なんでも評点:ちぎれてしまった自分の鼻を手に携えたまま待合室で22時間

2005年10月10日

ちぎれてしまった自分の鼻を手に携えたまま待合室で22時間


日本でも、病院の待ち時間の長さは、働き盛りの人が病院に行きたがらない理由の1つになっている。しかし、大怪我をしているなど、明らかに急患の人が待合室などに長時間放置されることは、まずありえない。そんなことをして取り返しの付かないことになったら医療訴訟を起こされるだろう。

だが南アフリカ共和国では、ベッドに空きがないとかいう理由だけで、救急患者が何の処置も受けぬまま放置されたりする。医者の数も、表向き公表している人員数より大幅に少なかったりする。

すべての病院がそこまでヒドイわけではないが、怪我や急病で病院に運ばれるときは運を天に任せるしかない。まともな病院であってくれと。

南ア・ムプマランガ州のエロル・シープカーさんという男性(53歳)は、自分の鼻を手に携えたまま22時間も同州スプルートのロブ・フェレイラ州立病院の待合室の椅子の上で待たされ続けた。そう、その鼻はシープカーさんの顔面から切り離されてしまっていた。犬に噛みちぎられてしまったのである。

その日、元警察官のシープカーさんはヘイジービューという町の外れにある農場で飼われている2頭の大型犬(ラブラドール犬&ロットワイラー犬)と遊んでいた。2頭とも自分になついていると信じていた。

腰を降ろしてラブラドールの相手をしていると、ロットワイラーの方がいきなり彼に飛び掛り、彼の顔面をぱくりと噛んだ。「次の瞬間には、あたり一面が血で真っ赤になっていました」とシープカーさんは言う。

地面に目をやると、彼の鼻が転がっていた。その様子を目撃していた誰かが彼を親切にも病院に運んでくれた。だが運んだ先の病院が悪かった。

彼が担ぎこまれたロブ・フェレイラ病院は、つい先日、南アの民主連盟(DA: Democratic Alliance)という政党が議会で記者会見を開いて発表した「南アの州立病院ワースト5」に堂々と名を連ねている札付きの病院だったのだ。ほかに選択肢がなかったのかもしれないが、シープカーさんを助けてくれた人の親切がアダになったのかもしれない。

シープカーさんの鼻は、結局、元に戻すことができなかった。22時間も経過したのだから無理だろう。事故の後すぐに病院に運び込まれてきていたのだから、迅速に処置されれば縫合できていたはず。もっとも、この病院には顕微鏡下手術(マイクロサージェリー)の技術を持った医師がいなかったから放置されたのかもしれない(南アにも、優れたマイクロサージェリー技術を持つ医師はいるようである→下記の関連記事参照)。

待たされ続けの22時間、シープカーさんは顔面の怪我の苦痛に苛まれつつも、最大級の歯がゆさを味わったと思われる。結局、シープカーさんは別の病院で鼻の再建手術(体の別の部分から取った組織を使用する)を受けることになったそうである。

はがゆさ9■■■■■■■■■□


ところで、DA(民主連盟)が発表した報告書では、ロブ・フェレイラ病院が一番に槍玉に挙げられており、人員不足、設備の荒廃、不衛生さ、医療レベルの低さなど、さまざまな問題点がうんざりするほど指摘されている。

以下が最悪級の病院の惨状だという。

  • 患者は毛布持参で入院しなければならない。

  • 病室は消毒などされておらず、それどころか排泄物すら清掃されていないので悪臭が漂っている。

  • 1つのベッドに2人以上の患者が寝かされることもしばしばである。

  • 病院施設そのものが薄汚く汚れており、ゴミが散乱し、ネズミやゴキブリもうようよしている。

  • 病院によっては医師のポストの67パーセントが空席になっている(つまり、表向き「〜科」とあっても、実際には担当の医師がいない)。

  • “たいまつ”や“ろうそく”の明かりを頼りに手術が行われる。

  • 停電が頻発するため、集中治療中の患者に対してもナースが延々と手押しポンプで肺に空気を送り続けないと患者の生命を維持できない。

  • 患者のカルテは、床の上に山積みになっている。

  • 洗面所やトイレは不衛生を極め、あふれ出した汚水が床の上を流れていることさえある。


2010年のサッカー・ワールドカップがますます心配である。南アまで観戦に行っても、うかうか急病になったり怪我をしたりすることもできない。選手が怪我をした場合もかなり心配だ。

筆者がかつて南アで暮らしていたころは、ここまで病院事情がひどくなかったと思う。ま、あんまり病院のお世話にはならなかったのだけれど。




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この記事へのコメント

1. Posted by megmeg88   2005年11月07日 19:51
初めまして。megmeg88と申します。ちょくちょく読ませてもらってます。いつも楽しませていただいてます。ありがとうございます。
カキコさせていただいたのは私も南アに少し住んでいたからです。プレトリアに住んでいたので医療機関は結構発達していて、病院はもちろんキレイでしたがクリニックがたくさんあって、お腹を壊したときなどはよく行ってました。
こんなヒドイ病院があったんですね。よほどの田舎なんでしょうか?ちなみにヘイジービューって初めて聞く地名なんですが、南アのどこら辺にあるんでしょう?
ちなみに管理人さんは南アのどこに住んでらっしゃったんですか?
2. Posted by miccckey   2005年11月08日 14:10
> megmeg88 さん

私はJo'burgにフラットを借りていました。もっとも、南アはあくまで拠点にしていただけで、本来の業務目的はその周辺のもっとヤバイ国々でした。ま、いろいろ機密に関わることがあるので詳しくは書けませんけど。

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