2007年04月03日
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進化生物学者たちによれば、われわれ人類は、より魅力的な異性を子作りのパートナーとして選ぶようにプログラミングされている。そのことを裏付けるために、さまざまな実験が行われており、当ブログでもときどき取り上げている(本稿末尾の「関連記事」参照)。
“魅力的”な個体ほど、パートナーを得るチャンスが大きく、それだけ多く子孫を残せることになる。これを“性選択”、“雌雄淘汰”、または“性淘汰”と呼ぶ。ヒトの場合も、簡単に言えば美男美女ほど多くの子孫を残せることになる。ダーウィンによると、女性が最も魅力的な男性を選択すれば、その遺伝子がやがて“ありふれた遺伝子”として広まることになる。
このメカニズムが長い歳月を通じて脈々と作用してきたのだとすれば、美男美女の遺伝子は“ありふれた”ものとなり、世の中は美男美女だらけになっているはずだ。だが、美男美女は、いまだに少数派である。
大昔に比べて全体的なレベルが上がり、その中でさらに高いレベルの美を持ち合わせる人たちが美男美女と目されている・・・とは言えないだろう。「現代人の頭と顔は1万年前の人類に比べて30パーセントも小型化している」とする研究もあるが(本稿末尾の「関連記事」参照)、顔が小さいことだけが美の条件とはならない。
むろん、人類の場合、パートナーを得て子供を作るに当たっては、純粋に生物学的なメカニズムだけが働いているわけではない。カブトムシの場合なら、ツノの大きいオスがメスに選ばれるので、ツノの大きい子孫が増えていく。しかし、人類の場合は社会的要因が大きい。容姿だけで相手を選ぶという状況はまずないし、閉じた社会なら、数少ない候補から相手を選ばなければ、その社会の人口を維持できなくなる。
その反面、容姿に優れた人ほど社会的に優遇されやすいという明らかな傾向がある。総合的に考えれば、容姿の優れた人(あるいは知能の高い人)ほど、子孫を残せる可能性が高くなるはずである。
だとしたら、やはり美男美女が多くの子孫を残していることになる。にもかかわらず、美男美女は少数派である。
英国ニューカッスル大学のマリオン・ピートリー教授とギルバート・ロバート博士が唱える新説によると、優れた遺伝子を持つ男女(簡単に言えば“美男美女”)がいくら多くの子孫を残しても、子孫が美男美女になるのを阻むメカニズムが働いているという。
“雌雄淘汰”によって、より魅力的なパートナーが選ばれるなら、同じ形質を受け継ぐ子孫が増える・・・というのがダーウィン説の基本だが、実際には異なるケースがあり(人類の場合を含めて)、“レック・パラドックス(lek paradox)”と呼ばれてきた。ダーウィンに批判的な学者は、これを根拠にダーウィン説には欠陥があると主張してきた。
これに対し、ピートリー教授とロバート博士は、“雌雄淘汰”が逆に遺伝子の多様性を引き起こすのではないかと考えている。優れた遺伝子を引き継ぐはずの子孫にも、遺伝子の突然変異が生じる。“雌雄淘汰”が進むと、突然変異の中でも、DNA修復系に影響を及ぼす突然変異が発生しやすくなるという。
このような変異が生じた人の場合、DNA修復系が十分に機能しなくなり、せっかく優れた遺伝子を持つ両親(または先祖)からDNAを引き継いでも、DNAの損傷をうまく修復できない。このため、損傷したDNAがそのまま子孫に引き継がれることになり、多様性が拡大していく。
つまり、せっかく美男美女や高学歴、あるいはスポーツ万能など、優れた血筋に生まれても、そのDNAが忠実に受け継がれているとは限らないことになる。
ピートリー教授は、こう述べている。「過去10年間の研究により、遺伝的変異/多様性に関して観察されることがらと高い合致性を示すモデルを確立できた。これは、われわれの理論の正しさを示すものと考えている。性選択は、従来考えられていたのとは逆に、遺伝的多様性を促進しうるものであることが明らかになった」
この新説は、遺伝科学ジャーナル誌“Heredity”で発表されている(英文全体はこちら)が、本稿のうち、この新説に関する記述は、あくまで英国BBC Newsの記事に基づいている。
簡単にまとめると、美男美女の血を引き継いでいても、数世代先まで行くと、その血筋の中でだんだんと美男美女の比率が下がってくる。突然変異のせいである。・・・ということになるだろう。
美男美女(あるいは、その他の優れた能力を持つ男女)ほどパートナーに恵まれやすいのに世の中が美男美女だらけにならないのは、これが理由かもしれない。
もっとも、前半で書いたように、“より魅力的な異性を選ぶ”という性淘汰自体が人類の間ではさほど支配的に作用していないと見る方が妥当な気もする。相手の容姿や能力に関しては妥協して夫婦になることが多いだろうし、外見や能力よりハートを大事にする人も多いだろう。
