なんでも評点:ペッパーランチ事件第一報以来メディアが沈黙を保っていることに理解を示してみる

2007年05月20日

ペッパーランチ事件第一報以来メディアが沈黙を保っていることに理解を示してみる

こうして海外の珍ニュースを取り上げるブログを続けてきたわけだが、同じようなことが日本で起きてもメディアが詳しく伝えることはないだろうな・・・と思う話がよくある。日本では、とりわけ性に関するタブーに触れたり、人間倫理の根底を揺るがすような事件や出来事が、かなりオブラートに包んだ状態でしか報道されない傾向がある（「文春」や「新潮」などの週刊誌は別として）。

それに対し、英語メディアの報道は、事件の内容がストレートに描写される傾向にある。性犯罪に関する報道なんかでも、日本語の報道に比べると、かなり克明に詳細が記されていることが多い。

大阪心斎橋のステーキチェーン店で店長と店員が閉店間際に女性客を拉致し、泉佐野のガレージに連れ込んでレイプしたとされる今回の一件について、その後、続報がほとんど出てこないのには、何か裏があるのだろうと思われる。

２ちゃんねるを見ていると、“闇の勢力”とか“組織的圧力”に結びつけようとする書き込みが多い。その可能性も完全には否定できないが、短絡的過ぎる印象がぬぐえない。

「不二家事件のときはあれだけ厳しく追及したのに」とメディアに不信感をあらわにする人も多いようだが、不二家の場合は組織ぐるみの偽装であることがはっきりしていた。今回のレイプ事件は、今のところ1店長と1従業員の個人的犯行と見るほかない。個人的犯行でない可能性があるとしても、はっきり確証が得られるまでメディアが触れられる話ではないと思う。下手に煽り立てれば、ペッパーフードサービス社に一切の責任がなくても、同社の風評と株価に大きく響くのは必至である。

また、自社のチェーン店の店長（委託経営）と従業員が凶悪犯罪を犯したのに他店の営業を続けるのはおかしい・・・という指摘もあるが、はたしてどうか？

たとえばの話だが、終着駅を残すのみの最終電車車両内に女性客が1人しか乗っていない状況で、車掌と運転士が共謀し、そのまま車庫に直行して女性をレイプしたとしたらどうだろう？その電鉄会社全体で列車の運行を中止しろと主張する人は、ほとんどいないはずである。あるいは警官が女性をレイプしたからといって、警察に活動を中止しろとは誰も言わないはずである。

事件のことが公表される前に店舗の看板が消されるなど、ペッパーフードサービス側の対応に不可思議な点も多い。もしかしたら、何かズルっこいことをしていたかもしれない。だが、企業なら、どこでも自社に都合の悪いことはもみ消そうとするものである。ズルっこいことをしたからといって、今回の事件に組織的な裏があり、ペッパーフードサービスという企業がその裏事情に関わっていたと決め付けるのは、あまりにも短絡的過ぎる。

ただし、心斎橋店の立地条件と現況について報告した記事でも書いたように、この事件に何か裏があるのは間違いないというのが私の個人的印象である。冒頭に書いたように、日本のメディアが最も避けて通ってきたような残虐性を帯びた何かがありそうな気がしている。

とはいえ、メディアにはメディアの事情、警察には警察の事情があるのだと理解を示したい、というのが私個人のスタンスである。

そもそも第一報自体がスクープであったと思われ、本来なら、もっと事実関係がはっきりした段階で報じられるはずだった可能性がある。だとしたら、事件そのものが永遠に葬り去られる可能性もあったと見る向きもあろうが、現に容疑者が逮捕されているのだから、いずれ裁判が行われるわけで、闇に消えることはありえない。しかも、単独での強姦ではなく輪姦であり、しかも拉致と強盗の容疑もあるため親告罪にもあたらず、被害者が訴えを取り下げてうやむやになる可能性もない。

しかし、今回の事件は、あまりにも意表を突き過ぎている。２ちゃんねるなどでは「いかにも大阪らしい事件」などと揶揄する人が多いが、とんでもない。先の記事でも書いたように、問題のチェーン店は大阪ミナミでも特に治安がよく、女性に人気のある一画に立地していた。

