なんでも評点:スリランカで報じられている奇跡のいくつかは捏造なのか? − 日本のメディアも釣られていたりして

2005年01月10日

スリランカで報じられている奇跡のいくつかは捏造なのか? − 日本のメディアも釣られていたりして


スリランカでは、津波により倒壊した建物の残骸の中に閉じ込められていた男性が13日ぶりに救助されたというニュースが新聞で大々的に報じられた。救助されたのは、H. G. シリセナという男性。ゴール市の病院に収容された。腕を骨折しており、軽い肺炎に罹っているが命に別状はないという。まさに奇跡の生還である。

このニュースは日本の新聞でも伝えられている。たとえば、1月9日付けの讀賣新聞は次のように伝えている。
がれきの下から13日ぶり救助…スリランカで被災男性

 【トリンコマリー(スリランカ北東部)=佐藤淳】インド洋津波で被災したとみられる男性が、8日、スリランカ南部にあるゴール市のがれきの下から助け出された。

 男性は脱水症状がひどく、話すことができないため、詳しい状況は不明だが、津波からは13日ぶりの救出となる。

 現地の報道などによると、男性が発見されたのは、同市ペティガラワッタ地区のがれきの中。捜索にあたっていた軍関係者によって救出され、市中心部のカラピティア病院に収容された。年齢は60代後半ぐらいで、救出時は意識を失いかけていた。

【引用元URL】http://www.yomiuri.co.jp/main/news/20050109i413.htm


しかし、不思議なことに、現場近辺の住民は「シリセナさんの姿を津波の後、何度か見た」という。「彼は少し気が触れているように見えました。彼に食べ物や衣服を差し出したところ、拒否されました」。

実に不思議な話である。倒壊現場に生き埋めになったシリセナさんの“生霊”が付近をうろついていたのだろうか?

一方、シリセナさんを収容した病院の医師たちの言動も実に不可解。当初は、瓦礫の下から救助されたとする男性を収容し、骨折、肺炎、脱水症状の治療を行っていると認めていた。だが、この件がメディアで報道されると急に歯切れが悪くなり、シセリナさんの症状と容態が果たして本当に13日間も生き埋めになっていたことによるものかどうかをインタビューで突っ込まれると、答えを渋った。

医師の1人は、こんなふうに漏らしている。「国民が奇跡を必要としているということでしょう。われわれ医師としては、(救助隊から)伝えられたことを信じるほかない」。

歯切れ悪さ9■■■■■■■■■□


シリセナさん自身は、病院に収容されてから、ほとんど言葉を発していない。病院のスタッフがベッドに近寄ると、なぜか意識を失うらしいのだ。

ただ、一番接触の多いナースたちとは、多少言葉も交わしているらしい。病院の婦長は、こう話している。「彼は、自分が最後に聞いたのは銃声だったと言っています。自分の名前を答えることはできましたが、ほかには何も覚えていないと言うのです」。

一方、救助隊員やボランティアたちは、自分たちが確かに瓦礫の下からシリセナさんを助け出したのだと誇らかに話している。シリセナさんを助け出した救助/復旧チームは、実はJVPという政治組織のキャンペーンにより編成されたものだという。

JVP(スリランカ人民解放戦線)は、スリランカ連立政権に大臣を送り込んでいるシンハリ排外主義勢力である。ボランティア救助チームの指揮にはバンダラヤナケ運輸大臣が当たっているが、彼も胸にJVPのバッチをつけている。

筆者は日本の政治にも疎いくらいなので、スリランカの政治勢力のことはさっぱりわからない。だがともかく、一連の救助活動を特定の政治勢力が仕切っていて、自分たちのプロパガンダに利用しているらしいことは想像できる。

だが前述したように、現場付近の住民たちの言葉は、シリセナさんが実は13日間も瓦礫の中に埋まっていたのではないことを裏付けている。

シリセナさんが現場付近で瓦礫の下から略奪を働いていたという証言がある。略奪者を追い払うために警察官が威嚇射撃をしていたという。ならば、シリセナさんが最後に銃声を聞いたと話していることと一致する。怪我をしたのは、瓦礫の間に誤って落ちてしまったためだというのだ。

さらに、JVPのメンバーだが、救助活動には参加していないという住民の1人が次のように言明している。

「彼が津波の影響を受けたことは確かでしょう。しかし、津波の直後から彼が生き埋めになっていたということは絶対にありえません。救出現場周辺の住民全員が、津波の後も彼の姿を目にしていたのですよ。まったくのナンセンスというほかない」。

津波発生後、スリランカの新聞には奇跡のストーリーが満載されている。だが、元記事(下記)によれば、その多くは精査に耐えないものだという。

たとえば当ブログでも取り上げたニュースなのだが、ヤラ国立公園の動物たちが津波を予知していて被害を免れたという話にしても、捏造の疑いが濃厚。このニュースを発信したロイターの特派員が津波の2日後に現地を訪れてみたところ、実際には鹿やマングースの死体が転がっていたらしい。

また、寺院が津波で破壊されたにも関わらず、仏像は一体たりとも損壊していないという奇跡も伝えられた。難を逃れた仏像が少なくないことは事実だが、実際には津波の後、短時間で修復された仏像が多いらしい。

こういう奇跡を捏造して伝えることを一概には否定できないと見る向きもあるようだ。国民を復興に向けて奮い立たせるためには、嘘も方便というわけか。ただ、こういう情報操作は、一歩間違うと特定の勢力に悪用されたり、誰かが迫害を受けるおそれがある。

ともあれ、元記事(下記)を読んで思ったのだが、スリランカに限らず、被災地から伝えられる奇跡のストリーはそのすべてを鵜呑みにはできないということを十分認識しておく必要がありそうだ。当ブログでも、さんざん奇跡のストーリーを伝えてきたわけだが。




