G- なんでも評点:能天気に2万5千ボルトの高圧電線にぶら下がった22歳無職男性を10万分の1の奇跡が救う

2006年11月22日

能天気に2万5千ボルトの高圧電線にぶら下がった22歳無職男性を10万分の1の奇跡が救う


線路の上を歩道橋がまたいでいる。歩道橋の柵の向こうに電線が見える。線路を走る電車に高圧電流を供給する架線である。柵を越えてジャンプして、あの架線にぶら下がってみたい・・・という誘惑に駆られる人はめったにいない。

だが、英国スタフォードシャー州タムワース在住のシェーン・ホワイトさん(22歳無職)は、そんな誘惑に駆られてしまった。シードルとビールを飲んで、かなり酔っていたせいもある。一緒にいた若者たちは、柵からジャンプしようとするホワイトさんを止めるどころか「男なら、やって見せてくれ!」などと煽り立てる。

もし架線にぶら下がることができなければ、数メートル下の線路上に落下することになる。かといって、架線にぶら下がることができた場合は、もっと重大な危険に身をさらすことになる。架線には2万5千ボルトの電流が流れているのだから。

ホワイトさんは、柵を乗り越えてジャンプした。そして彼の身に何が起こったか? 実はホワイトさん自身、翌日になって同棲中の彼女に新聞の写真を見せられるまで、自分が何をやったかをすっかり忘れていた。つまり、線路上に転落して怪我をすることもなければ、2万5千ボルトの電流に身を焼かれることもなかったのである。

新聞の写真には、上半身裸の姿で架線にぶらさがっている彼自身の姿が写っていた。その写真は、彼がジャンプした歩道橋の近くで停車していた列車の中から乗客が撮影したものだった。その乗客によると、ホワイトさんは、そのまましばらく架線にぶら下がっていたが、風で野球帽が飛ばされると、その後を追うように架線から手を離して線路上に飛び降りたという。(注:問題の写真は、下記の2つのソース記事のどちらにも掲載されている)。

つまり、ホワイトさんは、被覆されていない2万5千ボルトの高圧電線を素手でつかんで、ぶら下がったにも関わらず、何の怪我も負わずに済んだことになる。実は、このとき別の場所でトラブルが発生したため、送電が一時的に停止されていたのである。写真を撮影した人が乗っていた電車が停車中だったのも、このためだった。

だが、ホワイトさんは、送電停止中だと知っていて架線に飛びついたわけではない。それどころか、架線が剥き出しの電線であり、高圧電流が流れているという事実さえ忘れていた。酔っ払っていたから別に何も考えずに、誘惑に駆られるままに架線に飛びついたに過ぎないのだ。

実際、ホワイトさん自身、自分の無謀な行動が撮影された写真を見て、「僕は、なんて愚かなことをしたのかと愕然としました」と話している。そして、こうも言っている。「そのとき偶然にも送電が停止されていたのだと聞いて、心底驚きました。もう絶対に二度とこんな馬鹿なことはしません」

その日の午後4時5分から4時12分までの、たったの7分間だけ送電が停止されていた。しかも、送電が停止されるのは15ヶ月ぶりのことだったという。本稿の見出しには「10万分の1の奇跡」と書いたわけだが、15ヶ月(約662,400分)のうちの7分なので、誰かが架線に飛びついたときに送電が停止されている確率は、およそ10万分の1の確率ということになる。

ホワイトさんは、新聞の写真を見てすぐに、自ら警察署に出頭した。そして法の裁きを受けることになり、11月19日に執行猶予4ヶ月と禁止命令が言い渡された。有罪となった罪状は、鉄道会社の所有地への不法侵入だけである。先にトラブルが起きて、路線上の全列車が既に停車していたため、列車往来妨害等の罪には問われなかった。

さて、本件を伝えているDaily MailおよびSunの記事には、「送電が停止されていなければホワイトさんが命を落としていたのは確実だった」と書かれている。この話をここまで読んだ人の多くも、そう思われていることだろう。しかし、厳密に言えば、たとえ送電中であったとしても、ホワイトさんが感電せずに済んだ可能性がある。

