2005年04月10日

もちろん、ワニは水がないと暮らせない生き物なので、砂漠の中とはいえ、ワニが住んでいる場所には水がある。セネガルとの国境付近に位置する、たった100平方メートルほどの小さなオアシスの池である。最も近くにある川でさえ、200キロも離れている。
1990年代後半にフランス人の学生がそこを訪れてワニの棲息を確かめるまで、これは地元の人間しか知らないことだった。
マドリード・コンプルーテンス大学のエデュアルド・コスタ教授(獣医学)をはじめとするスペイン人の学者たちがその池を詳しく調査したところ、たった10メートル四方ほどの池であるにも関わらず、独自の完全な生態系が成立していることがわかった。
大量のプランクトンと水草。それらを食べて暮らしている多数の魚。そしてそれらを食べて暮らしているワニたち。過去何千年もの間、その絶妙なバランスが保たれてきた。
スペインから現地を訪れて調査に当たった学者の1人、フェルナンド・イラルドさんは、こう語っている。「そこでクロッコダイルたちが生き生きと暮らしていること、若いクロッコダイルの数も少なくないこと、彼らを十分養っていける数の魚が棲息していることに衝撃を受けました」。
地元民の間には、この池のワニを絶対に殺してはならないという決まりがあった。ワニを殺すと池が干上がってしまうと信じられてきた。砂漠でヤギなどの家畜を放牧して暮らす彼らにとっても、この池は貴重な資源なのだ。
池にはヤギなどが水を飲みにやってくる。だがワニがヤギを襲ったことは一度もないという。
さて、サハラ砂漠にワニが棲息していることについては、ちゃんと科学的な説明が用意されている。もともとは砂漠ではなかったからである。約9000年前から砂漠化が始まった。サハラが砂漠化する前は、ワニの棲息に適した環境が存在していた。
砂漠化が進行する中、最後の最後まで残ったのがこれらのワニたちなのだ。
そのオアシスから数百キロ離れた別の池にもワニが棲息しているが、モーリタニア国内でワニの棲息が確認されているのは2ヵ所だけだという。
コンプルーテンス大学のエデュアルド・コスタ教授は、その存在が知れ渡り、観光客を寄せ付けることになると、ワニたちの今後が危ぶまれることになると指摘している。さらに地元の放牧民たちが池の周辺で殺虫剤や寄生虫駆除剤を使用している形跡があり、それも今後、ワニたちの生態系にとって脅威となるという。
さて、砂漠でワニが暮らしていると聞くと、逆境の中で生き抜いている“けなげさ”に心を打たれるべきなのか、それとも冷血で凶暴とされる大型爬虫類に“けなげさ”を感じるのは馬鹿げていると否定すべきなのか、いろいろと判断に迷うところである。まあしかし、今のところ彼らが暮らしている環境は、逆境に見えて逆境ではない。
たった100平方メートルの池であっても、そこには完璧な生態系が成立しており、ワニたちは何不自由なく暮らしてきたはずである。しかし、これは絶妙なバランスの上に成り立ってきたこと。今までになかった要因を少し付加してやるだけで、砂上の楼閣のごとく一瞬にして崩れ去るだろう。よって、次のように評点を付けておこう。
われわれ人間の暮らしや心にも、実はこのような絶妙なバランスのもとで成り立っていることが多いと感じる。生きていくこと自体、サハラ砂漠の中の小さな池のようなものだったりするかもしれない。
幼いころは、干からびる前のサハラのように豊潤な大地が広がっていたかもしれないが、世の中の現実や厳しさにさらされるにつれて砂漠化していく。最後までオアシスを残せるかどうか。そのオアシスで絶妙な生態系を成り立たせることができるかどうか。
■ Source: Crocs survive in Sahara
大量のプランクトンと水草。それらを食べて暮らしている多数の魚。そしてそれらを食べて暮らしているワニたち。過去何千年もの間、その絶妙なバランスが保たれてきた。
スペインから現地を訪れて調査に当たった学者の1人、フェルナンド・イラルドさんは、こう語っている。「そこでクロッコダイルたちが生き生きと暮らしていること、若いクロッコダイルの数も少なくないこと、彼らを十分養っていける数の魚が棲息していることに衝撃を受けました」。
地元民の間には、この池のワニを絶対に殺してはならないという決まりがあった。ワニを殺すと池が干上がってしまうと信じられてきた。砂漠でヤギなどの家畜を放牧して暮らす彼らにとっても、この池は貴重な資源なのだ。
池にはヤギなどが水を飲みにやってくる。だがワニがヤギを襲ったことは一度もないという。
さて、サハラ砂漠にワニが棲息していることについては、ちゃんと科学的な説明が用意されている。もともとは砂漠ではなかったからである。約9000年前から砂漠化が始まった。サハラが砂漠化する前は、ワニの棲息に適した環境が存在していた。
砂漠化が進行する中、最後の最後まで残ったのがこれらのワニたちなのだ。
そのオアシスから数百キロ離れた別の池にもワニが棲息しているが、モーリタニア国内でワニの棲息が確認されているのは2ヵ所だけだという。
コンプルーテンス大学のエデュアルド・コスタ教授は、その存在が知れ渡り、観光客を寄せ付けることになると、ワニたちの今後が危ぶまれることになると指摘している。さらに地元の放牧民たちが池の周辺で殺虫剤や寄生虫駆除剤を使用している形跡があり、それも今後、ワニたちの生態系にとって脅威となるという。
さて、砂漠でワニが暮らしていると聞くと、逆境の中で生き抜いている“けなげさ”に心を打たれるべきなのか、それとも冷血で凶暴とされる大型爬虫類に“けなげさ”を感じるのは馬鹿げていると否定すべきなのか、いろいろと判断に迷うところである。まあしかし、今のところ彼らが暮らしている環境は、逆境に見えて逆境ではない。