【関連記事】
このメカニズムが長い歳月を通じて脈々と作用してきたのだとすれば、美男美女の遺伝子は“ありふれた”ものとなり、世の中は美男美女だらけになっているはずだ。だが、美男美女は、いまだに少数派である。
大昔に比べて全体的なレベルが上がり、その中でさらに高いレベルの美を持ち合わせる人たちが美男美女と目されている・・・とは言えないだろう。「現代人の頭と顔は1万年前の人類に比べて30パーセントも小型化している」とする研究もあるが(本稿末尾の「関連記事」参照)、顔が小さいことだけが美の条件とはならない。
むろん、人類の場合、パートナーを得て子供を作るに当たっては、純粋に生物学的なメカニズムだけが働いているわけではない。カブトムシの場合なら、ツノの大きいオスがメスに選ばれるので、ツノの大きい子孫が増えていく。しかし、人類の場合は社会的要因が大きい。容姿だけで相手を選ぶという状況はまずないし、閉じた社会なら、数少ない候補から相手を選ばなければ、その社会の人口を維持できなくなる。
その反面、容姿に優れた人ほど社会的に優遇されやすいという明らかな傾向がある。総合的に考えれば、容姿の優れた人(あるいは知能の高い人)ほど、子孫を残せる可能性が高くなるはずである。
だとしたら、やはり美男美女が多くの子孫を残していることになる。にもかかわらず、美男美女は少数派である。
注:専門的には“異性を選ぶ”のではなく、“メス(女性)がオス(男性)を選ぶ”と表現するのが正しい。しかし、本稿はあくまで話題性の観点からのみ下記の新説に言及しているので、あえて「男女双方が異性を選ぶ」というニュアンスにしている。
英国ニューカッスル大学のマリオン・ピートリー教授とギルバート・ロバート博士が唱える新説によると、優れた遺伝子を持つ男女(簡単に言えば“美男美女”)がいくら多くの子孫を残しても、子孫が美男美女になるのを阻むメカニズムが働いているという。
“雌雄淘汰”によって、より魅力的なパートナーが選ばれるなら、同じ形質を受け継ぐ子孫が増える・・・というのがダーウィン説の基本だが、実際には異なるケースがあり(人類の場合を含めて)、“レック・パラドックス(lek paradox)”と呼ばれてきた。ダーウィンに批判的な学者は、これを根拠にダーウィン説には欠陥があると主張してきた。
これに対し、ピートリー教授とロバート博士は、“雌雄淘汰”が逆に遺伝子の多様性を引き起こすのではないかと考えている。優れた遺伝子を引き継ぐはずの子孫にも、遺伝子の突然変異が生じる。“雌雄淘汰”が進むと、突然変異の中でも、DNA修復系に影響を及ぼす突然変異が発生しやすくなるという。
このような変異が生じた人の場合、DNA修復系が十分に機能しなくなり、せっかく優れた遺伝子を持つ両親(または先祖)からDNAを引き継いでも、DNAの損傷をうまく修復できない。このため、損傷したDNAがそのまま子孫に引き継がれることになり、多様性が拡大していく。
つまり、せっかく美男美女や高学歴、あるいはスポーツ万能など、優れた血筋に生まれても、そのDNAが忠実に受け継がれているとは限らないことになる。
ピートリー教授は、こう述べている。「過去10年間の研究により、遺伝的変異/多様性に関して観察されることがらと高い合致性を示すモデルを確立できた。これは、われわれの理論の正しさを示すものと考えている。性選択は、従来考えられていたのとは逆に、遺伝的多様性を促進しうるものであることが明らかになった」
この新説は、遺伝科学ジャーナル誌“Heredity”で発表されている(英文全体はこちら)が、本稿のうち、この新説に関する記述は、あくまで英国BBC Newsの記事に基づいている。
簡単にまとめると、美男美女の血を引き継いでいても、数世代先まで行くと、その血筋の中でだんだんと美男美女の比率が下がってくる。突然変異のせいである。・・・ということになるだろう。
美男美女(あるいは、その他の優れた能力を持つ男女)ほどパートナーに恵まれやすいのに世の中が美男美女だらけにならないのは、これが理由かもしれない。
もっとも、前半で書いたように、“より魅力的な異性を選ぶ”という性淘汰自体が人類の間ではさほど支配的に作用していないと見る方が妥当な気もする。相手の容姿や能力に関しては妥協して夫婦になることが多いだろうし、外見や能力よりハートを大事にする人も多いだろう。
お知らせ:当ブログでは、2004年に開始した当初から記事に“評点”なるものをつけてきましたが、いろいろと足かせになることも多く、本稿以降、評点を廃止することにしました。ブログ名は今後も「なんでも評点」のままで続けますが、カテゴリに関しては、今後、大幅に再構成する予定です。