さらに、店自体は、社会的信用の高い一部上場企業が運営するチェーン店である。被害者の女性が深夜過ぎに1人で食事をしていたこと自体不思議とする書き込みも２ちゃんねるで見られたが、何一つ不思議なことはない。

そんな状況で店側の人間が毒牙を剥いたのである。これほど、意表を突く犯罪はそうそう聞いたことがない。

「大阪だから、さもありなん」などと寝ぼけたことを言う人もいまだにいそうだが、大阪だけの問題ではないだろう。同じことが必ずまた起きるとは言わない。だが、別に大阪でなくても、また、ペッパーフードサービス以外の優良企業の経営店であっても、店側の人間があなたに凶暴な牙を剥かないという保証はもうなくなった・・・ということになりそうだ。

第一報がフライング気味であったことにメディアがすぐに気づいて報道規制を敷いたところで、もはやペッパーランチの店長と店員が女性客を拉致してレイプしたことは（少なくともネットユーザーの間では）知れ渡っている。ある意味、社会不安が生じたと見ることもできる。その社会不安に対して、今のところメディアは何の対応も示していない。

続報を伝えることがはばかられるのなら、事実関係が明らかになるまで報道を自粛する旨を発表すべきではないだろうか？そういう社会的説明責任は問われないものなのだろうか？もっともNHKのように、本件を今まで一度たりとも伝えていないメディアがあったりもするわけで、ネット上では圧力説の火に油を注ぐ結果になっている。

とはいえ、メディアに公平性を期待するのが、そもそもは幻想である。警察についても然り。メディアや警察の現場で働いている人たちは、みなサラリーマンである。個人の義憤だけで行動できる立場にはないし、結局のところ、上層部の意向に背かず出世できればそれに越したことはないだろう。

かといって、この事件について“ブロガー”が独自取材して記事を起こすなんてことが果たしてできるだろうか？それこそ、２ちゃんねるで囁かれている（いや囁くにしては声がでかすぎるわけだが）ように“闇の勢力”が関与しているのだったら“消される”おそれさえあるわけだ。

寂しい話かもしれないが、つまるところ「君子危うきに近寄らず」で行くのが一番利口だということになりそうだ。2つの意味がある。1つは、ここまでメディアが避けるような話の真相にはあまり深入りしない方が身のためだろうということ。もう１つは、安全と思われる一画に立地していて、信用できる企業が経営している店などでも安心しきってはならない、ということ。特に女性の方には注意してほしい。

そうそう、上記の文に対する自己評点は下記のとおりである。私は今、奥歯の詰め物が取れて食事をするときに不自由な状況に陥っているのだが、上の文は奥歯に歯が挟まったような物言いである。

歯切れ悪さ９

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【続編】ペッパーランチ事件の裏に闇があるとして、ネットはその闇にどこまで迫れるのか？

【余談】

先の記事で触れたように、私はヨハネスブルグで暮らしたことがある。あるとき、ヨハネスブルグの路上で暴漢数名に不意打ちされ、蛮刀で頚動脈をかき切られそうになった。金品を奪われ、現地の警察に被害届を出したが、犯人が捕まるとはとうてい期待できなかった。むしろ、事件直後に現場を車で通りがかった白人のおばちゃんに「銃を持ってるから、今から奴らを撃ちに行こう」といわれたときに、すぐに車に飛び乗っていればよかった、と後悔したほどである。

はっきりいってヨハネスブルグは法治都市ではなかった。何らかの犯罪の被害に遭って、加害者を法で裁いてもらえるのは、よほど運がよかった場合だけである。正当防衛が認められそうな状況であれば、その場で相手に制裁を加えるのが最も確実な方法ということになる。実際、私が現地にいた当時、武道の使い手の日本人が暴漢に反撃し、相手に致命傷を与えたことがあったが、あっさり正当防衛が認められた。

だが、いくら大阪の治安が悪いといっても、法治国家の一部であることに変わりはない。だいいち、ヨハネスブルグと比べると、凶悪犯罪発生率など知れたものである。警官以外で銃を所持している者たちもわずかにいるようだが、大阪で発砲現場に出くわしたことは、まだ一度しかない。ヨハネスブルグでは、銃火が花火代わりに夜の闇に輝いていたりしたものだが。