2007年08月27日

両手両足がなくても健常者相手のレスリングで35勝を挙げた若者が総合格闘技への参戦を目指す


米国ジョージア州にカイル・メイナードという名の21歳の若者がいる。メイナードさんは高校時代、州大会でトップ10に残るなどレスリング選手として活躍した。高校アマチュア・レスリングでの通算成績は35勝である。メイナードさんは、ここ2年ほど、総合格闘技の試合に出場するためのトレーニングを積んで来た。
米国では、州ごとに“アスレチック・コミッション”という組織がスポーツの試合等を管轄している。メイナードさんは、この9月に予定されているアマチュア総合格闘技トーナメントへの出場権をジョージア州のアスレチック・コミッションに申請した。だが、コミッションはメイナードさんが危険にさらされる可能性が高いという判断に基づき、彼の申請を却下した。

カイル・メイナードの名に聞き覚えのある人もいるだろう。メイナードさんは19歳のときに“No Excuses(言い訳はしない)”という題名の自叙伝を出版した。彼は「先天性四肢欠損」という障害を持って生まれた。両腕の肘から先、両脚の膝から下が生まれつき欠損している。

前述したように、彼は高校時代アマレス選手として活躍したが、すべて健常者を相手にしての試合だった。このような重いハンデを抱えながら、通算成績35勝、州大会でトップ10というのは、実に恐るべき戦績である。下のビデオは、高校時代のメイナードさんの闘いっぷりを映したもの。


手足のない 高校生レスラー Kyle Maynard - Funny bloopers R us


下記のURLでも、メイナードさんの姿を見ることができる。両腕の間にペンを挟み込んで誰よりもきれいな文字を書くことができ、キーボードに向かえば指のない両腕の先端だけで驚異的な高速タイピング。



メイナードさんは、総合格闘技の試合にも勝ち抜く自信がある。だから、試合への出場権を得ようとした。

しかし、ジョージア州アスレチック&エンターテインメント・コミッションのJ.J.ビエーロ会長(彼自身も首から下の全身麻痺という障害を持つ)は、メイナードさんの出場を決して認めることはできないと考えている。「総合格闘技は凄まじい闘いですよ。メイナードさんの気持ちは分からないでもありませんが、ストレッチャーに乗せられて病院送りになった選手を実際この目で見てきました。正直言って、彼にディフェンスができるはずがありません」

メイナードさんは、コミッションの決定に異議を申し立てるつもりだ。異議申し立てが認められれば、総合格闘技参戦への道が開けるだろう。もし申し立てが認められなかった場合は、差別を理由にコミッションを訴えることまで考えている。

メイナードさんはインタビューを受けて、こう語っている。「ディフェンスは十分可能ですよ。リングを囲むケージに打ち付けられたり、頭部をストンピングされたりすることなんかありません。僕に反対している人たちはルールを理解していないだけだし、僕にどれほどの能力があるかをわかっていない」

総合格闘技ファンの反応

総合格闘技ファンからは、出場を目指すメイナードさんに批判的な声も上がっている。総合格闘技から逸脱したものになるのではないかと指摘する人もいれば、総合格闘技の真剣勝負としての面目を汚すことになるのではないかと懸念する人もいる。

MMA.tvという総合格闘技サイトには、メイナードさんに関するコメントが殺到している。たとえば、「相当格闘技は、見世物小屋(freak show)ではない」という辛辣な批判もあった。(注:freak showとは本来、奇形の動物や人間を見せるショーのことである)。

専門家の反応

一方、総合格闘技の専門家たちの間では、四肢が欠損したメイナードさんの参加を認めるにはルールの調整が必要になるという見方が支配的である。 「総合格闘技のルールは、五体満足な選手を対象として作られてきたものです」と、Ultimate Fighting Championshipのレフェリー、ジョン・マッカーシー氏は言う。

「お前さんには闘う能力がない・・・なんてことは言いたくありません。でも、物事には限度がある。たとえば、F1レースとかインディアナポリス500マイルレースに盲目のドライバーが参加すると言い出したらどうでしょう? 無線で誘導するなどすれば走れるかもしれない。でも、スピードは出せない。そんなので競技に参加していると言えますかね?」

グランド・オンリーの彼は絶対に打撃を浴びない?

