2007年08月22日

事故で脳の半分が破壊されて知的能力を失った青年が奇跡的に回復し、知能テストで稀に見る高得点を叩き出す


2005年7月のある日のこと、中国江蘇(チャンスー)省在住のワン・イーカイ君という19歳の少年が自宅近くの路上で突然の悲劇に見舞われた。ワン君は、同省西南大学への合格を果たしたばかりだった。9月から始まる大学生活 ― 前途洋洋たる未来が彼を待ち受けているはずだった。なのに、1台の自動車が無残にも彼を跳ね飛ばし、彼の頭蓋骨と大脳を破壊した。
瀕死の重傷を負ったワン君は地元の病院に搬送され、緊急手術を受けた。1回の手術では済まなかった。入院後1週間にわたり、連日のように手術が行われた。そして医師たちは、ワン君の家族に告げた。彼の右脳は修復不能なまでに破壊されてしまっている、と。

ワン君の母親は、彼の病室に泊まりこみ寝ずの番を続けた。彼女自身、看護師の仕事をしていたが、いつなんどき息子の容態が急変するやもしれぬと心配でたまらず、一睡もせずにベッド脇でワン君の回復を祈り続けた。だが、母親は体力の消耗が激しく、結局、病院の医師が強制的に彼女に睡眠剤を注射して眠らせることを余儀なくされた。

母親は、そのときのことをこう回想する。「息子の傍を離れる気にはなれなかったのです。健康で幸せそうなよその子が道を歩いているのを見ると、泣き叫びたい気持ちになったものです。

「でも、希望を捨てたりなんかしませんでした。息子はきっと治るんだと信じていました」

だが、ワン君はいつまでも意識不明の状態が続いた。およそ1ヶ月が経ったある日のこと、ワン君はついに目を覚ます。母親と父親は意識を回復したワン君を見て、たいそう喜んだ。・・・だが、ワン君は二人が自分の両親であることさえ認識できなかった。ほとんどの記憶が失われてしまっていた。

頭部に強い衝撃を受け、さらに右脳の大半の機能を失ったことにより、ワン君の知能は回復不能なまでに低下してしまったかに見えた。医師たちも、彼の症状を「認知症」と呼んだ。自分の身の回りのこともできず、両親や病院のスタッフと上手くコミュニケーションを取ることもままならない。

だが、家族はあきらめなかった。事故から2ヵ月後の2005年9月(それは本来なら、ワン君が西南大学に入学していたはずの月でもあった)、ワン君は上海の崋山病院に転院し、さらなる手術とリハビリを受けることになった。

そして、2006年が明けて間もないある日のこと、ワン君は目を覚ますと、つぶやくようなかすかな声ではあったが、はっきりとした言葉を母に投げかける。「体中が痛くてたまらないよ、お母さん」

その日を境にワン君は記憶を徐々に取り戻していった。

医師たちがワン君をCTスキャンにかけたところ、彼の右脳の実に75パーセントの機能が喪失していることが判明した。この脳損傷により、ワン君の聴力、短期記憶、情動、空間感覚に障害が生じていた。

鍼療法により神経線維を刺激する治療が行われることになった。

母親は、いつもワン君に付き添い、何か効果がありそうなことを積極的に試すようになった。たとえば、数の概念を強化するためにワン君とトランプゲームをしたり、家族や友人の電話番号をワン君に暗誦させるなどして、リハビリを続けた。

そして、悲劇的な事故から2年が経過した今、ワン君はまだ頭蓋骨の中にチタン合金を埋め込まれている。大学にも、まだ出席できずにいる。だが、彼の知的能力は奇跡的な回復を見せている。5回の大脳手術を受け、右脳の75パーセントを失ったワン君の現在の知能は、一般的なレベルをはるかに超えている。

中国で広く採用されているWAIS-RC式知能検査で、ワン君の言語能力は140点満点中、なんと138点をマークした。100点から120点というのが一般人の平均的スコアであり、138点というのは稀に見るハイスコアなのだ。

また演算能力においても、140点満点中、119点をマークしている。ワン君は脳損傷の影響で視界の一部が失われている。その障害がなければ、もっと高いスコアを叩き出したに違いない、と医師たちは見ている。

ワン君は、自分のブログにこう書いている。「過去2年間、尿意や便意を制御できない毎日が続いている。でも、ベッドはいつも清潔で暖かい。昼も夜も、母がベッドサイドにいて、僕の世話をしてくれているからだ。母が世話をしてくれて勇気付けてくれるからこそ、僕はやって行けている。生まれ変わっても、また母の子として生まれたいと切に願う」

脳機能の専門家ジャン・チョンリー氏はワン君の症状について、こうコメントしている。「この若者にとって不幸中の幸いだったのは、言語能力と論理思考を司る左脳が損傷を免れたという事実でしょう。このような場合は、それぞれの脳細胞を再接続してやれば、知能の回復が望めるのです」

本件に限らず、脳が左右どちらかの半分しかない人のことは、ときどき話題になっている。たとえば、日本テレビの“ザ!世界仰天ニュース”でも「脳が半分しかない女子生徒」のことが取り上げられたことがある。この女子生徒もワン君と同じく右脳を失っているが、事故で損傷したのではなく、病気治療のために外科的に切除されたのである。

事故で頭部全体に強い打撃を受けた場合は、右脳と左脳の両方に損傷が及ぶことが多いはずだ。ワン君のように、右脳だけが損傷し、左脳は一切の損傷を免れた・・・という事例は珍しいのではないだろうか?

本件を伝えている上海日報英語版の記事では、知能テストで稀に見るハイスコアを記録したワン君のことを“super intelligent”と形容している。ただし、ソースには明記されていないが、ワン君は右脳を失ったせいで、左半身が麻痺しているはず。まだまだ前途多難なリハビリが続くと思われるが、なんとか頑張って念願の大学生活を開始してもらいたいものである。




■ Source: Half brain dead, but super intelligent

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この記事へのコメント

1. Posted by さち   2007年08月23日 01:40
今月からこのブログにほぼ日参していますが、思い切ってコメントしてみました。管理人さんの選ぶ記事はどれも常識を越えていてとても興味深いです。今後の更新も楽しみにしております(^_^)/
2. Posted by NANASI   2007年08月25日 00:33
2 いつも読ましていただいてます
最初の方は、『右脳の75%を失った〜』と書いてありますが本文の途中で、『左脳の75%を失った〜』になっていましたので少し気になりコメントしました。
3. Posted by miccckey   2007年08月25日 00:37
>NANASIさん

ご指摘ありがとうございます。さっそく訂正しておきました。
4. Posted by ー   2007年08月27日 02:15
以前にも脳関係でコメントさせていただきましたが、非常に興味深いですね。
言語、計算部分を司る左脳が助かったのは不幸中の幸いですね。
思考を司る前頭葉も比較的無事だったのかも知れませんね。
CT画像などがソースにないのが残念ですね。
高次機能障害や空間認識能力などにどのような影響が出るのかに非常に興味がありますね。
なんにせよ回復してほしいものです。

では、また珍しいサイエンスニュースなど期待しております。
5. Posted by additional reading   2014年05月12日 06:07
e-hookah なんでも評点:事故で脳の半分が破壊されて知的能力を失った青年が奇跡的に回復し、知能テストで稀に見る高得点を叩き出す

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