2006年11月25日

遠い異国の浜辺に流れ着く代わりに30年先の未来に届いたボトルレター


オーストラリア北東部クイーンズランド州のイェプーンという町の15キロ沖合いにグレート・ケッペルという名の島がある。世界遺産に登録されている大珊瑚礁帯グレート・バリア・リーフの一部である。教会のキャンプでこの島を訪れていた同州イプスウィチ在住のマリー・マイヤットという名の18歳の少女が青く美しい海に夢を託した。ワイン瓶に手紙を入れて流したのだ。
当ブログでボトルレターの話を取り上げるのは今回が3回目である。これまでに取り上げたのは、10歳の少年が湖に流したボトルレターが11年後(流し主がこの世を去った翌年)、偶然にも流し主の友人によって発見されたという切ない話と、6歳の少女がスコットランドの海から流したボトルレターがたった47日で地球の裏側のニュージーランドに届いたという摩訶不思議な話の2つ(リンクは本稿末尾)。

ボトルレターが海流に乗って異国の浜辺に届くような話はめったにない。たいていのボトルレターは、夢のない結末を迎える。投入された場所の近くの海岸にゴミとして打ち上げられてしまう。ボトルレターを流すのがたいてい子供や若年者であることを考えると、幼き日・若き日の夢がはかなく、かなわぬものであることを暗示するかのようである。

18歳の少女マリー・マイヤットさんがグレート・ケッペル島から流したボトルレターも、やはり例外ではなかった。しばらくは海上を漂っていたに違いないが、結局、流した場所から15キロほどしか離れていない対岸のオーストラリア本土の町イェプーン近くの浜に打ち上げられてしまった。

今年の9月、偶然にもマリーさんと同じくイプスウィチ生まれイプスウィチ育ちで、マリーさんより3つ年下のマーク・ハッチンズさんという45歳の男性が家族と一緒にその浜に釣りにやって来たときに、マリーさんのボトルを見つけた。マークさんは、いつも浜に着くと、波打ち際を散歩することにしている。その日もそうして波打ち際を歩いているとワイン瓶が目に入ったのだという。

ボトルを取り上げてみると、中に手紙らしきものが入っているのがわかった。マークさんの妻がボトルを日にかざして、手紙の文字を読み取った。手紙の日付を見て、その場にいた家族全員が驚嘆の声を上げた。確かに“1976”という数字が記されていた。30年も前に流されたボトルレターだったのだ。

手紙には、流し主の住所も書かれていた。それは、マリーさんが十代のころに住んでいた家の住所であり、現在は違う場所に住んでいるが、最終的にマークさんはマリーさんと連絡を取ることができた。

30年前に流したボトルレターを見つけたという思いがけない連絡を受けたマリーさんは、びっくり仰天してしまった。マリーさんは言う。「こんなにも年月が経ってからボトルレターが見つかったのですから、驚かない人はいません」

まだ18歳だったころの遠い記憶を呼び覚ましてくれる思い出のボトルレターとの再会を30年ぶりに果たしたことで、現在48歳のマリーさんは心癒される思いがしたと話している。マークさんとマリーさんは、以来、家族ぐるみで友達付き合いをしている。

マークさんは、ボトルが30年も経ってから見つかった理由をこう分析している。「ボトルは、浜辺に流れ着いた後、砂に埋もれてしまったのでしょう。最近、海が荒れたときにボトルが再び姿を現したに違いありません」

つまり、こういうことになる。

18歳の少女が大珊瑚礁帯の島から流したボトルレターは、やはり異国への海流に乗ることなどできず、付近の海を漂った後、スタート地点から十数キロしか離れていない対岸のオーストラリア大陸の浜辺に打ち上げられてしまった。少女が夢を託したボトルレターを開封してくれる者は久しく現れなかった。

打ち寄せる波にさらされる日々が続いた。何十日、何百日、何千日。やがて、ボトルは砂に埋もれ始めた。海が荒れるたびに、ボトルの上にさらに砂が厚く堆積していった。もはや、人目に触れることのない深さにまで埋もれてしまった。

ボトルを流した少女は、二十代になり、やがて三十路に達し、四十路に達し・・・。そうして、30年の歳月が流れたころ、海がひときわ荒れて堆積していた砂が洗い流された。ボトルは何十年ぶりかに日の目を見た。そこに、家族を連れた一人の男性が現れ、ボトルを拾い上げた。18歳の少女がそのボトルを海に流したとき15歳の少年だった彼も、30年の歳月を経て45歳になっていた。

30年という歳月は長いようでいて短い。ボトルレターは紛れもなく人工物だが、こんなふうに大自然と一体化してしまうと、30年など瞬く間。少女が流したボトルレターは、海流に乗って遠い異国の浜辺に届く代わりに、こうして30年先の未来に届くことができたのだ。

タイムカプセルを浜に埋めておいた場合と結果的にほぼ同じだが、こちらの方が驚きに満ちている。30年前を振り返ろうにも、その当時はまだ生まれていなかったという読者も多いだろうと思うが、たまには思い出の品を取り出して来て追憶に浸るのもいいかもしれない。

はかなさ8■■■■■■■■□□





■ Source: Note in a bottle makes 30-year return voyage

【関連記事】


この記事の先頭に戻る
Google
WWW を検索 評点

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 30年先の未来に届いたボトルレター 他  [ 風風書堂‐ニュースログ‐ ]   2006年11月26日 17:07
30年先の未来に届いたボトルレター 【詳細記事】 エネルギー節約についての会議中に停電、暗闇の中でも議論 【詳細記事】 食料無しで17日間、イスラエルから英国に「密航」してきた猫 【詳細記事】 おそらく世界一アダ<!-- !

この記事へのコメント

1. Posted by 読者   2006年11月25日 18:22
いい文章だなあと思って読みました。サイドバーに書いてある企画の話というのが、ますます気になるんですが・・・
2. Posted by 鱈   2006年11月25日 21:25
ソースを見ると彼女は18歳当時、意外にも学生じゃなく社会人(会計事務所の速記者)だった。今は a Queenland mother と記されているが、名前はMrs.じゃなくMsを付けている。本筋に全く関係ないが、彼女にはどんな人生の時が流れたのだろうか。山あり谷ありを連想させていいねえ。
それにしても dry facts のみの記事を材料に、こういうエントリを書き上げる筆力には毎度ながら脱帽。
3. Posted by miccckey   2006年11月27日 00:25
>読者さん

企画の話は、まだ詳しく書けない状況です。企画倒れは私の得意とするところだったりしますが・・・われながら次のように評点してお茶を濁しておかせてください。

歯切れ悪さ10■■■■■■■■■■

>鱈さん

マリーさんが18歳当時社会人(速記者)であったことを書き加えるのを忘れていました。それと、ご指摘の「Mrs.じゃなくMs」の点は私も気づいていました。マイヤットという姓は当時から変わっていないのかという点も含めて・・・

4. Posted by simply click the up coming document   2014年05月11日 14:26
e hookah pen なんでも評点:遠い異国の浜辺に流れ着く代わりに30年先の未来に届いたボトルレター
5. Posted by click the next page   2014年05月12日 06:47
electronic hookah stick なんでも評点:遠い異国の浜辺に流れ着く代わりに30年先の未来に届いたボトルレター

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