ただし、プロの総合格闘技とアマチュアの総合格闘技には、大きなルール上の違いがある。プロのルールでは、マット上に倒れこんだ相手にパンチやキックを浴びせ放題である。一方、アマのルールでは、グラウンド(寝姿勢)の相手に対する打撃は反則となる。

つまり、メイナードさんがアマの試合に出場した場合、両足のない彼は最初からグラウンド姿勢となるため、対戦相手がルールを守っている限り、パンチやキックを浴びせられることはない。メイナードさん自身が「反対する人はルールを知らない」と言っているのは、おそらく、この点を指しているのではないかと思う。

最初から最後までグラウンドの姿勢で闘うのは、真の総合格闘技を闘うことにならないのではないか、と指摘する専門家もいる。しかし、選手が一度もスタンディング姿勢にならなくても、ルール上の問題はないらしい。

彼の短い腕の先端は肘なのか、拳なのか

グラウンド姿勢の選手に打撃を加えることが反則となるアマのルールでも、グラウンド姿勢の選手がスタンド(立ち姿勢)の選手に打撃を加えることは許される。メイナードさんが試合に出場した場合、彼はグラウンド、相手はスタンドの姿勢で試合が始まる。彼は、この状態で相手に打撃を加えることになる。

メイナードさん自身の言によれば、この状態におけるグラウンドからスタンドへの打撃は、彼にとって大きなアドバンテージになるらしい。スタンドの相手はグラウンドのメイナードさんに打撃を浴びせることが許されない。その上、メイナードさんの打撃は、小さい面積に自分の全体重(57キロ)をかけたものとなるので威力が増すのだという。

小さい面積とは、どの部分を指すか? 上腕しかない腕、大腿しかない脚の欠損面である。とりわけ、そこで腕が終わっている肘部分は、パワーを集中することにより90キロ相当の打撃力を生み出すという。

「相手にどうやって打撃を浴びせるつもりなのかと疑問に思う人が多いだろうね」とメイナードさんは言う。「そりゃ、僕の腕は“ずば抜けて長い”わけではありません。でも、肘の部分で強烈な打撃を加えることができます。相手の胸郭、神経叢、腎臓、脚に打撃が決まれば、相手は相当なダメージを受けることになります」

しかし、ジョージア州を含め、多くの州では、アマチュア総合格闘技の試合で肘打ちを使用することを禁じている。マッカーシー氏(Ultimate Fighting Championshipのレフェリー)も、メイナードさんの腕の欠損面が肘とみなされるのか、拳とみなされるのかによって、大きな違いが生じると指摘している。

「もし拳とみなすのであれば、彼はグローブを着用しなければなりません。肘とみなし、その部分での攻撃を許すのであれば、対戦相手にも肘打ちを許可しないといけなくなるのでは?」

対戦相手も大変

仮にメイナードさんに出場が許されたとしても、彼と対戦したがる選手がいるのだろうかと疑問視する向きもある。

「対戦者が勝ったら、その彼は四肢が欠損した相手を打ち負かしたことになる。逆に負けたら負けたで、四肢が欠損した相手に負けたことになる。どっちに転んでも、対戦者は難しい立場に立たされますね」とマッカーシー氏は言う。

参戦への意思は固い

メイナードさんは、自叙伝“No Excuses”の出版後、テレビ番組や講演などで啓発的なトークを人に聞かせることを職業としてきた。総合格闘技参戦への決意は固く、決して特別待遇してほしいわけではないのだと言って譲らない。

彼は過去2年近く、総合格闘技参戦のためのトレーニングを積んできた。彼のトレーニング仲間には、ロビー・ローラーやディエゴ・サライバなど、名の知れた格闘家も含まれている。

「僕を不自由な奴だと見てほしくない。可哀相な奴だと思われたくないんです」とメイナードさん。総合格闘技参戦は、自分にとって試練というより、真の自由に近づくための挑戦なのだという。

ジョージア州アスレチック&エンターテインメント・コミッションのビエーロ会長が特に懸念しているのは、メイナードさんが反則攻撃にさらされる可能性である。会長が実際に観戦した試合でも、選手2人が興奮しすぎて、両者がグラウンドの姿勢になった後も互いの顔面にパンチを浴びせあう光景を目の当たりにしたという。それゆえ、メイナードさんをリングに上げるわけにはいかないのだ、と。

そんな心配も、メイナードさんにとっては、余計なお世話でしかない。自分が顔面や頭部に打撃を浴びることがあるとしても、そのリスクが他の選手より高いわけではない、と彼は主張する。

メイナードさんの自室には、かのモハメッド・アリの若かりし日のポスターが貼られている。それを見て彼は言う。「自分の人生を決めるのは自分です。今回のコミッションの決定に対しては、リングで闘うときと同じくらい徹底的に闘うつもりですからね」

★ ★ ★


総合格闘技には関節技もある。ソースとした英文記事には言及がないが、肘と膝の関節がないメイナードさんには、関節技を絶対にかけられないというアドバンテージもあるのではないだろうか?

