G- なんでも評点:人間の生死をコンピュータに決定させる研究が進む ― 米国国立衛生研究所

2007年04月06日

人間の生死をコンピュータに決定させる研究が進む ― 米国国立衛生研究所


米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)臨床生命倫理部のデイビッド・ウェンドラー氏らは、医療現場における極めて重大な判断をコンピュータ・プログラムに任せてはどうかと提案している。多少語弊のある言い方をすれば、人の生死をコンピュータが決定することになる。
ある人が重い卒中に倒れて意識不明になった場合を考えてみよう。何ヶ月も昏睡が続き、呼吸器なしに生命を維持できない状態に陥っている。この状態で心臓が停止したとき、その患者の命の火が消えるに任せればいいのか、それとも蘇生術を施すのか。このような場合に蘇生術が成功したとしても、その人が意識を取り戻し、元通りの状態まで回復できる見込みは皆無に等しい。

インフォームド・コンセントを重視している米国の病院では、心肺停止に陥る可能性のある患者に対しては、事前に、心肺蘇生処置について詳しく説明し、延命治療を希望するかどうかを確認することになっている。しかし、上記のように、突然に昏睡状態に陥った患者の場合は、そのような事前の確認が取れていない。

メルクマニュアル家庭版の「代理人による意思決定」の項には、次のように記されている。

患者が意思決定不能の状態になり、事前指示書も存在しない場合、他のだれか、あるいは複数の人々が意思決定を行わなければなりません。米国では、州法により、医療に関する意思決定者として任命された人が代理人になる場合もあれば、血縁者や、たまたま対応が可能な親しい友人などが非公式に指名される場合もあります。

たいていの病院や医師は、患者の配偶者、兄弟姉妹、成人した子供の合意を得られればケアを提供します。ときには、緊急時に連絡が取れればよしとして、遠い親戚や付き合いのない親戚の合意でもケアを行います。しかし多くの州では、裁判所から任命されない限り、このような親戚に患者の代理として合意する法的権利はありません。多くの病院は、こういった親戚を代理に選ぶことを制限し、親しい友人も対象から除外します。しかし、遠い親戚やまったく無関係の人の判断よりは、近親者や親しい友人の判断に応じた方が現実的で、倫理的にも妥当といえるでしょう。家族や親しい友人がおらず、一人ぼっちで入院している人は、裁判所が任命した後見人を頼ることになります。

【引用元URL】http://mmh.banyu.co.jp/mmhe2j/sec01/ch009/ch009f.html


ウェンドラー氏らが提案しているコンピュータ・プログラムとは、上記のような代理人による意思決定に代わるもの。彼らは、患者の文化的バックグラウンドや信仰のレベルなどといったファクターに基づいて、患者に意思決定能力があったとしたら、死と延命のどちらを望んだかを推測する数学モデル(アルゴリズム)を開発しているのである。

そのアルゴリズムの決定精度は、指名代理人による決定の正確さと変わりないレベルになるという。ウェンドラー氏によれば、アルゴリズムに改良を加えていくことで、代理人による意思決定を上回る精度を出せることは確実だという。

そもそもウェンドラー氏らがこのようなアルゴリズムを提案した背景には、151通りの仮想シナリオに基づくロール・プレイング実験を実施したところ、代理人による意思決定の“正解率”が68パーセントにとどまった、という事実がある。

この実験では、2人ずつ2,595組の被験者に患者役と代理人役を演じてもらった。それぞれの仮想シナリオにおいて、延命処置を望むか、拒否するかを患者役と代理人役にそれぞれ個別に答えさせ、両者の答えが一致しているか、食い違っているかを調べた。患者役を演じた人たちには、実際に病気にかかっている患者と健常者の両方が含まれていたが、前者の場合も現在の容態が不安定でない患者だけで占められていた。

当然のことながら、患者の生死をコンピュータに決定させるという案に対しては、反論が寄せられている。ワシントン大学(セントルイス)で医療法学/倫理学の教鞭をとっているレベッカ・ドレッサー教授は、人が実際に死に直面したときに何を望むかをアルゴリズムで決定しようとしても、ほとんど的外れになる、と指摘している。彼女によれば、死に直面した患者の多くは、代理人に全幅の信頼を寄せるのが最善だと信じるようになる。

また、ワシントン郊外の病院で終末期医療に携わっているジョアン・リン医師も、“精度”で計ることはできない、と異議を唱えている。「多くの患者にとっては、医師や裁判官やアルゴリズムが下した“正しい判断”よりも、身内の人が下した“間違った判断”に身を委ねる方が本望でしょうね」

さて、上記の“アルゴリズム”に関する記述は、わが国で近頃何かと物議をかもしているワシントン・ポストがソースである。掲載されたのは3月19日と、少し時間が経っている。このアルゴリズムのことは今日に至るまで日本語メディアでは話題にされていないようなので取り上げることにした。

このアルゴリズム、言ってみれば、最も難しい判断を自動化してしまおうという発想でもある。アメリカ合衆国を今日まで繁栄させてきた最も大きな原動力の1つは、“自動化”だろう(かつては自動車産業がその花形だったが、今では米国のソフトウェアが世界を支配している)。

日本の某新聞だと、次のように表現したりするのかもしれない。「自動化に生き、自動化に死す。そんな未来がちらつき始めている」。

その昔、SF小説などで描かれた未来にも、人の生死をコンピュータが決定するみたいな話がたくさんあった。上記のアルゴリズムは、あくまで意思決定能力を失った患者に代わって、延命処置の有無を決定するものにすぎない。しかも、実現される見込みはかなり薄いだろう。




■ Information source: Medical end-of-life decisions analyzed
Role-playing suggests loved ones make wrong choice for patient a third of the time


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1. 気になるニュース5  [ 癒しTube ]   2007年04月07日 16:55
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2. 神楽書堂‐ニュースログ‐  [ 神楽書堂‐ニュースログ‐ ]   2007年04月07日 17:38

この記事へのコメント

1. Posted by 鱈   2007年04月06日 23:09
そのアルゴリズムの中身が怪しい。文化的バックグラウンドや信仰のレベルなどといったファクターに基づいて、、、とあるけれど、たとえば仏教徒(○○宗)であっても普段は宗教と全くかかわりのない生活をしている平均的日本人は、死と延命のどちらを望むと判定されるの。そんなことどうやって決めるんだろ。
不可解度9■■■■■■■■■□
2. Posted by ああ   2007年04月07日 13:50
何このデスティニープラン
3. Posted by ボブ   2007年04月12日 02:05
コンピュータって言っても
簡単に言ってしまえば多数決じゃね?
少数派の意見は切り捨てて正解率を最高にするんでしょ。

決定木とかのアルゴリズムで適当に作っちゃうんだろうな。
4. Posted by ああ   2008年03月24日 18:22
延命治療を「望む」か「拒否」するかってさ、結局どちらか一つの2分の1。

大数の法則を考慮すれば68%って数字は当然の結果では?
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