■ Source: IOL - Asia - Sri Lankans seek miracles amid tragedy

当ブログの全記事一覧を見る



この記事の先頭に戻る

Google
WWW を検索 評点




miccckey at 14:21│
はてなブックマーク - スリランカで報じられている奇跡のいくつかは捏造なのか? − 日本のメディアも釣られていたりして
Comments(6)TrackBack(2)clip!
(評)歯切れ悪さ 

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 報道の信憑性  [ cozymaxΣweblog ]   2005年01月11日 03:57
なんでも評点さんで興味深い記事が紹介されていました.「スリランカで報じられている奇跡のいくつかは捏造なのか? 〓 日本のメディアも釣られていたりして」と題されたこの記事は,報道の信憑性を改めて考えされられるものです.
 まあ、カタカナ言葉なんて使わなくても論語に「学びて思わざれば則ち罔(くら)く、 思いて学ばざれば則ち殆(あやう)し」((「学んでも考えないとはっきりしない。考えても学ばないと(ひとりよがりになって)危険である」))とあるわけですが。いつも楽しませてもらってい

この記事へのコメント

1. Posted by cozymax   2005年01月11日 04:03
はじめまして.いつも陰ながら読ませていただいておりました.ですがこの記事に対してはどうしても自分なりに論じてみたくなり,論じた後,こうしてトラックバックを送らせて頂きました.非常に興味深い,面白いニュースだと思います.津波関連の報道だけでなく,すべての報道に対して情報を鵜呑みにするのは危険であると再確認しました.

今後ともよろしくお願いします.
あ,あとリンクはらせて頂きました!
2. Posted by ムシムシ   2005年01月11日 15:30
「情報」について、次のようなことが言われてます。

「同じような情報が、情報源を別にした複数から入手できた場合、人はその情報を信用する。」

日本の戦国時代に「調略」する場合によく使われた方法です。

今回のスリランカの報道にも同じようなことを感じます。意図的にこうなったのか別として、「同じような情報が、複数の情報源のように見える場所から発信された。」そうすると、「人はこの情報が正しいように感じてしまう。」すると、「正しい情報だ。」と認識してしまうのだと思います。

そんなことが、発生しているのかなぁ。と、ふと思いました。

3. Posted by ムシムシ   2005年01月11日 15:34
書き忘れ。

やらせがあったかは別にして、ニュースを見ている人間の場合の話です。
今度の被害のニュースはどんなニュースでも鵜呑みにはできないと思います。
4. Posted by miccckey   2005年01月11日 16:39
>cozymax さん

cozymaxさんのブログにもコメントしましたが、この話はけっこう突っ込みどころが多そうですよね。私もいろいろ掘り下げて考えてみたいところなのですが、フリーランス稼業の合間に記事を書いているという事情もあり、なかなか考えをまとめている時間がなかったりします。

うちからも後ほどリンクを張らせていただきますね。あ、そうそう、さっきcozymax さんのブログにつけたコメントがダブっているかと思いますが、タブブラウザでコメント書き込み画面を開いたままにしていたのをうっかり更新してしまったからでした。お手数ですが、どちらかを削除しておいてくださいね。

>ムシムシさん

今回の被害に限らず、あらゆる報道は鵜呑みにできない・・・と常々思っています。恣意的な場合もあれば、表現上の曖昧さから異なる解釈を生み、それが伝言ゲーム式に伝わるケースもあります。

まあ、私自身も以前、マイナーな世界の某専門誌で自分が話していないことまで編集者がインタビュー記事に書いていることに印刷前に気づき、結局、自分で記事を編集しなおして送りつけたこともあります。その専門誌には記事の連載もしていたのだけど、その後、関係が悪化して音沙汰なしになったりしましたが・・・。

あるいは自分の身の回りで(たとえば住民運動などに絡んで)新聞やテレビの取材を受けたことのある人が何人かいますが、脚色されているのが気に入らないと言ってましたね。

「奇跡の」という枕詞が着いた時点で、すでに脚色されている気がします。ただ、私は脚色を一概に否定はしないですね。どう伝えても異なる解釈を産む可能性があるのだから、最初から脚色はあるものだと開き直っているというか。

当ブログの海外ソース記事なんて、たしかに脚色だらけだったりするかもしれません。逆に脚色部分をそぎ落として紹介することもあるんですがね。

5. Posted by cozymax   2005年01月11日 18:26
>miccckeyさん

こちらのブログにもコメントを頂きましてありがとうございました.なんでも氷点さんのような有名サイトからコメントを頂いたことが単純に嬉しかったりします.この話は非常に奥が深いように思います.僕の技量と知識では更なるツッコミは難しいので,是非お時間のある時にmiccckeyさんの方で続報を書いてみてください.コメントの二重投稿の件に関しては,ちょっと機能上削除が面倒なので残したままにさせてください(問題ないですよね?).

>ムシムシさん

はじめまして.自分の中でモヤモヤしていたことが格言的にバシッと提示されると説得力がありますね(同じような情報が、情報源を別にした複数から入手できた場合、人はその情報を信用する。について).真実と虚偽(脚色)を見分けるのは難しいですが,我々視聴者に常に求められていることですよね.
世の中には「良い脚色とそうでない脚色」があるように思います.誰も害を受けず,皆が明るく楽しく幸せな気持ちになれる脚色なら僕は良いと思っています(なかなかそんな脚色は無いようにも思いますが・・・).
6. Posted by cozymax   2005年01月11日 18:28
連続投稿申し訳ありません.

「氷点→評点」の誤りでした.大変失礼しました.

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
◎-->