たった100平方メートルの池であっても、そこには完璧な生態系が成立しており、ワニたちは何不自由なく暮らしてきたはずである。しかし、これは絶妙なバランスの上に成り立ってきたこと。今までになかった要因を少し付加してやるだけで、砂上の楼閣のごとく一瞬にして崩れ去るだろう。よって、次のように評点を付けておこう。
はかなさ9 | ■■■■■■■■■□ |
われわれ人間の暮らしや心にも、実はこのような絶妙なバランスのもとで成り立っていることが多いと感じる。生きていくこと自体、サハラ砂漠の中の小さな池のようなものだったりするかもしれない。
幼いころは、干からびる前のサハラのように豊潤な大地が広がっていたかもしれないが、世の中の現実や厳しさにさらされるにつれて砂漠化していく。最後までオアシスを残せるかどうか。そのオアシスで絶妙な生態系を成り立たせることができるかどうか。
■ Source: Crocs survive in Sahara
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1. 上海は平穏な日々だけど…北京はやばそうだ(w [ 上海ウィークリー ] 2005年04月12日 11:38
↑写真は日本領事館から歩いて2、3分という上海でも仕事で海外赴任してきた日本人が特に密集してる地区だ。
見て分かるように平穏な毎日の上海だが、緊迫した上海日本領事館の前では、警備が厳重になっている。具体的には、普段入り口に2人だけ門番がいるのに対して、現
この記事へのコメント
1. Posted by 尼崎 2005年04月10日 06:30
うまいコメントだね。
2. Posted by youks1 2005年04月10日 12:07
確かにうまい。
3. Posted by ken 2005年04月11日 00:14
久しぶり!
フリースタイルプレゼントのサイト
オモシレーぞ!
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4. Posted by miccckey 2005年04月11日 00:24
>尼崎さん
お褒めいただき光栄です。
人文的な方に連想を走らせましたが、後で考えてみるに、火星に生物がいるかどうかを調査するときにも、上のような閉じた生態系モデルも考慮に入れるべき気がしました。
もともと火星に水が豊富に存在していたとすれば、上のような閉じたコロニーがどこかに見つかるかもしれません。
> youks1さん
ブログ開設おめでとうございます。youks1さんのブログに、ユダヤ人の友達の話がありますが、私も以前、ユダヤ人と仕事&プライベートで付き合いがあった時期がありました。
イスラエル出身のユダヤ人に聞いてはならない質問をあえてしてみたところ怒られたのを覚えています。兵役中のことに関する質問ですがね。
>kenさん
コメントSPAM失敗でしょうか。URL入れないと意味ないですよね。わはは。
お褒めいただき光栄です。
人文的な方に連想を走らせましたが、後で考えてみるに、火星に生物がいるかどうかを調査するときにも、上のような閉じた生態系モデルも考慮に入れるべき気がしました。
もともと火星に水が豊富に存在していたとすれば、上のような閉じたコロニーがどこかに見つかるかもしれません。
> youks1さん
ブログ開設おめでとうございます。youks1さんのブログに、ユダヤ人の友達の話がありますが、私も以前、ユダヤ人と仕事&プライベートで付き合いがあった時期がありました。
イスラエル出身のユダヤ人に聞いてはならない質問をあえてしてみたところ怒られたのを覚えています。兵役中のことに関する質問ですがね。
>kenさん
コメントSPAM失敗でしょうか。URL入れないと意味ないですよね。わはは。
5. Posted by ひろこ 2005年04月11日 01:22
おもしろーい
6. Posted by ぶにん 2005年04月11日 23:01
バランス感覚の大切さ、思い知りました。
ちょっとバランスが崩れれば、すべてが絶滅してしまう。これは地球の縮図のように感じました。
ちょっとバランスが崩れれば、すべてが絶滅してしまう。これは地球の縮図のように感じました。
7. Posted by BLOGJAPAN 2005年04月12日 11:32
ブログランキングサイトを始動させました。
もしよろしければご登録お願い致します。
http://blog.magnect.com/
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8. Posted by あ? 2005年04月12日 17:52
>>10メートル四方ほどの池
狭すぎやしませんか?
狭すぎやしませんか?
9. Posted by miccceky 2005年04月12日 18:07
》>>10メートル四方ほどの池
》狭すぎやしませんか?
ソースに100 square metres (100平米) とあります。10*10=100でしょ?
それとも俺が間違ってるのかな?
水面が100平米として、その周囲に数倍から10倍の面積の藪や湿地があるはず。たしかに狭いけど。
》狭すぎやしませんか?
ソースに100 square metres (100平米) とあります。10*10=100でしょ?
それとも俺が間違ってるのかな?
水面が100平米として、その周囲に数倍から10倍の面積の藪や湿地があるはず。たしかに狭いけど。
10. Posted by kono 2005年04月14日 00:15
写真で見るとけっこう怖い・・・
11. Posted by rena 2005年05月15日 12:53
砂漠の真ん中にワニがいるとはね。学校でサハラのプロジェクトをやってるのでこの情報は面白かったです。「はかなさ9」のところで笑っちゃいました。