喋れなくなった人がいると聞いたことがあります。しかし、自分の身近で、それに類することが起きるとは予想もしていませんでした」


さて、本件を伝えている英国メディアのうち、Metro紙の記事には、マテイさんが英語を突然流暢に話し始めたのは、“真性異言(xenoglossy)”の一例ではないかという指摘がある。真性異言とは、習ったことのない外国語を急に話し出す現象などを指す。Metro紙によれば、世界でも指を数えるほどの報告例しかなく、科学的検証もほとんどされていないとのこと。

また、Mirror紙にも、マテイさんが突然流暢な英語を話し出したことに言及している記事があるが、その記事では“外国語アクセント症候群”(foreign accent syndrome)の一例ではないかと指摘している。しかし、“外国語アクセント症候群”は、精神的外傷もしくは脳に受けた小さな外傷が原因となって、あくまで発音に外国語様の訛りのようなものが生じる病気を指すので、流暢な英語でコミュニケーションを取っていたマテイさんに該当しないのではないかと思われる。

Mirror紙の記事には、オックスフォード大学のジョン・コールマン博士(音声学)のコメントも記載されている。コールマン博士によると、マテイさんは、これまで英語を使うことに抑制がかかっていた可能性があるとのこと。

まあしかし筆者が思うに、本件で最も注目すべきは、事故当日とその後2日間の記憶をマテイさんが失っているという点ではなかろうか。その3日の間、マテイさんが英語能力を維持していたかどうかに関する記載は、いずれの英国紙の記事にも見当たらない。

しかし、仮に3日間は英語能力を維持していたとすると、冒頭で触れた「別の誰かと人格が入れ替わる」という、フィクションでありがちな設定を連想せずにはいられない。彼は目を覚ました直後から、しばらくの間は自分がチェコ人であることを忘れていた。もしかしたら、自分は英国人だと信じきっていたのではないか。

もっとオカルト方面に発展させれば、生きている人と人格が入れ替わったのではなく、既に亡くなった英国人の人格が憑依していた・・・とかいう仮説になりそうだ。

あるいは、「解離性同一性障害」で説明しようとする人もいるかもしれない。もともと、マティさんの中には、英語の得意な別人格が棲んでいたのだ、というふうに。




■ Sources:


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1. 神楽書堂‐ニュースログ‐  [ 神楽書堂‐ニュースログ‐ ]   2007年09月14日 21:31
 
2. 頭打つしかないのか  [ 中国遺跡巡り ]   2007年09月16日 07:33
 英語、ぜんぜん上達しません。  もう頭打つしかないのかなあ。  (トラックバッ
3. オー ノー!  [ akira racing mo's kart blog ]   2007年09月18日 17:53
脳には、まだまだ不思議がいっぱい。 必死に勉強しても、ちっとも実を結ばない。と、...

この記事へのコメント

1. Posted by 赤   2007年09月15日 02:07
筆者様の後述、同意です。
入れ替わったとしたら、彼の守護霊や祖先か、
同じ場所又は似たような状況で事故で亡くなっ
た方が救ったのかな?と思います。
見えないヒーロー?^^
蓄積された記憶が無意識に働いたというのも
ありえそうですが、助かって何よりです!
2. Posted by 冬雪   2007年09月15日 23:05
4 え〜!!!
羨ましい。
良いな〜〜〜!
3. Posted by yumii   2007年09月17日 08:56
いいなあ、たくさん勉強してきたけど、いまだに何いってんのぉ〜? です。

やっぱり、頭打たなきゃ・・ですかね。
4. Posted by かんかん   2007年09月18日 00:26
5 はじめまして。
人間って以外と潜在能力がすごいんですね。
僕も勉強がんばってみようかな?
5. Posted by ななたん   2007年09月19日 03:52
5 なんか分かる気が…
私は日常会話なら英語が話せるんですが、日本語頭のときと英語頭の時があって日本語頭のときに英語で話しかけられてもあまり話せません。
数分ほど英語の文章を読んで英語頭に切り替えるとスムーズに話すことができるようになります。
思うにこの彼は言語のスイッチを上手く切り替えられた事がなくて、頭を打ったときにいきなり切り替わっちゃったんじゃないですかね。
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