むろん、彼自身も相手の手足を握る指を有していないため、相手に関節技をかけることはできないのではないかと思われる。つまり、関節技が決して発生しない試合になるだろう。

だが、そもそもメイナードさんは、どのような技で相手を打ち負かすつもりなのだろうか? グラウンドからスタンドの相手に打撃を浴びせて相手が倒れたとしても、相手がKOされない限りグラウンドでの闘いが続く。両者グラウンドとなれば、もう打撃技はお互いに使えなくなる。この点に関しても、ソース記事には言及がない。




■ Source: A fighter's ultimate challenge

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この記事へのコメント

1. Posted by ー   2007年08月28日 11:02
参戦したら上位行くでしょ。
欠損面は肘・膝だし、相手は打撃が使えないんだから。逆にグランドから90キロで膝が出るなんて下手したら相手の足折れる。
一般的にはレスリングより総合の方が強くなれるけど、彼の場合グランドしかやらないから逆に…
挑戦とはあまり言えないなぁ。まぁ健常者に勝てる事を主張したいんだろうけど。
2. Posted by 赤   2007年08月28日 17:20
意欲は素晴らしいけれど、個体として対等ではないですもんね・・・
本人の頑張りも沢山あると思いますが、多くの
人や医療のお陰で今の身体を得ているだろうに、
>僕に反対している人たちはルールを理解していないだけだし
というのはちょいと我儘な気もします。
3. Posted by あお   2007年08月28日 21:28
健常者に勝てることを主張したいんじゃなくて
自分も健常者と変わらないんだ、
という事を主張したいんじゃないですかね?
4. Posted by     2007年08月29日 01:42
みんなで上手く負けてあげれば彼も満足。
5. Posted by Y   2007年08月29日 11:59
しかしながら、健常者と身障者の壁は厚い。

綺麗言葉では現実は中々厳しい

身障者の方々の、
その精神は認めます。
がしかしだからと言って、やはり「身障者」と「健全者」は次元違う話

格闘技にハンデをつけるのも有り得ない話でしょう。


しかし、冷たい意味を込めた健全者と身障者の違いをコメントしているのではありません。

みんな平等です。
言いたい事わかってくれたら幸
6. Posted by FudoMyoho   2007年09月02日 09:04
記事内で言及されているように、健常者の対戦相手にはメリットがない。勝っても自慢にならないし、負ければ恥である。

みんなが納得できる試合を実現するには次の方法が考えられます。

(1)同程度の障害がある選手が対戦相手する。
(2)健常者が手足をバンテージで固定して同程度に不自由な状態にして対戦する。
7. Posted by すでにいるよ   2007年09月02日 09:28
日本かヨーロッパならスグ出れるだろうに。
プロレスならザックゴーウェンとかすでに出ている。片足のムーンサルトは必見。
http://blog.livedoor.jp/good_night/archives/2005-08.html

キックボクシングではキム・ソンギやバクスター・ハンビーが片腕。ハンビーにいたってはWMTFのSウェルター級のチャンプ。下の一見シュールに見える右グローブがミドルキック防御に物凄く効果があったりする。
http://www.boutreview.com/data/img/1120313540.jpg
8. Posted by ダナ   2008年02月06日 10:57
ちょwwwジョンマッカーシーなにやってんだよwwww

UFCでたら死んじゃうよ
9. Posted by maro   2008年02月10日 08:48
本人がやりたいって言ってるんだからやらせればいいのに。
余計なお世話で自分の可能性が潰される悔しさは良く解る。
「何が起こっても文句は言わない」とか誓約書書かせればいいじゃない。
この人なら喜んでサインするでしょ。
10. Posted by あ   2008年05月09日 03:05
勝つ勝たないは別にして
両手両足欠損しているのにここまで戦えるってのがすごいな。
11. Posted by いやいや   2009年10月06日 13:47
>本人がやりたいって言ってるんだからやらせればいいのに。
>余計なお世話で自分の可能性が潰される悔しさは良く解る。
当事者間は契約でどうとでもなっても
何かあったときになんで上げたというような世間的な批判を受けたり安全配慮義務違反を問われるのは団体やコミッション
余計なお世話ではなく彼らには彼らの事情があって反対しているということ
12. Posted by DD   2010年01月20日 00:47
5 >総合格闘技には関節技もある。ソースとした英文記事には言及がないが、肘と膝の関節がないメイナードさんには、関節技を絶対にかけられないというアドバンテージもあるのではないだろうか?

 ぜんぜん分からない自分の意見だけど、肩の関節はあるし、それに首関節技、腰関節技とかも極められるんじゃないかな。
ていうか打撃ダメ、伏せてる(投げられない?)上、胴着も着てなくて、間接技も無しだったら、どう攻めればいいのか迷いそう。
13. Posted by     2010年11月24日 07:14
*7
障害者様マジ天使(笑)な日本で障害者様を殴る蹴るなんて出来るわけねーだろwww
たとえコイツみたいに本人がいくら希望しようが、マスゴミやキチガイ団体が黙っちゃいない

そういう意味では一本足のプロレスがTVで堂々と流れてた様に、障害者のメディア露出に関してアメリカはもの凄い寛容な国
そのアメリカでさえダメだって言われるって事は、こんなカタワの総合参戦は常考して無理だって事
知ったかで格ヲタ気取るのはいいけどまずは常識を身に付けようなwwwww

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