筆者は電気のことに特に詳しいわけではないので、今ひとつ未消化な説明になってしまうことを最初にお断りしておくが、電気は回路が閉じていないと流れない。架線にぶら下がっているだけなら、回路が閉じている状態にはならないので、ホワイトさんの体に電流が流れなかった可能性がある。

しかし、高圧電流が流れ、被覆されていない架線は簡単にスパークを起こす。ホワイトさんが身に付けていた金属物(時計やファスナーなど)に落雷のようにスパークするかもしれなかった。また、ぶら下がっているうちに、ホワイトさんの体の一部が電線以外のものに触れて回路が閉じる可能性もあった。(そもそも、送電が停止されておらず、列車が運行中であれば、走ってくる列車に巻き込まれる危険も高かったわけである)。

さて、当ブログでは、不意の災難に見舞われたり、極限状況に追い込まれたりした人が思いがけない幸運に救われるという「不幸中の幸い」ストーリーや感動ストーリーを数多く取り上げてきた。本件でも、「確率10万分の1の偶然」がホワイトさんを救ったことになるわけだが、不幸中の幸いという表現は当てはまらず、ましてや何の感動も与えてくれない話である。

Daily Mailの記事には、次のような一文がある。

Opinion was divided over whether White was the luckiest man in Britain, or the most stupid.
(ホワイトさんを英国で最も幸運な男と呼ぶべきなのか、英国で最も愚かな男と呼ぶべきなのかで意見が二分された)。


自分で気づかずに自殺的行為を働いた愚かさと、その愚かさを帳消しにしてくれた偶然。ホワイトさんには、“ツキ”があったということになる。しかし、今回の一件で、一生分のツキを使い果たしてしまったかもしれない。

いずれにせよ、紙一重だったことだけは確かである。満点から1ポイント減じておく。上記のように、たとえ送電中であったとしても、命を落とさずに済んだ可能性もあるからだ。

紙一重指数9■■■■■■■■■□





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この記事へのコメント

1. Posted by ネルオフ   2006年11月22日 04:32
九死に一生のこの経験が彼の内面を変えてくれそうな気がする。
2. Posted by Si   2006年11月22日 12:23
電気は難しくてよくわかりませんね
通電していて両手でぶら下がった場合は感電するのでしょうか
3. Posted by 葱   2006年11月22日 13:21
架線にぶら下がっても、足などが地面や支柱などのアースになるものに触れるか、よほど接近していない限り感電はしない。
電線にとまってるカラスたちが感電しないのと同じ原理。
4. Posted by ぅぅ   2006年11月22日 16:59
とは言え 人体ほどの静電容量だったら死ねるかもよ。
6. Posted by わからんけど   2006年11月23日 08:50
1 電線にとまってるスズメが死なないのと同じ理由で、おそらく通電されてても死なないのでは。
人間の静電容量といった難しい話はわかりませんが、少なくとも送電線を流れている電流がそれより抵抗が明らかに高い人体を回り道して流れるものでしょうか。
ぶらさがって、電線が切れて、つかんだまま地面に落ちていたら黒こげだったかもしれませんが。
7. Posted by ミヤ   2006年11月23日 09:47
2 いい年こいて馬鹿な奴ね!
きっと今頃この事件をネタに自慢しまくったり、女を口説いたりしてるわね(‐o-;)
8. Posted by カビゴン   2006年11月23日 10:07
3 皆さん勘違いなされているようですが、25000Vも電圧があれば電線に近寄るだけで誘導電圧が発生します。
(電線に触れていなくても電流が流れてしまうのです)
事実、うちの工場でも誘導電圧で炭化した猫やカラスがよく発生します。
9. Posted by      2006年11月23日 10:38
電線盗もうとして、黒こげになった人の写真
ありますよ。見ない方がよろしいのですが。
10. Posted by 鉄道員   2006年11月26日 07:51
鉄道では直流1500Vなら加圧中に絶縁のハシゴをかけて電線に登って作業することがあります。(活線作業)
この場合、電線に触れてもなんともありませんが、電線に登った体勢で接地物(電柱とか)を触ると感電することになります。
25000Vでは活線作業はやりません。

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