【関連記事】
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この記事へのコメント
1. Posted by 俺
2007年04月03日 21:41
いつも楽しく読ませていただいております。今回のネタで“評点”をやめるとのことでとても残念に思っております。確かにネタの内容によっては当てはまらない評点もあり、足かせとなるのもわからないでもないですが、そんな無理矢理付けた感のある評点にこそ面白みを感じておりました。少数とはいえ、そういった評点を楽しんでいる読者もいたということを忘れないでもらいたいです。 筆者様が決められたことなので無理に評点を続けろとはいいませんが・・・
どちらにせよこれからも楽しく読ませていただきたいと思います。応援しております。長文失礼致しました。
どちらにせよこれからも楽しく読ませていただきたいと思います。応援しております。長文失礼致しました。
2. Posted by an
2007年04月03日 23:19
評点やめてしまうんですね。ちょっと残念です。
いつも最後に評点がついていて、それを見るのを楽しみにしてました。
残念ですがこれからも記事で楽しませていただきます!
いつも最後に評点がついていて、それを見るのを楽しみにしてました。
残念ですがこれからも記事で楽しませていただきます!
3. Posted by esper
2007年04月04日 09:43
はじめまして。いつも面白い記事をピックアップされていて興味深く拝見しておりました。
評点がなくなってしまうのは寂しいですが、これからもよろしくお願いします。
評点がなくなってしまうのは寂しいですが、これからもよろしくお願いします。
4. Posted by 鱈
2007年04月04日 10:09
動物と比べるのは些か不適であろうが、しかし。たとえば足の速さというただ1つの目的のために、300年以上も人為的な交配を繰り返してきたサラブレッドはどうだろう。確かに競走能力は高くなったが、ひきかえに神経過敏で骨折しやすい特異な動物になってしまった。馬という種の幸福に利するところあるのかどうかはさておき。かえりみて人間社会はサラブレッドもいれば駄馬も農耕馬も道産子もムスタングもハルウララも何でもあり。やっぱそうでなきゃ。。。(あ、ハルウララってサラブレッドだった)
5. Posted by sora
2007年04月04日 10:44
評点終わりで寂しいです。でもいちいち書いてらっしゃったら大変ですよね〜……。
もし評点をつけやすい、つけたい、つけたいと思われるものだけでも限定評点つけてくださったら、ファンとしてすごく嬉しいです。
いつも楽しみに拝見してます! ご負担のないよう、どうぞ末永く運営していただけますように!
もし評点をつけやすい、つけたい、つけたいと思われるものだけでも限定評点つけてくださったら、ファンとしてすごく嬉しいです。
いつも楽しみに拝見してます! ご負担のないよう、どうぞ末永く運営していただけますように!
6. Posted by cool
2007年04月04日 10:46
賛成。採点が足かせになるなら
とっとととっぱらっちゃって
OKですよね。
これからも オモロイ記事まってます。
とっとととっぱらっちゃって
OKですよね。
これからも オモロイ記事まってます。
7. Posted by
2007年04月15日 02:46
文字を大きくしてもらえるとありがたい。
8. Posted by
2007年06月17日 10:15
>>米7
ブラウザ側の設定で好きなように変更できますよ
ブラウザ側の設定で好きなように変更できますよ
9. Posted by kk
2007年07月14日 12:47
ふと思いついたのですが、
最近は美容整形が割と普及してきてますよね。
(日本ではまだそれほどという感じですが)
整形によって得られた美形というのは、
当然遺伝には影響しないわけで…。
つまり将来的には美男美女との間に子供が出来たとしても、美形でない子が生まれる率が高くなるのでは…。
なんだか少し怖くなってきました。
最近は美容整形が割と普及してきてますよね。
(日本ではまだそれほどという感じですが)
整形によって得られた美形というのは、
当然遺伝には影響しないわけで…。
つまり将来的には美男美女との間に子供が出来たとしても、美形でない子が生まれる率が高くなるのでは…。
なんだか少し怖くなってきました。
10. Posted by とおりすがり
2009年02月08日 01:45
美男、美女の基準が時代によって変わっているという可能性はないだろうか?
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